太陽光発電の発電ロス

太陽光発電を行う上で知っておきたい発電ロスについて

太陽光発電を始める際にあたって必ず確認すべきことは、日光がどれぐらい当たるかという「日射量」と、どのくらい電気エネルギーを生み出すかという「変換効率」です。発電量は主にこの2つによって決まるといっても過言ではありませんから、導入時にはしっかりチェックしてください。
しかしながら、事前にシミュレーションを行ったとしても、いざ発電を開始すると、想定と大きく異なる結果になるケースも少なくありません。太陽光発電のパフォーマンスが悪い場合、”発電ロス”が生じている可能性を疑いましょう。
「変換効率」や「発電ロス」は、太陽光発電を行う時、絶対に覚えておくべきものです。そこで今回の記事では、発電ロスの概念や対策、変換効率に関する基本的な説明から素材別の差異、他の発電方法の比較などについて解説していきます。

発電ロスが起きる理由とデメリット

発電ロスについて説明するうえで、避けるのが難しいロスと、メンテナンスや点検によって防ぐことができるロスの二種類があります。そもそも発電ロスとは、光エネルギーなどを電気エネルギーに変換する時に生じるロスを意味します。ソーラーパネルは、日光をすべて電気エネルギーに換えられるわけではないのです。およそ20%しか電気に変換できないといわれています。どうしてそんなことが起きてしまうのでしょうか。
理由として挙げられる要素は、光の波長、反射、電気抵抗の3つです。太陽光は、紫外線や可視光、赤外線など様々な波長を持つ光から構成されます。そのうち可視光と赤外線で全体の約9割を占めます。電気エネルギーを生み出すために活用できるのは、可視光の波長だけなのです。
赤外線はソーラーパネルに当たると熱を発生させます。具体的にいうと、分子が振動することで熱エネルギーが生まれます。イメージとして、白熱電球を思い浮かべてください。電気が点灯している時、触ると非常に熱いですよね。あの熱さも、発電と同時に熱エネルギーが生まれることが原因です。仮に100%電気エネルギーに変換できるなら、熱は生じません。ところが現時点では不可避なものですので、一定の発電ロスが発生するのは仕方ないのだと考えましょう。
光の波長以外にも、ソーラーパネルが光を反射してしまい、光エネルギーを取りこぼしてしまうことも原因の一つです。ケーブルや他の機器の電気回路を通過する際に受ける電気抵抗によってもロスは生じてしまいます。ここまでは、太陽光発電の原理上、いかんともし難いロスについて言及しましたが、ここからは対策次第で防ぐことが可能な発電ロスについて説明します。太陽光発電を開始した後に起こるロスの主な原因は下記の通りです。

●経年劣化
●パネルの汚れや破損
●周囲環境
●ケーブルの破損

ソーラーパネルの状態には特に気を配る必要があるでしょう。一般的に寿命は20年以上と長持ちするものですが、変換効率は年ごとに0.25%程度ずつ低下するといわれています。変換効率は年々下がるとはいえ、あまりに急激に低下した際は、メーカーに相談してみるべきです。草木や落ち葉や鳥の糞など、ソーラーパネルが汚れると発電ロスが起こります。少しなら影響無くても、蓄積すると汚れた箇所がパネル全体の電流を止めて発熱する”ホットスポット現象”が発生する危険があります。最悪の場合、火災に繋がるかもしれませんので、発電機器の清掃を定期的に行うと良いでしょう。
台風や落雷などの自然災害、強風による飛来物などでソーラーパネルが破損した時も、発電ロスに注意してください。パネルだけでなく、ケーブルが破損しても正常に発電できないケースが起こるので、やはり定期的にチェックするべきです。
太陽光発電システム導入後、周辺に高層ビルやタワーマンションが建設され、影をもたらすようになっても、発電量が減少する恐れがあります。建設予定の建築物が無いか、把握しておくことも大切でしょう。

