コラム

新エネルギーの安全性は問題ないの?わかりやすく解説

新エネルギーについて

日本がカーボンニュートラル社会を目指すべく、環境に配慮した新エネルギーの導入拡大が進んでいます。昨今、太陽光発電など再生可能エネルギーが急速に広がりを見せ、全国のあらゆる場所で目にするようになりましたが、安全性に問題はないのでしょうか。
私たちが日々の生活を営んでいくためには、エネルギーを安心かつ安定的に供給していくことが欠かせません。近頃、「エネルギー安全保障」という言葉が新聞やニュースで取り上げられているように、安全面には最大限注意することが求められています。
この記事では、新エネルギーにおける安全性や経済性、そしてエネルギー安全保障の詳細についても触れていきたいと思います。

再生可能エネルギーの安全性やメリットについて

エネルギー問題について語るうえで、安全性という観点は最も重要な要素の一つです。2011年3月11日に発生した東日本大震災の二次災害により、福島第一原子力発電所の事故が発生しました。放射性物質が大気中に放出され、健康被害が叫ばれましたよね。事故から10年以上が経過した現在でも、福島県産の作物や魚介類を食することに不安を覚える方が少なくありません。

それまで、高効率で安全に大量の電力を供給することができると思われていた原子力発電の危険性が露呈したことで、政府はエネルギーについて根本的な見直しを迫られます。同時に、二酸化炭素(CO2)排出による大気汚染や地球温暖化問題も深刻さを増しており、再生可能エネルギーに舵を切ることを決断するわけです。

再生可能エネルギーには、従来の化石資源由来のエネルギーには無いメリットが存在します。太陽光や水、風などを活用するため、エネルギー源が枯渇することがないですし、発電時にCO2をほとんど排出しません。そして、放射性廃棄物などの有害物質が発生しない点も重要な部分です。持続可能かつ環境への負荷が小さいことが、再生可能エネルギーへのシフトが急速に進んでいる理由です。

とはいえ、再生可能エネルギーが完全に安全で危険性が皆無かといえば、断言するのは現状難しいでしょう。たとえば電力会社の観点から見ると、今までは配電線で一方的に送電するのみだったものが、電気を買い取るという逆の流れが発生します。私たちの自宅の屋根や庭に設置する家庭用太陽光発電は、余剰電力を売電できる仕組みです。電気が行き来する量が増えると配電線の電圧の変動が大きくなりやすく、周波数や電圧を一定の水準に維持できなくなる恐れが懸念されます。もし一定でないと、工場の機械が誤作動を起こす、あるいは家庭用電化製品が故障するなどのリスクがあります。

普及が進んでいくと中小事業者の参入も増加しますが、技術基準の適合性、一定水準を満たす性能・仕様の原則化が求められます。設置場所によっては、斜面に取り付けた太陽光パネルが豪雨で土砂崩れを起こし破損する、風力発電の騒音がうるさく住民からクレームが発生する、街の景観を悪化させるため自治体から工事中止を要求される、などのトラブルが想定されるのです。

新エネルギーの経済性は?

経済性とは、文字通り経済や金銭に関係があること、特に時間・費用・手間が掛からずに済むことを意味する言葉です。仕事だけでなく、日常生活においても、私たちは無意識に経済性を念頭に置きながら行動しています。
新エネルギーの経済性という部分で、最も議論にあがるのがコストの低減に関してです。日本の新エネルギーは、まだまだコスト面の改善余地があると言わざるを得ないのが実状です。

例を挙げると、太陽光発電システムの1kWあたり価格は、国内だと大体25~28万円程度です。一方で欧州では、2014年の段階で1kWあたり15万円前後でした。10年前すでに現在の日本より価格が安かったことになります。発電コストという視点で見ても、諸外国では太陽光発電および風力発電で2010年代に1kWhあたり10円を下回る水準まで低下していました。

国内の主なエネルギー源とされる火力発電や原子力発電と比較しても、再生可能エネルギーはまだまだコストが高いです。発電方法別に1kWhあたりのコストを見ていくと、大規模な事業用太陽光発電で2020年代以降ようやく、12円前後となりました。しかし、風力発電は1kWhあたり約20~30円、地熱発電は約16円、中小水力発電は約25円です。LNG火力発電や原子力発電は10~11円程度ですから、太陽光発電だけが従来の発電方法と並ぶところまで来たわけです。

日本の再生可能エネルギー普及をめぐって、太陽光発電だけに偏っていることが度々指摘されますが、それはコスト面において優位性があるからにほかなりません。今後、さらなる価格低下が期待されるのは、太陽光発電と風力発電だといわれています。それでも、どの発電方法にも長所と短所があるわけでするから、相互を補えるようバランスを取りながら導入を進めていくべきでしょう。

エネルギー安全保障とは?わかりやすく解説

“エネルギー安全保障”、あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、私たちにとっても非常に大切な概念ですので紹介します。これは、エネルギーを安定的かつ必要な量を適切な価格で確保することを指す言葉です。国は、長期継続的にこの状態を維持していかなればいけません。

日本のエネルギー自給率が極めて低いことは、多くの方がご存知かと思います。原子力発電を国産として数値に加える場合でさえ、自給率はたった13%程度です。石油や天然ガスといった天然資源に乏しく、ほとんどを輸入に依存しています。
そんな中、2022年にロシアがウクライナに侵略する出来事が起こりました。ロシアは日本にとって、石炭や天然ガスを輸入する国です。しかし、供給が途絶えて、別の資源大国への需要が一気に高まったことで、エネルギー価格が急上昇しました。石油や石炭の価格が急騰し、電力会社が電気代を値上げするなど、多くの企業が対応に苦しめられたのです。

日本がエネルギー安全保障を重要視する理由は他にもあります。島国のため、周辺国とエネルギーの融通をすることが非常に困難です。ヨーロッパ諸国、ドイツやフランスなどは、決してエネルギー自給率は高くないものの、隣国同士でエネルギーの輸出入が可能です。EUの中で、発電量が多い国から少ない国が買い取れば、供給を賄うことができます。日本の場合、隣国からエネルギーを輸入するには、タンカーで運送する、海底ケーブルを敷設するといった莫大なコストがかかります。政府はあらゆる地政学的リスクに対処するため、調達先の多角化、アジア諸国との関係強化などを通じて、エネルギー安全保障に取り組む方針です。

まとめ

新エネルギーの安全性は、現時点でも改善すべき部分は多く残っています。なおかつ、安全面と同時に経済性を高めていかないと、さらなる普及に相当な時間を要してしまうでしょう。製造コストを低下させることはもちろん、電力市場の価格に競争力を持たせて、再生可能エネルギー発電促進賦課金を減少させる動きも必要です。日本のエネルギー自給率は先進国の中で最低水準です。脱炭素社会を作るうえで、電力における再生可能エネルギーの占める割合を増やしていくことが、エネルギー安全保障にも繋がります。