コラム

太陽光発電のパワーコンディショナーとは?徹底解説

再生可能エネルギーを固定価格で買い取る「固定価格買取制度(FIT)」の活用や、電気自動車(EV)」の一層の普及の流れの中で、住宅用太陽光発電の導入を考えておられる方や、また既に設置している方も少なくないでしょう。太陽光発電システムについて調べていくと「パワーコンディショナー」という言葉や機器について耳にすることがあります。太陽光を電気に変える太陽電池パネルは、もちろん太陽光発電になくてはならない大切な部分ですが、実はパワーコンディショナーも太陽光発電システムの心臓部と言われるほど重要な機能を持つ部分です。
この記事ではパワーコンディショナーの概要や、どんな役割を持つものなのか、またその寿命や故障時の対応などについて解説していきます。

太陽光発電のパワーコンディショナーとは

電気には「直流電流」と「交流電流」の二つがありますが、電力会社から供給され家庭で使われている電気は「交流電流」です。一方、太陽電池パネルで作られる電気は「直流電流」であるため、そのままでは家庭内で使ったり、電力会社に売電したりすることができません。パワーコンディショナーは、太陽電池パネルで作られた直流電流を、交流電流に変換する機器です。発電された電気をパワーコンディショナーで交流電流に変換することで、家庭内で使ったり、売電ができるようになるわけです。

パワーコンディショナーは直流電流を交流電流に変換するわけですが、この際どうしてもロスが生じます。このロスの割合を変換効率といいます。変換効率のよい機器であるほど家庭で使う電力や売電の電力を増やすことができます。ただ変換効率に関しては、現状どのメーカーも大きな違いはなく、95%から97.5%程度です。さらにパワーコンディショナーは、太陽光発電システムの仕組みの中で様々な役割を果たしています。

発電する電力を安定化して最大にする役割も

太陽電池パネルは、電流と電圧のある一定の組み合わせで発電します。天候等により日射量が変化すると、電流と電圧も変化します。パワーコンディショナーは、太陽電池の発電量が最大になるように日射量の変動に追従し、電流と電圧の値の組み合わせの最大発電電力点を自動で取りこみ、安定した発電が保たれるよう制御する働きをしています。最大電力追従制御機能と呼ばれています。

パワーコンディショナーは、発電した電力を売電するための制御もしています。電気は、ちょうど水が高い位置から低い位置に流れるように、電圧の高い方から低い方に流れる性質があります。太陽光発電で作られた電力を、自家消費の電圧を適切に保ちながら、売電のために調節しています。売電する際には、作った電力を電力会社側の電線系統に逆に送り込みます。

日本の電圧は100Vですが、電力会社側の電線系統では電力の需要や供給に応じて電圧が常に変動しています。実際の電圧は電気事業法で定められている101Vを中心として±6Vで変動しています。それでパワーコンディショナーは売電の際、電力を送り込むための電圧を電力会社側の電線系統の電圧より高く調整して、いわば電力が逆に流れるようにしています。逆潮流制御機能と呼ばれています。
また、電力会社の送電系統が停電などで停止した場合、パワーコンディショナーは出力を遮断して電気を電力会社側の系統に送り込まないようにします。停電しているはずの電線系統にもし電気が送り込まれてしまったら、停電の復旧工事を行っている現場に、流れてこないはずの電気が流れてしまい、トラブルの原因になります。

それで、パワーコンディショナーは電線系統の周波数の変動を検知したり、系統の過電圧や電圧不足、停電を検知したりして、異常の際太陽光発電システムを系統から隔離してトラブルを防止します。これを系統連携保護機能といいます。また、この機能があるおかげで、周囲が停電している場合でも、自宅での電気を自由に使えるようになるわけです。

パワーコンディショナーの寿命

太陽光パネルは、部品の劣化が無いため20年から30年ぐらい使い続けることができますが、パワーコンディショナーの場合、摩耗部品や経年劣化があるため寿命は一般的に10年ぐらいと言われています。ただ、近年の品質向上により、今では15年ぐらいまで製品寿命が長くなってきています。
パワーコンディショナーは、太陽光発電システムの中で重要な部分ですが、最も故障しやすい部分でもあります。そのために定期的にメンテナンスすることがとても大切です。メーカーでは、10年ないし15年の保証を付けるのが基本で、10年間は無償修理の保証がついている場合がほとんどです。15年の有償保証をオプションで提供しているメーカーもあります。この期間の故障の場合であれば、うまく保証を使って修理費用を節約できます。普段から定期的にメンテナンスしていれば、遅れずに小さな不具合を見つけることができ、無償保証期間の適用で修理交換が可能になります。それでパワーコンディショナー設置の際には、保証期間の内容も慎重に検討しておく方がいいでしょう。また、実際に修理か交換を実施する際には、その費用とFIT制度の住宅用太陽光発電電力買取期間10年の中で、そのタイミングでの交換か修理どちらにメリットがあるかのシミュレーションも役立ちます。いずれにしても寿命はあるので、修理よりも交換の方がメリットのある場合もあるでしょう。

太陽光発電のパワーコンディショナー設置の注意点

実際に、太陽光発電システムを設置して運用を開始する場合、パワーコンディショナーに関しても幾つか考慮しておきたい点があります。
一つがパワーコンディショナーの最大定格出力です。これはパワーコンディショナーが出力可能な最大電力値のことです。太陽光パネルの出力が、パワーコンディショナーの最大定格出力を超えた場合、超えた分の電力は変換することができません。例えば、太陽光パネルの最大出力が5kWの場合、もしパワーコンディショナーの最大定格出力が4kWだと、1kWは変換できず無駄になってしまいます。パワーコンディショナーの最大定格出力が、太陽光パネルの出力に合ったものであることが必要です。
もう一つが大きさと設置場所です。住宅用のパワーコンディショナーは、一般的に電子レンジ位の大きさで、屋内に設置するのが基本です。それで、スイッチの音や冷却ファンの音が常時聞こえている状態になります。また、サイズ的にもやや大きめのものもあります。最近では、屋外設置可能なタイプの住宅用パワーコンディショナーも出ています。製品を選ぶ際には性能や保証面に加えて、実際の住宅での設置場所を慎重に考慮して選んだほうがよいでしょう。

まとめ

パワーコンディショナーは、太陽光発電システムの心臓部と呼ばれています。発電した電力を自家消費したり売電できるのも、パワーコンディショナーの働きのおかげです。さらに安定した発電のための調整やトラブル防止機能も備えています。パワーコンディショナーの機能や役割、性能面にも十分に精通して、太陽光発電システムから最大限のメリットを引き出していきましょう。