金属、と聞いて多くの方がまず思い浮かべるのは、金や銀、銅などではないでしょうか。もちろんそれらも金属に含まれるのですが、実は”金属”という括りの中には、他にもたくさんの種類があるのです。
鉄や銅、鉛など、大量生産かつ大量消費されるものを一般的にベースメタルと呼び、アルミニウムなども該当します。耐腐食性を持つ金や銀、プラチナなどは、貴金属と称され、いずれも高価なことで有名です。
そして今回お話するのが、希少金属といわれるレアメタルです。元素名を聞いてもピンと来ない名称が多いかもしれませんが、幅広い産業で利用されており、現代の私たちの生活に欠かせないものばかりです。再生可能エネルギーの普及促進に伴って、太陽光発電の導入が拡大している中、レアメタルは太陽光発電においても重要な役割を果たしています。この記事では、希少金属を使用することの問題点や課題にも触れていきますので、ぜひ参考にしてください。
一部で太陽光発電がエコじゃないと言われている理由
レアメタルが太陽光発電システムのどこに使用されているかというと、太陽電池(ソーラーパネル)です。ソーラーパネルは主にシリコン系と化合物系に分類できますが、レアメタルが重宝されているのは化合物系となります。CIS型薄膜太陽電池などの化合物系では、インジウム、ガリウム、セレンなどのレアメタルが使用されます。日本国内では、残念ながらレアメタルはほとんど産出されません。ほぼ全てを輸入に依存しているのが現状です。レアメタルの生産国として大半のシェアを占めているのは中国です。
採掘にあたっては、危険な作業が伴い、適切な処理が行われなければ環境汚染を引き起こす可能性も否定できません。廃棄物の増加や水質汚染だけではなく、労働者の安全面も十分に考慮されるべきです。特に、新疆ウイグル自治区にて安い賃金で過酷な労働を強要されるケースもあると聞きます。
また、ソーラーパネルは耐用年数を過ぎれば廃棄物となります。希少金属であるレアメタルは限られた資源ですが、リサイクル技術がまだ確立できていません。レアメタルは太陽光発電以外にも様々な産業で使用される重要な資源です。高価なレアメタルを可能な限り回収することが求められています。もし出来ないのなら、貴重な資源の無駄遣いと非難されるかもしれません。
現在、最も安く大量に生産されている太陽電池は「シリコン系」です。主要材料のシリコンについて、高純度シリコンを精製するためには大量の電力を必要とします。太陽光発電などの再生可能エネルギーは、電気を生み出す目的で生産しますが、その過程で電力を大量消費するのは矛盾だという意見もあります。
シリコン系もやはり中国が圧倒的に生産量が多く、電気代が安価なこと、環境基準が低いことが理由として挙げられます。生産コストを下げるためには安価な電力が絶対条件です。環境影響をさほど考慮しなくて良いというのも、中国や新疆ウイグル自治区で生産量が多い理由なのです。脱炭素化というエコな社会を目指すはずが、生産状況や廃棄物処理の懸念から、太陽光発電がエコじゃないと否定的な見方をする方も一定数存在します。こうした意見をうけて、リサイクル技術の進歩が加速化することが期待されています。
太陽光発電とレアアースの関係
レアアースとは、31種類あるレアメタルの一種で、17種類の元素(希土類)の総称を表わすものです。両者を混同して使用する場面も見受けられますが、レアアースはレアメタルの一種だと覚えておいてください。日本国内に関していうと、レアアースはソーラーパネルや太陽光発電機器には用いられていません。次世代自動車用部品、ガラス基板、排ガス触媒など製造業に多大な貢献をしています。
ただし、レアアース埋蔵量世界第3位といわれるベトナムで、新しいエネルギー技術建設にレアアースを活用すると公言されました。ベトナムは化石燃料由来のエネルギー依存から脱却するため、再生可能エネルギー普及促進を目指しているのです。レアメタルは太陽電池などに使用され、今や欠かせない資源となっているだけに、レアアースの今後の動向にも注目が集まります。
風力発電でもレアメタルは必要不可欠!
太陽光発電と同じく再生可能エネルギーの一種である風力発電においても、レアメタルは重要な役割を果たしているのです。風力発電は、主にローター・ナセル・タワーから構成されます。ナセル内には、発電機や制御関連が収容されており、この発電機にレアメタルが使用されています。元素名はネオジウムとジスプロシウムです。”永久磁石”と呼ばれ、自らが磁力を持って長期間発生し続けられるものをいいます。
構造材料別にみると、鉄、銅、アルミニウムといったベースメタルの使用量が圧倒的に多いですが、風力発電全体の1%弱がレアメタルです。ちなみに、ネオジウムもジスプロシウムも、希土類元素と称されるレアアースに属します。
日本は世界需要の約半分を占めると言われるほど多くの産業でレアアースを用いていますが、世界産出量の9割以上を占める中国からの輸入に頼らざるをえない状況です。
まとめ
先程も言及した通り、日本国内ではレアメタルの産出はほぼ見込めません。輸入に依存していますが、中国から安定継続的に今後も輸入できる保証はないでしょう。だからこそ、貴重な資源を最大限リサイクルするための技術革新が不可欠です。たとえば硫化剤を用いた沈殿分離法など、様々な手段が検討・研究されています。
太陽電池の生産に大量のエネルギーを要し、希少金属をどんどん消費して、寿命がきたら廃棄物として放置ようでは、それこそ太陽光発電がエコじゃないと批判が向けられます。真の意味で地球に優しい、地球環境を保全する再生可能エネルギーであり続けるために、レアメタルのリサイクルが今後の大きな焦点となるでしょう。