コラム

太陽光発電の市場規模はどれくらいになった?【2024年度版】

2024年の太陽光発電の市場規模

国際情勢の悪化に端を発する資源価格の上昇などによって、電気料金が2022~2023年にかけて大きく上がったことは、記憶に新しいですよね。
2024年現在では、値上げ基調はひとまず落ち着きを見せているものの、世界的な物価高騰(インフレ)も相まって、余談を許さない状況が続いています。
そんな中、月々の電気代を少しでも削減しようと、太陽光発電に注目する方はますます増加傾向にあります。日本のみならず、太陽光発電は海外諸国でも拡大の一途を辿っており、再生可能エネルギーを普及させるために多くの国が尽力しているのです。
一体、全世界でどのくらい太陽光発電は導入されているのでしょうか。2024年時点における太陽光発電の市場規模について、見ていきたいと思います。

太陽光発電における2024年のトピック

一般的に、私たちが住宅の屋根や庭などの設置する太陽光発電は、出力容量10kW未満の小規模な設備で、住宅用太陽光発電と呼ばれています。導入するメリットは、発電した電気を自宅で使用することはもちろん、余った電気を電力会社に売却して、収益を得ることができるのが大きな特徴です。
日本では、FIT制度(固定価格買取制度)が制定され、電力会社は年ごとに決められた一定価格で電力を買い取る仕組みが確立しています。2024年度(令和6年度)の太陽光発電の売電価格は、住宅用太陽光発電ですと1kWhあたり16円です。昨年度から据え置きの数値となりました。出力容量10以上50kW未満だと売電価格は10円/kwh、50以上250kW未満は9.2円/kWhです。
また、今年から新たな制度として、「FIP制度」と「屋根設置区分」が本格的に始動します。従来は、売電価格は出力容量によって決定していましたが、これからは設置場所で価格に差が生じることになるのです。

当該規定が適用されるのは、出力容量10kW以上の事業用太陽光発電です。屋根設置型太陽光発電の場合、2024年度の売電価格は、1kWhにつき12円となります。地上に設置するより、屋根に取り付けるほうが価格が上がるのです。この背景には、住宅に限らず、オフィスや工場の屋根を発電場所として有効活用してもらいたいという政府の意図が窺えます。

地上設置型で出力容量250kW以上の大規模太陽光発電に関しては、FIT制度の適用はなく、FIP制度に統一されました。FIP制度とは、電気の市場価格にプレミアム(補助金)を加えた価格で売電することができるというものです。
従来のFITとの違いは、価格が常に変動する点です。電力の需給状況によって、たとえば真夏など電力需給がひっ迫しやすい時期は売電価格が上がり、反対に電力が余っている時には価格が下がります。FIT制度と比べて、太陽光発電による収益の見通しが立てづらくなるともいわれています。

世界での太陽光発電の市場規模について解説

調査機関の報告によれば、全世界の太陽光発電市場規模は、2024年度内に1TW(1000GW)に到達する見込みだといい、さらに拡大を続ける傾向だと考えられています。2020年の調査結果では、市場規模は300GWに満たない数値でした。世界的に急速に普及が進んでいることがお分かりでしょう。分散型と称される小規模な太陽光発電だけでも、円換算だと市場規模は1兆円をゆうに超えると推測されています。

市場を牽引しているのは、主に中国と米国です。特にアジア太平洋は世界最大の太陽光発電市場であり、中国に次いで日本やインドでも活発に導入されています。
まず中国に関して、太陽光発電設備の総容量が5億kW(500GW)を突破しました。住宅用太陽光発電設備に絞っても、累計1億kW(100GW)を超えています。直近1年間で、住宅用太陽光発電設備が30GWも増加したというデータもあり、急速なスピードで普及が拡大しているといえます。
社会全体の電力使用量が9兆kWhという桁違いの量ゆえ、非化石エネルギーの発電量を増やそうと必死なのです。2024年以降も引き続き新規導入量の増加傾向は続き、特に住宅や商業施設の屋上に太陽光パネルの設置を促進する方針です。
米国は、エネルギー省などの最新データによると、2024年内に連系出力およそ62.6GWの発電設備が新規に稼働すると見込まれています。そのうち半分以上が、メガソーラーと称される大規模太陽光発電所です。広大な面積の土地を活用すべく、メガソーラーが市場を牽引しています。テキサス州、カリフォルニア州、フロリダ州の3州で、計画されている新規導入容量の50%以上を占めるとされ、人口が多い地域で太陽光発電所の建設が推し進められていることが窺えます。
このように、国によって方針は様々ながら、発電量における再生可能エネルギーが占める割合を高めるため、各国が施策を打っているのです。

太陽光発電は今度どうなっていく?

国内の太陽光発電市場に焦点を当てると、「卒FIT」といわれる問題が指摘されています。住宅用太陽光発電においては、FIT制度の適用期間は10年です。期間を経過すると、固定価格で電力を買い取ってくれないため、買取価格が大幅に低下します。そのため、昨今では新規で太陽光発電設備を導入する場合、蓄電池を同時に購入するケースが一般的となりつつあります。

元々、余剰電力を売電して収益を得るモデルだったものを、蓄電池を活用して極力自家消費する流れに変わっているのです。FIT・FIP認定案件の新規導入量の推移をみると、2020年以降伸び悩んでおり、太陽光発電市場は新たな局面を迎えています。
一方、PPAモデルといわれる、事業者が太陽光発電システムを特定の施設に無償で設置して、発電された電力をその施設所有者(電力使用者)に販売する契約方式は、市場が広がっています。電力使用者とは離れた場所に発電システムを設けて電力を送電する、オフサイトPPA市場も注目を高めるでしょう。

日本は中国や欧米諸国と比較して国土面積が小さく、メガソーラーを導入する場所が限られてしまうという事情は否定できません。そこで、開発余地が大きいと期待されているのが、農地転用による荒廃農地の活用、あるいは現在使用されている農地の上に太陽光パネルを設置する営農型太陽光発電です。再生困難な荒廃農地が約1900平方km存在し、太陽光発電所の建設を進めると政府が公表しました。

営農型太陽光発電は、作物を栽培する農地に太陽光パネルを設置するわけですから、農業への支障を最小限に抑えた上でいかに効率よく発電をするかが重要になります。新たな営農型システムとして、太陽の動きにあわせてリアルタイムでパネルの角度を調整する追尾型や、太陽の光を表と裏の両面で受けることが可能な垂直設置型などが開発されているのです。

まとめ

2023年に開催されたG7広島サミットの成果文書に、「太陽光発電の設置容量を各国の既存目標や政策措置の手段を通じて、2030年までに合計で10億kW(1000GW/1TW)以上に増加させる」という内容が盛り込まれました。導入目標が設定されたことを受けて日本国内では、太陽光発電の導入量を2030年に現状の2倍にする想定を立てました。すでに平地面積当たりの導入容量は世界トップですが、今後さらに設備を増やしていくことが必須となっています。
目標を達成するためには、小規模発電所からメガソーラーに至るまで、あらゆる方法を用いて、太陽光発電を普及させていかなくてはなりません。喫緊の課題である再生可能エネルギーの拡大に関して、私たちも関心を高めて動向を追っていきたいところです。