電気自動車の普及に伴い、気になるのが「電気自動車はマンション住まいでも使えるのか」という疑問です。充電設備を導入する際の費用感や管理組合の承認が得られるかなど、電気自動車をマンションで利用するためには解決すべき課題がいくつもあります。本記事では、これらの疑問に対する解答と、マンションでの設備導入にかかる費用について見ていきましょう。
マンションでEVは充電できない?
電気自動車(EV)への関心が高まるなか、マンション住まいで電気自動車を検討する人も増えています。ただ、実際の導入の前に、「自宅でEVを充電できるのか?」という疑問を解決しなければなりません。特に都市部のマンションの場合、個々の駐車スペースに充電設備を設けることが技術的にも管理上にも大きな課題となるからです。
現状、充電設備の整った専用の駐車場があるマンションは限られています。また、たとえ充電設備があるマンションでも、住民全員が自宅でEVを充電することは難しいのが実情です。
充電設備がない場合は、まずその設置から検討する必要がありますが、それには、初期投資としてかなりの費用がかかります。それだけの費用を捻出するには管理組合の合意が必要となるため、プロセスは複雑です。
とはいえ、決して不可能ではありません。最近では、充電設備の導入を支援する補助金や、マンション向けに特化した充電設備も増えてきています。最終的には、マンションの構造や規模、住民のニーズと予算に応じて、導入の可否が決まってくるでしょう。
マンションに電気自動車の充電設備を設置する方法
マンションに電気自動車の充電設備を導入するには、いくつか方法があります。具体的にはどのような方法があるのでしょうか。
①コンセント式充電
マンションのような集合住宅に電気自動車の充電設備を導入する場合、まず基本となるのがコンセント式充電です。この方法は、既存の家庭用電源を使用して充電するため、特別な設備投資を必要とせず、手軽に設置できるという利点があります。
ただ、通常のコンセントを使って充電する場合、電力は100Vか200Vとなるので、充電速度が遅いのがネックです。車によっては、フル充電までに数十時間かかることもあります。とはいえ、夜間など長時間車を停めている時間帯に充電しておけばいいので、自宅で充電する場合は特に問題ないでしょう。
②専用の充電器で充電
専用の充電器をマンションの駐車場に設置する方法もあります。こうした充電器は「レベル2」の充電ステーションと呼ばれ、家庭用のコンセントよりも高い240Vの電力を使用して充電できるのがメリットです。先に挙げたコンセント式充電よりもはるかに速い充電が可能で、数時間でバッテリーをほぼフル充電できます。
専用の充電器にも種類があります。一つは、専有型の充電器で、個々の駐車スペースに個人で設置するタイプです。個人で設置する充電器ですから、ほかの住民を気にすることなく好きな時間に充電できます。
一方、複数の住民で充電器を共用する共有型充電器という方法もあります。マンションの駐車場の特定の場所に充電ステーションを設置して、利用者間で共有する方式です。共有型の大きな利点は、設置費用や維持費を電気自動車の利用者で分割できることにあります。また、この種の充電器はマンションの管理組合が管理してくれるので、充電ステーションの使用スケジュールなどは個人が気にしなくていいというのも利点です。
マンションに電気自動車の充電設備を導入する際の課題
上記のように、マンションでも電気自動車の充電設備の導入は可能ですが、その過程には課題や注意点もいくつかあります。
電気容量に余裕があるかどうか
コンセント式充電は手軽さが魅力ですが、既存の電源を使用するため、建物の電気容量に余裕があることが前提となります。多くの電気自動車を同時に充電する場合、建物全体の電力供給に影響を与える可能性を考慮しなければなりません。
また、充電中に回路が過負荷となり、ブレーカーが落ちるリスクも考慮する必要があります。このため、電気工事士による事前の電力容量の評価と、必要に応じた電気設備の強化が必要です。
設置費用と維持管理費が高額
専用充電器はより高速な充電を可能にしますが、大きな課題として設置費用と維持管理費が高額になることが挙げられます。専有型の場合、導入から維持管理までに発生するすべての費用を負担する必要があるため、経済的な負担が大きくなることは避けられません。
共有型充電器の場合、設置費用や維持費を分割できるのは利点ですが、利用者が多くなると好きなときに充電できないリスクが生じます。また、共有充電器は維持管理が必要であり、故障やメンテナンスの際に迅速に対応する体制が求められることも課題です。管理組合がどの程度関与してくれるか、事前に確認しておく必要があります。
マンションに電気自動車の充電設備を導入する費用や電気代
マンションに電気自動車の充電設備を導入する際の費用は、設備の種類によって大きく異なります。また、充電設備の効率や電気自動車のバッテリーサイズによって、電気代も大きく変動します。
①コンセント式充電設備の費用
コンセント式充電の場合、既存の電源を利用するため設置費用は比較的安く抑えられます。家庭用の電源をそのまま利用する場合、追加で発生するコストはほとんどないでしょう。ただし、安全を考慮して電気工事を行う必要がある場合は、工事費として数万円程度の出費が見込まれます。過負荷保護のためのブレーカーを追加したり、耐火性を向上させたりなどの工事です。
なお、充電速度が遅く、長時間にわたって電力を消費するため、電気代は比較的高くなります。
②専有型の充電器の設置費用
専有型の充電器を設置する場合、費用は大幅にアップします。特に、レベル2の充電ステーションの設置には、充電器本体の購入費用と電気工事費が必要です。充電器の価格はモデルによって異なりますが、一般的には20万円から50万円程度です。ただし、これに加えて電気工事費として10万円から30万円程度かかります。
マンションの共有部分に設置する場合は、共有部分の改修工事が必要になることもあります。これに伴い発生する費用にも注意が必要です。このタイプの充電器は充電時間が短縮されるため、電力消費量はコンセント式より少ないです。
③共有型充電器の設置費用
共有型充電器を設置する場合は、専有型充電器の設置に必要な費用に加えて、利用者間で共用システムを管理するためのシステム導入費用が必要です。このシステムには、利用スケジュールを管理するためのソフトウェアや、利用状況を追跡するためのデバイスが含まれます。設置費用は、専有型充電器の設置費用と同じぐらいかそれ以上でしょう。総額で数十万円から100万円以上になることもあります。
また、初期投資だけでなく、後々生じるメンテナンス費用も考慮しなければなりません。導入後に増加が予想される電気料金や、保守点検や修理の際に発生する費用も見積っておきましょう。電気代に関しては、管理組合の請求方法によって変わります。使用量に応じて個別に請求するのか、それとも利用者一律で分担するかがポイントです。
まとめ
マンション住まいでも電気自動車に乗ることは可能ですが、充電設備の導入に関しては十分な計画が必要です。設置場所、費用、管理組合の合意など、事前に検討すべき事項がたくさんあるので、具体的なステップやそれに伴う課題についてしっかり理解しておきましょう。