コラム

グリーン投資減税とはどのような施策?徹底解説

グリーン投資減税とは

再生可能エネルギーや低炭素設備の普及を政府が支援する制度として、「グリーン投資減税」というものがあります。大企業に限らず、中小企業も積極的に地球環境に優しいエネルギーを導入することを促すため、税制優遇効果を受けられます。資金面において、多額のキャッシュを支出することが厳しい状況のスタートアップでも、太陽光発電といった再生可能エネルギーに目を向けて欲しいという考えから創設された制度です。
そこで、グリーン投資減税を活用するとどのようなメリットがあるのか、きちんと理解しておくことが重要になります。今回は、制度の具体的な内容や、多くの企業が注目しているESG投資の話題も交えて、説明していきたいと思います。

グリーン投資減税の概要

“グリーン投資減税”と一般的に呼ばれている制度の正式名称は、「エネルギー環境負荷低減推進税制」です。経済産業省・資源エネルギー庁のサイトでは、グリーン投資減税の創設経緯について、下記のように記述されています。
「我が国のエネルギー環境への適合及びエネルギー需給構造の改革のため、需要・供給の両面において、エネルギー起源CO2排出削減や再生可能エネルギー導入拡大に資する設備投資の加速化が必要不可欠であるとの観点から、平成23年度税制改正において創設されたものです」

太陽光・風力・水力・地熱など再生可能エネルギーの導入拡大のみならず、CO2排出量の削減に貢献する省エネ設備への投資も支援の対象に含まれます。ただし、グリーン投資減税が適用されるためには、次の条件を満たす必要があります。

①青色申告書を提出する法人又は個人
②対象の設備を設置して、1年以内に事業の用に供すること
③太陽光発電の場合、固定価格買取制度の設備認定を受けた容量10kW以上の設備

これらの条件をクリアして、グリーン投資減税の申請が受理されると、下記いずれかを選択して税制優遇を受けることが可能です。

●普通償却に加えて、基準取得価額(計算基礎となる価額)の30%特別償却
●基準取得価額の7%相当額の税額控除(※中小企業者等に限る)

中小企業者とは、大企業の子会社を除く資本金1億円以下の法人または従業員数1,000人以下の法人を指します。補足として、国や地方自治体の補助金で取得した設備は、グリーン投資減税の対象になりませんので注意してください。

他の再生可能エネルギーに関する税制優遇についても調べてみた

グリーン投資減税は、平成23年に創設され、平成28年4月に概要が一部改正されました。その際、同制度において最大のメリットといわれる「100%即時償却」が廃止されたのです。
太陽光発電および風力発電に関しては、即時償却することが可能でした。設備費用を経費として全額計上し、大幅な節税が受けられるため、企業にとっても魅力が大きく、太陽光発電の普及に貢献する形となりました。残念ながら現在、即時償却の優遇措置はありませんが、「中小企業経営強化税制」という別の制度が注目されています。中小企業や小規模事業者を支援する目的で創設され、条件を満たせば税制措置を受けることができます。
中小企業経営強化税制は、資本金または出資金が1億円以下の法人などが対象設備を取得した場合、

●固定資産税が3年間2分の1になる
●取得価額を上限とした即時償却 または 最大10%の税額控除(資本金3000万円超1億円以下の法人は7%)を選択

という税制措置が適用されます。
太陽光発電設備ですと、地域の経済産業局への事前申請・許可が必要な点と、全量売電型は対象に含まれないので注意しましょう。つまり、自家消費型太陽光発電設備もしくは余剰売電型の設備に限定されるわけです。
他にも、再生可能エネルギー発電の特例措置と併用はできない、電気業など一部の業種は対象から除外されるなど、いくつかの条件があります。
とはいえ、中小企業が設備投資するにあたり、即時償却できるのは大きなメリットです。設備の導入を検討する際、ぜひとも申請を検討してみましょう。

ESG投資とはどんな投資?力を入れている企業についても紹介

ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3要素を投資の視点に入れて、ESGの取り組みを評価できる企業を投資先に選んでいく投資手法です。
通常、投資を行う際には、企業の売上高や利益を重視しますが、ESGという非財務情報も考慮して、社会課題の解決を目指す目的があります。気候変動や資源枯渇といった環境問題、働き方改革やダイバーシティの推進などの社会問題、法令遵守や透明性の高い情報開示といったガバナンス、という現代の世の中が抱える問題にしっかりと取り組んでいる企業に投資することで、持続可能な社会の実現に繋がると考えられています。あくまで“投資”ですから、ESGの評価が高い企業に寄付するわけではありません。ESG課題に向き合うと、社会が求めているサービスを提供することができ、結果として企業の成長に結びつくと想定されます。投資する以上、当然リターンを求めるわけですが、中長期的な目線でみるとESGの取り組みに積極的な企業こそ評価が向上し、リターンを期待できるという考えです。

東洋経済新報社が出版した『CSR企業白書2023』によると、ESG企業ランキングとして上位にランクインするのは、やはり大企業が名を連ねています。

●通信:NTT、KDDI
●商社:三井物産、伊藤忠商事
●金融:三井住友FG、SOMPOホールディングス、東京海上ホールディングス
●飲食:アサヒグループホールディングス、キリンホールディングス
●証券:大和証券グループ、野村ホールディングス
●小売:丸井グループ、セブン&アイグループ

誰もが知る大企業が、積極的にESGと向き合い、投資先企業に対してもESG課題への取り組みを求めているのは、とても重要なことです。将来的には、中小企業も同様にESG投資ができる環境が整うと、日本企業全体の底上げ、海外からの評価向上にもつながるでしょう。

まとめ

企業が太陽光発電設備を新たに導入する場合、初期費用として数千万単位のコストがかかり、資金繰りを圧迫する恐れがあります。日本政府としては、大企業に限らず中小企業にもESGの取り組みを強化して欲しいという思いがあり、導入へのハードルを下げるため、いくつかの税制優遇措置を設けています。
真夏の猛暑やゲリラ豪雨、エネルギー価格の高騰など、身近なところで社会の変化、地球環境の変化を感じる場面も増えてきました。現在の制度は、幅広い中小企業を対象とするものの、手続きが複雑であったりと課題があるのも事実です。未来の地球への投資という意味もこめて、より多くの企業が税制優遇措置を活用しながら、社会課題の解決に向き合ってほしいところです。