コラム

太陽光発電のパネルはリサイクルが必須に?リサイクルに関する動きを解説

太陽光発電パネルのリサイクル

ビルの屋上や住宅の屋根に太陽光パネルが並べられているのを目にしますが、パネルを廃棄する時どうするのか、気になりますよね。太陽光パネルの耐用年数は一般的に20~30年といわれており、永続的に使用できるものではありません。将来、多くの太陽光パネルが寿命を迎える時、私たちはどのようにリサイクルするべきなのでしょうか。現状のままだと、きちんと処分せず不法投棄されてしまう可能性があり、大きな問題となっているのです。
今回は、太陽光パネルのリサイクルについて、その動向を説明していきたいと思います。

太陽光発電パネルはリサイクルが義務化されている?

2024年6月、政府が使用済み太陽光パネルのリサイクルを義務化する検討に入ったことが、一部メディアで報じられました。来年の通常国会にも関連法案を提出するとみられ、義務化への動きを加速します。
現時点で、太陽光パネルに対するリサイクル義務を明文化した法律は存在しません。2022年7月から、事業用の太陽光発電設備に関しては、廃棄するための費用を積み立てることが義務化されています。ただし、住宅用太陽光発電には適用されず、太陽光パネルの処分について明確な取り決めがない状態なのです。
環境省の見積もりによれば、処理が必要になる太陽光パネルは2030年代後半に年間50~80万トンに及ぶそうです。2030年代半ば以降、大量廃棄のピークが到来することがほぼ確実視され、埋立処分を減らすことが求められます。廃棄物処理法上、太陽光パネルは産業廃棄物に該当し、同法に則って適正に処理される必要があります。しかし、複数の材料から構成されており、適切に分別して処理するには大きな費用がかかることもネックです。すでに一部の事業者が、寿命が過ぎた太陽光パネルを放置したり、不法投棄するなどトラブルも起きています。

太陽光発電パネルのリサイクル方法はどうやるの?

現状、私たちの住宅に設置した太陽光パネルを処分する場合には、廃棄物処理法に基づいて専門業者に処理を委託する方法が適切です。太陽光パネルの処理が可能な中間処理事業者に依頼すると、シリコン系パネルならほぼ全ての業者で処理が可能です。
具体的な方法として、まずアルミフレームとガラス、バックシートを分離します。アルミフレームは、マテリアルリサイクル(再利用)されます。ガラスは、グラスウール(ガラスを主原料とする人造繊維)原料や、コンクリート骨材・セラミックタイルなど資材として活用することができます。
ジャンクションボックス(電線の中継接続で使用される部材)からは銅が再利用でき、パネルのセルやシートについては、銀など金属を精錬業者が抽出します。パネルに用いられるプラスチックは熱回収されるのが一般的です。

太陽光パネルの重量のうち、およそ6割を占めるのはガラスです。よって、ガラスをどのようにリサイクルするかが、今後の大きなポイントになります。板ガラスとして使用することも検討中だといいます。
リサイクルが難しいとされている化合物系パネルは、複数の有害物質を含んでいるため、適切な処理が難しいです。含有物質として何が入っているのか分からない場合、業者が委託を断るケースも少なくありません。日本国内で普及している太陽光パネルのうち、化合物系パネルは5%程度ですが、リサイクル技術の向上が必要でしょう。

また、パネルの種類を問わず、カバーガラスに含まれるアンチモンは、レアメタルの一種かつ有害性が認められており、再利用が困難です。
ガラスのリサイクルを促進するため、含有成分を詳細に把握し、リサイクル事業者が適切な処理をできる体制を整えることが重要です。

太陽光発電パネルのリサイクル関連の上場企業を紹介

太陽光パネルのリサイクルサービスを提供する代表的な上場企業として、ここでは「株式会社エヌ・ピー・シー」を紹介したいと思います。同社は、中間処理サービスを行っており、ホットナイフ分離法を搭載した自動解体ラインを武器にしています。上述の通り、太陽光パネルを適切にリサイクルするためには、材料ごとに分離したうえで個別に処理することが必要です。ホットナイフ分離法は、ガラスを割ることなく、他の部材と完全に分離が可能だといいます。

リサイクルにおいて重要な点は、複数の材料が混在しないことです。ガラスの場合、他の部品で使用されている金属が混じってしまうと、リサイクルが困難になります。エヌ・ピー・シーは、ガラスをリサイクルしやすい状態のまま分離し、リサイクル業者に引き渡します。効率的で低コストな処理方法として評価され、太陽光パネル再資源化に最大限努める企業として覚えておきたい存在です。

他にも、住友商事株式会社を筆頭に、5社が連携して使用済み太陽光パネルのリサイクル事業に向けた実証実験を開始しています。参画したのは、「三井住友ファイナンス&リース株式会社」「SMFLみらいパートナーズ株式会社」「株式会社アビヅ」「株式会社SMART」です。
実証実験の内容として、「サプライチェーン構築のために必要となる使用済太陽光パネルの確保」と「リユース・リサイクルされた太陽光パネルの販路確立」を主な目的に掲げています。太陽光パネルの廃棄量が増加するであろう2030年代に向けて、持続可能なサプライチェーン構築を目指します。

まとめ

太陽光発電システムの生産・販売、太陽光パネルの設置工事を請け負う企業はたくさんありますが、リサイクルを行う企業はまだまだ数少ないのが現状です。太陽光パネルには、いくつかの有害物質が含まれている場合があり、適切な処理方法を確立することが急務です。アルミニウムやガラス、銅や銀、シリコンやプラスチックなど、正しく分離すれば再利用できる材料もあります。

なにより、太陽光発電を設置する最大の理由は、環境への負荷を減らすことですよね。廃棄するパネルが増え、新しいパネルを製造するために資源を消費するのを“エコ”とは表現できないでしょう。
リサイクルのサプライチェーンを確立するため、官民一体となって様々な課題に取り組んでいかなければなりません。