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電気自動車は冬に弱いというのは本当?冬に乗る際の注意点を解説

電気自動車は冬に弱い

電気自動車の普及が進んできています。音が静かだったり、補助金が受けられるなどのメリットがあるのがEVの特徴なのですが、普通の自動車と比較して、冬などの寒い日に弱いのではという噂も広がっているようです。本記事では、電気自動車が冬に弱いという話は本当なのか、またその際の対策や注意点などについて詳しく解説していきます。

電気自動車は冬に弱い?寒さに弱いその原因とは

まず、EVが冬に弱いのかについてですが、結論から申し上げると本当です。ただし、電気自動車そのものというよりも、車内のリチウムイオン電池に原因があると言えるでしょう。
EVに内蔵されたリチウムイオン電池は、外の温度が寒ければ寒いほど充電の性能が低下することになります。これはつまり、同じ時間で充電できる容量が少なくなるという訳です。
また、一般的な自動車では冬にヒーターを使用すると、ガソリンの消費が大きくなりますが、同様のことが電気自動車にも言えます。寒い日に暖房のスイッチを入れると、全くヒーターを使用しない時と比べてバッテリーの減りが早くなります。

上記のように、充電性能が低下することと、暖房を使用することによりバッテリーの減りが早まることで、走行できる距離が他の季節よりも少なくなります。これが、EVが冬に弱いと言われる理由です。ちなみに、このことは過去に行われたテストや報告された事例によっても実際に証明されています。
例えば、日産の車を使用したとあるテストで、バッテリーの残量が7割ほど、外の気温が氷点下8℃ほどでエアコンを25℃に設定して約10時間経過したところ、バッテリーは1割程度しか残っていませんでした。また、外の気温がマイナス5℃の状態で100Vの家庭用充電器を使用したところ、一晩中充電しても全然バッテリーが充電されていなかったという事例もあります。冬などの温度が低い季節の場合、バッテリーを保護するためのヒーターが起動します。バッテリーの保護に電力の使用が優先されてしまうことが、充電できなくなる原因という訳です。気温がマイナス3℃の状態で外部の急速充電器・最大出力44kWhのものを30分使用したところ、結果は14.3kWhだったという報告もあり、冬場での充電機能の低下は顕著であるということがうかがい知れるでしょう。

冬に電気自動車を使用するのはメリットもある

以上のように冬場に電気自動車を使用するマイナス面について記述しましたが、実は寒い時期にEVを使用することのメリットも存在します。例えば、電気自動車ならではの安定した走りを実現できるという点です。冬の雪が降る時期、特に積雪が起こりやすい雪国では、冬の時期になるとどうしても車の運転が難しくなります。どんなに細心の注意を払っていたとしても、雪によるスリップ事故が発生してしまうおそれがあります。EVに内蔵されているモーターは高性能なため、雪の積もった道路でもガソリン車の4駆と同等のグリップ性能を誇ります。このため、スリップが発生するリスクなどを減少させることが可能です。

また、一酸化炭素中毒による事故が発生しないというのもEVならではの利点だと言えるでしょう。ガソリン車を冬場に使用する際に必ず注意しなければならないのが、一酸化炭素中毒による死亡事故です。ヒーターをつけっぱなしにしたことによる一酸化炭素中毒の事故は毎年のように発生しています。仮眠をとる際は暖房をつけっぱなしにしない、適度に換気を行うようにするなどの対策は簡単にできるのですが、外が寒いので窓を開けるのが億劫に感じたり、そもそも中毒になっている状況に気づきにくいなど、事故を完全になくすことは難しいようです。電気自動車はご存知のように電気を使用しているので、そもそも燃焼プロセスというものがありません。寒い時期に一酸化炭素中毒による死亡事故が発生する可能性が全くないというのは、EV特有の大きなメリットだと言えるでしょう。

今後電気自動車を冬に使用する際の注意点

住んでいる環境によっては、どうしても冬場に車を使用しなければならないという方々も多いでしょう。そのため、冬に電気自動車を使用する際の注意点として

・暖房の過度な使用を控えるようにする
・充電性能の減少に対処する
・雪の積もった急坂の走行には注意する

といった点が挙げられます。一つずつ見ていきましょう。

暖房の過度な使用を控える

暖房の過度な使用を控えるためには、例えば体を温める目的でヒーターを使用するのであれば、ヒートシーターのみを使用することで実現させることが可能です。冬の寒い時期にヒートシートの熱だけで過ごすことができるのかと疑問に感じる方も多いと思いますが、その点は心配ありません。氷点下30℃近くの環境を再現し、ヒートシーターのみで一晩を過ごした結果、問題はなかったという報告がされています。また、最近のEVにはヒートポンプ式という、冷房の圧縮や液化の際に大気中の熱を使用するシステムの暖房になっています。従来のエアコンよりも少ない電力で多くの熱を発生させることが可能なため、電気消費量を抑えることができます。

充電性能の減少に対処

次に充電性能の減少の低下にどう対処するかですが、前述したように自宅で100Vで充電することはできませんので、普通充電の際は200Vの電源を使用することで、この問題に対処することができるでしょう。

雪の積もった急坂の走行に注意

最後に、雪の積もった急坂の走行には注意するという点についてです。一般的な車を運転する際、雪の積もった急な坂道では車が止まりやすいので、走行する際は注意しなければならないというのは多くの方がご存知でしょう。電気自動車は高性能だから他の自動車に比べて雪の坂道でも止まりにくいのでは、と考える方も少なくないようですが、実は電気自動車も一般的な車とそう変わりありません。北海道で日産の車を使用したとある走行実験が行われました。10m走ると5m上る急坂でのテストだったのですが、スピードが10キロの場合だと車が途中で停止してしまいました。15キロでは苦労しながらも何とか登りきることができ、20キロだと問題なく走行できたという結果だったそうです。この実験結果から分かることは、雪の積もった坂道を登りきるためには、とにかくスピードをつけることが大事だということです。ただし、勢いをつけすぎると前の車に衝突してしまうおそれもあります。前方の車にぶつからないように、かといって自動車が停止してしまわぬようなスピードで坂道を走行するようにしましょう。

まとめ

電気自動車が冬に弱いという話は本当で、冬の寒さにより内蔵されたリチウムイオン電池の性能が落ちるのが主な原因です。また、EVでも雪のある坂道では車がストップしてしまう可能性があるので、運転する際は気をつける必要があります。ただし、一酸化炭素中毒になることが一切ないなど、EVならではのメリットというのもいくつか存在します。
また、電池の性能が落ちるのは事実でも、ヒーターの使用を控えたりするなど対処を怠らなければ、特に問題なく車を使用することができます。冬の時期に電気自動車を使用する場合は、注意点をしっかり理解した上で適切な運転を心がけることが何よりも大切です。