コラム

太陽光発電を効率良く行うにはレンズが肝?レンズについて解説

太陽光発電のレンズ

太陽光発電において、発電量を増やすために大事なことは何でしょうか。その答えは、簡潔にいうと日光が当たる量とソーラーパネルの性能です。
「年間発電量=変換効率×日射量」
という計算式が、おおよその発電量を見積もる際にも用いられています。
いかに多くの日光を確保できるかが鍵を握るのですが、天候は予測できず、どうしても自然の影響に左右されてしまうものですよね。そこで、最大限効率よく日光を集めるため、レンズを使用した太陽光発電が注目を浴びています。今回の記事では、2022年大きな話題となった逆ピラミッドレンズや、集光型太陽光発電といわれる仕組みについて、詳しく解説していきます。

太陽光発電におけるレンズの役割

なるべく日射量を増やすための仕組みとして業界の関心を集めたのが、太陽の角度に合わせてソーラーパネルの角度を自動調節する機能です。太陽が東~南~西へと動くのにあわせて、ソーラーパネルの角度を調節すればその分日光をしっかり受けることができるわけです。しかし、製造コストやメンテナンス負担が大きいという理由から、さほど普及するには至りませんでした。
昨今では、面積が小さくても変換効率が高いソーラーパネルに、レンズなどを使って光を集めるというやり方に、多くの方が注目しています。いわゆる「集光型」と呼ばれる仕組みで、太陽を追尾するためのセンサーを内蔵します。レンズといっても、カメラに搭載されるレンズとは異なり、同心円の形状をしたものが一般的です。
材料はポリカーボネート製、レンズの中心直下に小さいソーラーパネルを設置して、光を伝達します。こういったレンズは「フレネルレンズ」といわれ、軽量かつ小型、製造コストも比較的安く、大量生産が可能なものです。
レンズを通じて電力を生み出す場合、高性能なソーラーパネルを用いることが推奨され、変換効率30%超えも可能だといいます。面積は小さくても日光を一身に浴びる仕組みなので、通常の太陽光発電より変換効率が2倍以上になることもあります。ソーラーパネルは非常に高額な機器ですが、レンズと併用することで、効率良く安価に電気を作り出せると期待されているのです。

注目を集める逆ピラミッドレンズとはどのようなもの?

2022年6月、アメリカ・スタンフォード大学の電気工学科に所属するニーナ・ベイディア氏の研究チームが、効率よく集光できる「逆ピラミッド型レンズ」を開発しました。文字通り、ピラミッドを逆さにしたような形状をしており、「Axially Graded Index Lens」を略して“AGILE”と呼ばれています。異なる屈折率のガラスやポリマーを積み重ねて、日光の角度に関係なくレンズのどの面に当たった光でも、底面に集中させることを可能としました。
ベイディア氏によると、「逆ピラミッド型レンズの仕組みは虫眼鏡の集光に似ている」とのこと。レンズに当たる太陽光の90%を捉え、約3倍の明るさにしてソーラーパネルへ伝達するのです。逆ピラミッド型レンズのスゴいところは、レンズやソーラーパネルを固定したままでも、非常に高い変換効率を維持できる点でしょう。たとえば虫眼鏡だと、光を集め続けるためには、虫眼鏡の角度を時間によって調整しなければなりません。曇りの日における僅かな散光も取り込むことができるため、日の出から日の入りまで太陽の角度に関係なく日光を電力に変換できると研究チームは説明しています。
現時点でまだ実用化の予定は立っていないとのことですが、もし逆ピラミッド型レンズが普及すれば、ソーラーパネルの使用枚数を削減できる可能性があります。また、他の電気機器への活用も期待されており、今後の動向を追っていきたいですね。

集光型太陽光発電の特徴とデメリットも併せて解説

太陽をトラッキング(追尾)する集光型太陽光発電システムは、晴れの日が多い地域で利用すると効果的といわれています。一般的にレンズは一方向からの光を集めるため、太陽が東から西へ動くのにあわせて、架台ごと動かす必要があります。この点が、メリットでありデメリットにもなりうるのです。
先程も触れた通り、集光してソーラーパネルへ伝達する際、通常の数倍もの光を送ります。よって、計算上はソーラーパネルの面積を従来の数分の1にしても同じ発電量が期待できるでしょう。
一方、晴れているけど太陽が曇に隠れている、もしくは曇天の日はあまり発電できない点には注意してください。通常の太陽光発電システムなら、曇りの日でも晴天の日と比較して50~60%程度は発電します。ところが集光型太陽光発電の場合、直射日光が当たる状況でないと効果を発揮しません。
もう一つ、太陽の動きを追尾するシステムは、日中絶えず動くように設計されているため、導入費用やメンテナンス費用がかさみます。通常の平板固定架台よりも故障リスクが高く、費用も高いのは想像に難くないでしょう。そもそも日本の気候的に、集光型太陽光発電は向いていないとする指摘もあります。砂漠地帯のように常に直射日光が照り続ける気候ではないので、期待ほど発電量は伸びないという意見も、一理あるかもしれません。

まとめ

再生可能エネルギーの普及に向けて太陽光発電所を多数設置すると、その分敷地面積が必要です。森林伐採や農地破壊に繋がる可能性も否定できず、なるべく効率よく発電量を増やす方法の開拓が求められています。レンズを用いた集光型太陽光発電は、一つの選択肢としてメリットはあるものの、費用面や気候への対応がまだ不十分とも言えます。発電をより効率的に、太陽電池の面積をより小さく、という課題を、逆ピラミッドレンズが解決してくれる期待は持っていいでしょう。私たちの自宅に設置するような住宅用太陽光発電に本格導入されるのはまだ先だと思われますが、大衆化される日を待ちたいところです。