太陽光発電のエネルギー変換効率について解説

ソーラーパネルを選ぶ際、必ず耳にする言葉が「変換効率」です。簡潔にいうと、光エネルギーをどれくらい電気エネルギーに変換できるかを表わす数値です。同じ環境で発電する場合、変換効率が高いソーラーパネルの方が発電量も多くなると考えられます。ただし、気を付けないといけない点は、”変換効率”には「モジュール変換効率」と「セル変換効率」の2つが存在することです。
「モジュール変換効率」は、ソーラーパネル1平方メートルあたりの変換効率を示した数値です。ソーラーパネルを“太陽電池モジュール”とも呼ぶことから、この名前が付いています。
対する「セル変換効率」とは、太陽電池セル1枚あたりの変換効率を示した数値です。セルとは太陽電池モジュールを構成する最小単位の部品であり、たくさんのセルを繋げた時に発生する電気抵抗を考慮していない数値となります。通常、セル変換効率の方がモジュール変換効率より高い数値となるはずです。
一部の悪徳業者は、お客様から変換効率について尋ねられた時、わざとセル変換効率だけ教えて、ソーラーパネルの性能がすごく優れているように誤解させる事例も見受けられます。本来は、モジュール変換効率こそ私たちが知るべき数値です。間違えないようにしましょう。目安として、ソーラーパネルの素材別変換効率は以下の数値を参考にしてください。

●単結晶パネル=20%程度
●多結晶パネル=15%程度
●薄膜パネル=10%程度
●化合物系パネル=15%程度

他の発電方法と発電効率を比較するとどうなる?

発電効率とは、変換効率とほぼ同意語で、水や光、風などのエネルギーを電気エネルギーに変換するときの割合を表します。先程、太陽光発電の変換効率が大体20%程度だと説明しましたが、水力発電や風力発電、地熱発電など他の発電方法だとどのくらいなのでしょうか。2022年時点で普及している各発電方法の発電効率は、おおよそ下記の数値となります。

水力発電=最大80%
風力発電=25~40%
太陽光発電=最大20%
地熱発電=10~15%

水力発電は、再生可能エネルギーの中では変換効率が最も高い反面、初期費用が容量1kWあたり130万円以上かかるため、私たち一般人は中々手を出せません。風力発電は、初期費用こそ約50万円で太陽光発電の1.5倍ほどですが、これ以上変換効率を上げるのは不可能だといわれています。発電時に摩擦などのロスが生じるため、せいぜい40%が限界なのです。地熱発電は、あまり発電効率が良くありません。発電の原理上、大幅な改善は見込みづらいでしょう。
そういった中で太陽光発電は、初期費用が容量1kWあたり約30万円と一番安価で、設置場所をさほど選ばないというのが大きな利点です。一般人でも導入しやすく、再生可能エネルギー普及に貢献したいと思ったら、最有力候補に挙がると思われます。

まとめ

太陽光発電システムでも、宇宙の人工衛星で使用される超高性能なものは発電効率が約40%と通常の製品より大幅に上昇します。しかし、コストも莫大に増えるため、やはり私たちが選ぶなら、発電効率20%程度の太陽光発電が一番現実的です。導入した後は、遠隔監視システムを設置したり、定期点検を専門業者に依頼するなど、発電量を維持する対策を怠らないようにしてください。メンテナンスの頻度が少ないほど、発電ロスが起きる確率も高くなるでしょう。
また、不具合に早急に対応することが、長期間にわたるロスを避ける最善の方法です。地味で当たり前のように聞こえるかもしれませんが、日々の数値を気にせず放ったらかしにしている方も少なくないのが実情です。太陽光発電を始める際には、発電ロスと変換効率についてしっかり頭に入れたうえで、メンテナンスを定期的に行うことを心掛けましょう。


関連記事


おすすめランキング


ピックアップ記事

  1. EVのコスト・維持費

    2024.04.25

    EV(電気自動車)の維持費はどれくらい?かかるコストを中心に解説

    近年、環境への配慮から電気自動車(EV)への関心が高まっています。しかし、多くの人がEVの導入を検討…
  2. EV市場規模の伸び悩み

    2024.04.25

    EV(電気自動車)の市場規模が失速中?実情や原因を解説

    近年、環境問題への関心の高まりと技術革新により、電気自動車(EV)市場は急速に成長しています。しかし…
  3. テスラのパワーウォール

    2024.04.24

    テスラの蓄電池パワーウォールとは?徹底解説

    電気自動車(EV)を手掛けるテスラが発売した蓄電池、パワーウォール。どのような蓄電池か、導入するメリ…

カレンダー

2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930