コラム

太陽光発電大国・中国の最新の取り組み状況について解説

太陽光発電の導入容量において、中国はズバ抜けています。2010年代後半から市場が急成長を続けており、“太陽光発電大国”と称されるようになりました。
背景には、太陽光パネルなどの大量生産を実現し、価格を低下されたことが大きな要因です。全世界の太陽光発電市場における中国企業のシェアは8割を超えているのです。それほど海外でも多大な影響力を持つまでに至った中国ですが、一体どれほどの太陽光発電が導入されているのでしょうか。

中国の太陽光発電の規模はどれくらい?

中国では、特に2020年以降、太陽光発電の設備容量が急成長を遂げています。業界団体「中国光伏行業協会」の統計によると、2022年に太陽光発電容量が約87GW拡大して約392GWに達しました。さらに2023年には、前年比でおよそ55%も増加し、初の600GW超えとなりました。
2024年3月時点では、導入済みの太陽光発電容量は約655GWです。世界第2位のアメリカが、2023年末時点で約179GWでしたから、いかに大差をつけているかお分かりでしょう。

ただし、この急拡大に陰りが見えているとの報道も伝わっています。3月以降、新規導入量が前年同月比でマイナスに転じているといい、成長が鈍化しているのです。理由として挙げられているのは、

●送電グリッドに対する余剰電力の供給制限が厳しくなった
●一部の地方政府が太陽光発電と同時に蓄電池の設置を義務付けている

といった事項です。

あまりに急激な速さで太陽光発電が多くの住居や施設に導入されたため、送電設備の拡充が追いつかず、出力制御しなければいけない状態に陥っています。インフラ面の対応を進めないと、送電グリッドは限界に近づいており、今年の導入量がかなり伸び悩むのではとの予測も出てきました。

ルーマニアの太陽光発電計画から撤退したニュースについて解説

ルーマニア政府が実施した、計画設備容量およそ455MWという大規模な太陽光発電所の新規建設プロジェクト競争入札から、中国企業が撤退したことが話題になっています。入札から撤退したのは、太陽光パネル製造大手の「隆基緑能科技」と重電大手の「上海電気集団」の2社です。これらの企業が関与するコンソーシアムが、発電施設の設計などに入札しました。

欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会の報告では、中国政府が中国企業に補助金を給付して入札を支援した疑いがあるとして、調査を開始していました。入札の予想価格が約3億7500万ユーロ(約634億円)と大規模案件だったため、中国政府の介入により競争の公平性が歪められたのではないかと嫌疑が持たれているのです。
近年、欧州委員会は中国企業への過度の依存を避けるべきだという姿勢を見せています。実は、中国製太陽光パネルのEU圏内におけるシェア率は90%超えです。中国企業が安価な製品を大量に輸出し、現地の企業が太刀打ちできなくなってしまいました。

そういった背景から、中国企業をこれ以上市場に参入させないよう圧力をかけたとする見方もあります。「太陽光発電所の競争入札からの撤退は、中国企業にとって苦渋の選択だった。不公正かつ差別的なやり方で法律を運用している疑いがある。同じ競争入札にEU域外の非中国企業が応札しても、調査対象にはなっていないのは不自然だ」と欧盟中国商会は不満を露わにしました。
太陽光発電のみならず、電気自動車(EV)の分野においても、欧州委員会は中国から輸入されるEVに最大38%の追加関税を課すことを決定しました。中国政府への敵対的な動きは今後も加速していきそうです。

日本との関わりは現状どうなっているの?

中国は、太陽光パネルなど太陽光発電関連製品の生産能力が急激に伸びています。供給過多になるほど大量に生産するため、海外市場に進出して、安価を武器にシェアを伸ばす戦略を取っています。
先ほど、欧州における競争入札の話題を紹介しましたが、中国企業は当然ながら日本にも太陽光パネルなどを輸出しているわけです。国内メーカーの「SHARP」や「パナソニック」が、太陽光パネルの国内生産から撤退したのも、中国メーカーの台頭が原因でした。

2024年3月には、内閣府規制改革推進室の公式SNSアカウントで、会議資料に中国企業「国家電網公司」のロゴマークが透かしで入っている事態が発生しました。問題になったのは、民間構成員の大林ミカ氏により提出された資料です。
「同氏が事業局長を務める自然エネルギー財団の数年前のシンポジウムに中国の当該企業関係者が登壇した際の資料の一部を使用したところ、テンプレートにロゴが残ってしまっていた」と関係者は説明していますが、政府組織に中国企業が入り込んでいるのでは、と大きな騒ぎになったのです。

中国の太陽光発電関連企業は、日本のエネルギー分野に本格的に参入し、市場を独占するぐらいの意気込みを持っているでしょう。実際、日本でFIT制度が開始以降、中国人が設立したと思われる会社が続々とFIT認定を申請するなど、利益になりそうな所にすぐ目をつけてきます。
太陽光発電の主要部品について、中国企業のシェアは80%を超え、2025年までに約95%になる見込みです。日本でも中国依存を食い止めるのは困難な状況ですが、過度な依存は突然の供給停止や価格高騰を招く不安材料ともいえます。

まとめ

中国政府の強力な後押しをうけて、国内でサプライチェーンを確立し生産能力を拡張した中国メーカーは、今や海外市場でも向かうところ敵なし状態です。さすがに自国内では急ピッチで太陽光発電の普及が進んだため、インフラの整備が追いつかなくなっていますが、世界にはまだまだ太陽光発電が未開の地もたくさん存在します。
生産が安定しており、価格も安い中国製の太陽光発電製品は、これから再生可能エネルギーを導入し始める新興国でも人気を集めるに違いありません。“太陽光発電大国”として当面の間、世界の市場を牽引していくことになるでしょう。