コラム

ニトリが取り組む太陽光発電に関する動向について解説

家具およびインテリア用品の大手で、日本全国におよそ700店舗を展開する企業といえば、「ニトリ」を展開するニトリホールディングスです。「お、ねだん以上。」のキャッチフレーズを一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

これまで私たちに快適な暮らしを提供してきたニトリが、CO2排出量削減に向けた本格的な取り組みを2024年から開始します。小売業は、店舗運営において日々大量の電気を消費しています。いくら電気を節約したいからといって、店内を真っ暗にするわけにはいきませんよね。
今回の記事では、自社で消費する電力を再生可能エネルギーによって調達するニトリの計画を詳しく説明していきます。

ニトリが行った太陽光発電の施策とは

株式会社ニトリホールディングスは、企業と社会のGX化(グリーントランスフォーメーション)推進事業を展開する株式会社Sustechと連携し、太陽光発電を本格的に導入することを発表しました。FIP制度を利用した余剰電力活用型の太陽光発電を店舗や物流施設の屋根に設置して、ニトリグループ他拠点への供給を含めた再生可能エネルギーの循環を目指します。

“FIP制度”とは、「Feed-in-Plemium」の略称で、発電した電力を卸電力市場で販売する際の収入に、一定のプレミアム(補助額)を上乗せする制度です。再生可能エネルギーを電力市場に統合していくことを目的に整備された制度で、各社の発電事業を促進する役割を果たします。
ニトリホールディングスでは、自社設備の屋根上に太陽光発電システムを設け、その規模は日本最大級となる計画です。2022年7月に導入を決定してから、Sustechと連携してFIP制度への申請、発電量の予測など様々な準備を進め、2024年ついに本格稼働します。
導入にあたり、まずは独立型の大型店舗や、敷地面積が大きい物流施設から優先的に太陽光発電を設置していきます。ここで重要なポイントは、屋根全体に太陽光パネルを敷き詰めて、その施設で消費する以上の電力を発電する方針だということです。
余剰電力の活用に関して、Sustechが開発した電力プラットフォーム「ELIC」を利用します。小規模店舗や、商業施設内に出店するところでは、太陽光発電の導入が難しい場合もあります。そういった店舗に、「ELIC」を通じて発電拠点から電力を供給する流れを作り、自社グループ内で発電した電力を最大限活用する仕組みを構築しました。

太陽光パネルを物流拠点などの屋根に設置して、自拠点に電力を供給するという取り組みは、他の企業でも実施しています。ただし、通常は当該拠点の電力消費量に合わせて太陽光パネルを設置するため、せっかくの広大な敷地をフルに活用せず、場所を余らせるケースも散見されました。ニトリは国内だけでも約700店舗あり、なるべく多くの店舗で再生可能エネルギー由来の電力を使用して、循環型社会への移行に貢献したいと考えています。

太陽光発電の導入でどれぐらい効果があるの?

太陽光発電の導入を検討しているけど、実際どれぐらい効果が見込めるのか分からない、という方は少なくないと思います。今回、ニトリホールディングスが発表した太陽光発電プロジェクトを参考にしてみましょう。

以下のデータは、2030年度に設置件数を180拠点まで増やす前提で、同社が数値を算出したものです。発電容量は80MW程度に達し、発電される電力は年間10万MWh以上を見込んでいます。これは、一般家庭約23,000世帯分の年間電力使用量に相当するといい、かなり大規模ですよね。
温室効果ガス削減量は、年間およそ5万トンです。同社によれば、杉の木約568万本が1年間に吸収するCO2の量と同等だそうです。

一目ですごさが分かるほど多大な効果が見込めるのは、Sustechと連携して余剰電力活用型の再エネ循環スキームを実現したからです。通常の自家消費型太陽光発電ですと、1店舗あたり年間電力消費量の20~30%程度しか賄うことができないといいます。しかし、電力プラットフォーム「ELIC」を活用すると、70~100%程度を賄える想定となっています。
「ELIC」は、2日後の局地的な天気を30分単位で予測することが可能なため、事前に電力需要を予測します。いつ、どの店舗で余剰電力が生じるか、あるいは電力が不足するかを導き出し、それに合わせて電力供給をしてくれるので、発電した電力を無駄にせず最大限活用できるのです。

大手ホームセンター企業の取り組みも紹介

ホームセンターチェーンを展開する「コーナン商事」では、伊藤忠エネクス株式会社と連携して、自家消費型太陽光発電設備の導入を始めています。
すでに発電を開始しているコーナン大東新田店と新居浜店では、導入前と比較して、使用電力量が約30%削減しました。また、温室効果ガス削減量は年平均で約327トンに及ぶとのことです。
太陽光発電設備の設置費用、メンテナンスもすべて伊藤忠エネクスが引き受けるというリース契約をしています。企業側にとって、本業への支障がほとんどなく、日頃の管理も事業者側が受け持ってくれるので、導入へのハードルが一気に低くなります。

同じくホームセンターチェーン運営の「カインズ」は、栃木県壬生町に再生可能エネルギーのみで運営する「カインズ壬生店」をオープンしました。太陽光発電とバイオマス発電に由来する電力のみで使用電力をすべて賄うとし、同社にとって初となる“CO2フリー店舗”が誕生したのです。
屋上に太陽光パネルを400枚設置、年間発電量は約17万6500kWhとなります。同店舗で使用する電力の約22%に相当し、不足分は電力小売事業者のエフオンと提携して、バイオマス発電所から電力供給を受ける形式です。壬生町内で運営するバイオマス発電所から供給されるため、エネルギーの地産地消を実現します。
カインズは、2025年までに自社店舗や倉庫などのカーボンニュートラル達成を目標に掲げました。さらに長期的なプランとして、2050年までにサプライチェーン全体のカーボンニュートラル、加えてカインズ店舗がある街のカーボンニュートラルにも貢献する方針です。

まとめ

ニトリホールディングスの太陽光発電に関する取り組みは、他業種の大手企業と比較しても、相当大規模なものになるでしょう。家具やインテリア製品の販売という、エネルギーとはまったく異なる業種でありながら、CO2排出量削減や再生可能エネルギーの普及に本気で向き合っていることが窺えます。
近い将来、事業で消費する電力が再生可能エネルギー由来か否かで、その企業に対する評価が変わる社会になることも十分に考えられます。そういった世の中に変化した時、いち早く太陽光発電をフル活用するニトリが、改めて多くの顧客から支持されるのかもしれません。