脱炭素化社会を目指すために太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーがますます普及していますが、広大な敷地にたくさんの太陽光パネルが設置された光景を目にする機会も増えたのではないでしょうか。私たちの住居の屋根などに設置されたものを「住宅用太陽光発電」と呼ぶのに対し、土地などに設置されたものを「野立て太陽光発電」といいます。自家消費を主な目的とする住宅用とは様々な条件が異なるため、野立てならではのメリットがあるのですが、一方でデメリットもあるので注意が必要です。
そこで今回は、野立て太陽光発電のメリットおよびデメリット、そして費用がいくらぐらいかかるのかといったことを中心に説明していきます。
そもそも太陽光発電の野立てとは?
野立て太陽光発電とは、遊休地や空き地などの地面に架台と呼ばれる台を設けて、その上に太陽光パネルや関連機器を設置するものです。一般的に、発電容量10kW以上から野立て扱いとなり、“事業用太陽光発電”ともいわれます。
どちらかといえば、郊外や田舎といった広い土地が確保できる場所に建設されることが多いです。設置する太陽光パネルの枚数が、住宅用太陽光発電よりも多いため、田舎の方が適切な立地を見つけやすいのです。
出力10kWの太陽光発電システムを設置する場合、大体30坪(約100㎡)程度の広さが必要です。太陽光発電に適した土地は、周辺に高い建物が無く、日射量が多い土地です。交通の便などは関係ありません。マンションやビルを建設する目的で探すケースと対照的な条件ですので、大都市圏よりも田舎が選ばれやすい傾向です。
野立て太陽光発電の費用について解説
野立て太陽光発電は、初期費用の目安として、トータル1500~2000万円程度かかるといわれています。条件によっては、さらに追加で料金が上乗せされるケースもあります。では費用の項目を見ていきましょう。
●設備費
●工事費
●土地購入費用
●電力会社との接続検討費用
●造成費
初期費用として用意すべきは、主に上記の5つです。
設備費は、太陽光パネルやパワーコンディショナー、ケーブルなどを指します。容量によって金額は変動しますが、最低でも1000万円以上はかかると考えておいたほうが良いでしょう。
工事費も、住宅用太陽光発電と比較して金額は大きく増加します。こちらもケースバイケースで変動するものの、300万円前後は必要です。土地を所有していない場合には、第三者から賃借するか自分で購入しなければなりません。また、いざ土地を用意しても、良好な状態ですぐに工事を開始できるとは限りません。地盤が緩い場合など、土地の整備が必要な場合ですと、追加で500万円以上かかることもあります。
接続検討費用は、50kW以上の高圧連携設備のみ必要な費用です。必ず支払わなければならず、金額は21万円です。大規模な太陽光発電所を運営する方は、こちらも押さえておいてください。
太陽光発電事業者のホームページなどを閲覧すると、多くの発電所が売りに出されています。中には土地と設備がセットになったものも見受けられますが、やはり1500万円以上と高額に変わりはありません。初期費用を用意するのが難しい方は、金融機関が実施しているソーラーローンを検討してはいかがでしょうか。返済は売電収入で賄う仕組みですので、初期費用をかけずに太陽光発電投資を始めることが可能です。
野立て太陽光発電のデメリットやトラブル
野立て太陽光発電では、FIT制度(固定価格買取制度)による全量買取期間が20年と長期に渡るのが特徴です。住宅用太陽光発電は10年間と短く、この差は大きなメリットとなります。また、不動産投資と異なり、地価が安い土地、つまり利便性が悪い場所の方が太陽光発電に向いているケースが多いです。土地にかける費用を安く抑えられればその分、初期費用回収期間も短縮できます。
事業者がメガソーラーと称される超大規模な太陽光発電所を次々と開設していることからも、野立てには一定のメリットがあるのが窺えます。一方で、考慮しておかなければならないデメリットにも触れておきましょう。
●メンテナンスにかかる負担
●出力制限の影響
●近隣住民とのトラブルが発生する恐れ
●周辺環境の変化
●自然災害の可能性
どうしても郊外や田舎を選ぶ傾向にあるため、お住まいの場所から遠く離れたところになる可能性は十分考えられます。専門業者にメンテナンスを依頼する場合、年間20万円前後かかるとみておきましょう。もちろん、面積によって金額は変動します。それ以外に、パワーコンディショナーの寿命がきたら、交換費用として1つあたり30万円程度必要です。九州地方など地域によっては、出力制御の影響を受けることも頭に入れておくべきです。出力制御がかかると、発電しても売電することができず、電気を無駄にしてしまいますから注意しましょう。
一番厄介なのは、近隣住民とのトラブルかもしれません。太陽光パネルによる反射光、景観悪化を巡る問題、騒音や雑草など、予期せぬトラブルが起こってしまうものです。折り合いがつかないと、工事中止あるいは発電所の移設など、大変面倒なことになりかねません。未然に防ぐためには、事前に挨拶周りをしてきちんと説明し、納得してもらうことが大切です。
まとめ
野立て太陽光発電を新たに開設する際、郊外で日当たりが良い場所ならどこでも大丈夫かといえば、それでは不十分です。周辺に影を作るような建物はないか、地盤は頑強か、近隣住民と対話してトラブルを避けることが可能かなど様々な条件をクリアしてこそ、長期間にわたり発電を続け、安定した売電収入を得ることができます。
屋外に設置する以上、自然災害の影響を受けるリスクはゼロではありません。しかし、壊滅的な被害をもたらす災害は滅多に起こるものではなく、毎年のように台風が上陸する日本においても、ほとんどの発電所は問題なく発電を継続できています。初期費用などクリアすべき課題はあるものの、景気に左右されず安定収益が見込めると人気が高まっている太陽光発電。しっかり知識を身につけたうえで、この記事を読んでいる方も挑戦してみてはいかがでしょうか。