太陽発電フィルム

次世代の太陽光パネルは超薄型?最新のフィルムについて解説

太陽光発電に使用される太陽光パネルに関して、2022年時点で一般的に普及しているのはシリコン製です。特に中国で安く大量生産された物が国内でも広く使われているのですが、シリコン製だと重量がどうしても重くなり、設置場所に制限があるという問題点が存在します。
そこで現在注目されているのが、フィルム状の次世代型太陽電池です。この製品は非常に薄く、もはや“パネル”ではないため、太陽電池という言葉を用いています。日本企業が世界最高品質の製品を開発中であり、もし大衆化すれば太陽光発電の概念が大きく変わる可能性を秘めているのです。次世代型太陽電池には、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、ペロブスカイト太陽電池などの種類がありますが、この記事では特に注目度が高いペロブスカイト太陽電池を中心に、最新鋭のフィルム状太陽電池について解説していきます。

フィルム型はこれまでにない変換効率を実現!

次世代型太陽電池において、日本を代表する企業の「東芝」が世界中から脚光を浴びる出来事が起きました。フィルム型ペロブスカイト太陽電池で世界最高のエネルギー変換効率15.1%を実現したのです。同社は2018年、ペロブスカイト太陽電池として世界最大サイズとなる703平方cmのモジュールを開発していました。一般的に、サイズが大きくなればなるほど、高水準の変換効率を維持するのが難しいと言われており、海外だと4分の1以下、160平方cm程度にとどまっています。東芝は、世界最大サイズの太陽電池で、最高レベルの変換効率を実現したという点で、高い評価を受けているわけです。なお、変換効率とは、太陽光エネルギーをどれだけ電気に変換できるかを表わす数値です。シリコン系太陽光パネルだと、だいたい14~20%程度となります。この数値が高いほど、たくさんの電力を生み出すことができます。軽量で使い勝手が良いフィルム状という特性でありながら、従来のシリコン製と同水準の変換効率が可能となるなら、今後太陽光パネルがフィルム状太陽電池に置き換わることが期待できるでしょう。

太陽光発電を窓にフィルムを貼ることで実現?

次世代型太陽電池の社会実装が進展すると、これまで設置不可だった場所にも太陽光発電を取り入れることができるようになります。シリコン製の太陽光パネルだと、「パネルを並べる」という概念でしたが、フィルム状の場合、「貼る」という感覚に変わります。設置自由度の高いからこそ無限の可能性を秘めており、たとえば窓にフィルム状太陽電池を貼っていくことが構想されているのです。将来的に加工技術が発達すれば、どこでも貼れてしまうという話になるかもしれません。そうすると、都心に建っているたくさんの高層ビルの窓で太陽光発電が可能になるのではないでしょうか。高層ビルですから、周囲の建物に日光を遮られる恐れが低く、窓を開閉することもほぼ無いため、日光が出ている時間帯は効率よく発電できるはずです。フィルム状ペロブスカイト太陽電池を、都内の建物の壁面や窓、屋上などに貼り付けると、想定では原子力発電所2基分の発電が見込めると言われています。原子力発電は、比較的低コストで大量の電力を生み出せますが、安全性に懸念があるのは皆さんご存知の通りです。ちなみに、原子力発電所2基分とは、東京23区の家庭内年間消費電力量の2/3相当です。東京23区の人口はおよそ970万人ですから、ざっくり計算して600万人以上の生活を支える発電量となります。

将来的には無色透明な発電フィルムも実現?

再生可能エネルギーの開発は世界中で行われており、最先端の太陽電池に関しても研究が各国で進められています。アメリカのミシガン州立大学の研究チームが発表した「透明な太陽電池」も、新たな未来を予感させる画期的なものです。彼らが開発したのは、非常に薄く、一見プラスチックに見える素材の太陽電池です。建物や車の窓などに貼り付けて使用できます。透明ですから、窓からの眺めも変わらず、外観も一般的な窓とほぼ同じです。あらゆる建物や車の窓が太陽光発電に生まれ変わるとなれば、革命的な製品となるでしょう。
同大学の研究チームは、「今までソーラーパネルが設置できなかった大小のスペースに、低コストのソーラー設備を適用できるようになる。既存の建物の窓に、この装置を設置するだけで発電できるのが大きな利点だ。建物が密集し、新たなソーラーパネルの設置が難しい都市部にはぴったりの発電方法といえるだろう」とコメントしています。
日本企業でも、無色透明発電ガラスを建物に搭載するケースは出てきています。これも無色かつ透明で、一般のガラスが使えると同時に発電が可能となるものです。ただし、ガラス製品だと”貼り付ける”というより”設置する”という感覚ですので、フィルム状太陽電池とは異なると言わざるを得ません。

まとめ

次世代型フィルム状太陽電池は、これまで太陽光発電の導入が難しかった境遇の人や場所にも設置できる可能性を見出すという部分が、最も話題を集める理由です。東芝は、製品化を目指すのと並行して、ペロブスカイトの材料改良でエネルギー変換効率20%以上を目指しながら、コスト低下を実現すると宣言しています。他の日本企業、たとえばカネカや積水化学工業など、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「太陽光発電主力電源化推進技術開発」事業に参画する企業も、さらなる技術革新に尽力していく方針です。世間では、「太陽光発電のブームは過ぎた」「設置件数が伸び悩んでいる」という声もありますが、太陽光発電の本当の普及はまだまだこれからだと考えてよいのではないでしょうか。


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