コラム

太陽光発電のみなし認定ってなに?

太陽光発電のみなし認定

太陽光発電の認定を受けたのに、運転開始せず放置されている発電所が数多く存在することをご存知でしょうか?そのような経緯に至った理由については、発電事業者によって異なりますが、原因の一つとしてFIT制度(固定価格買取制度)に問題があったと指摘されています。放置している事業者にしかるべき対応を取らせるため、太陽光発電業界は2017年、そして2022年に大きな変革期を迎えました。
この記事では、太陽光発電の運営に大きな影響を及ぼした「みなし認定」を中心に、詳しく解説していきます。

みなし認定とは

「みなし認定」とは、2017年度から適用された新認定を受けたとみなされることを意味します。従来は、運転開始までの手順として、認定取得後に系統接続の申請を行い、設備工事を着工するという流れでした。事業を検討する段階で設備認定を取得できたのですが、実際には発電所が稼働しないケースも多かったのです。
国民負担の増大(※再エネ発電賦課金の増加)や系統容量の逼迫など、様々な問題が指摘されたため、FIT法の改正が決定します。既に認定を取得した発電所は、2017年3月31日までに電力会社との系統接続契約が締結できないと認定を失効する、と定めたのです。また改正FIT法では、設備認定を受けるために、系統接続の締結を完了させた後、事業計画書を提出する義務を課しました。発電計画や保守管理に関して適切な内容でなければ、認定が受けられなくなりました。ただし、それによって従来の発電所すべてが失効となるのは厳しすぎると判断され、一定の猶予措置が設けられます。
2016年8月1日以降に電力会社との接続契約した事業については、2017年9月30日までに事業計画書を提出する義務が生じました。一方で、2016年7月31日以前に接続契約した事業は、運転開始期限を特に設定しませんでした。これが後の「3年ルール」制定に繋がります。

2012~2013年に設備認定を受けた案件のうち、34万件ほどが未稼働だといわれています。2012年に認定を受けると、売電価格は1kWあたり40円と非常に高額です。事前に認定だけ取得して、設備コストが低下した時に発電を開始すれば、大きな収益を得られると目論む事業者が続出したと考えられます。しかし改正FIT法によって、2017年4月1日に多数の事業者が認定を取り消され、認定取得段階での売電価格で取引する権利を失効しました。

みなし認定の3年ルールについて

「みなし認定」によって、2016年度以前の旧FIT法において認定を取得した事業も、一定の条件を前提に改正FIT法の認定を受けたとみなすルールが適用されました。ところが、認定を保持したまま運転開始しない未稼働の発電所が残り続けたため、認定の失効制度を設けるに至ります。
一般的に「3年ルール」と称されるこの制度は、10kW以上の事業用太陽光発電の場合、運転開始期限を3年に設定します。3年以内にきちんと運転開始できれば問題ありませんが、もし運転開始しなかった場合、期限から1年以内に運転を開始すれば失効とはなりません。ただし、期限超過分、FIT制度による売電期間が短縮される点は注意してください。
期限から1年以内に運転開始できなくても、「系統連系工事着工申込み」を1年以内に行えば、期限日から3年間の猶予が与えられます。つまり、認定を受けてから6年以内に、いかなる場合でも運転開始しなければ認定が失効となります。この場合も、期限超過分は売電期間は短縮されますから、言わずもがな認定から3年以内に運転開始することが望ましいです。
失効制度が施行されたのは2022年4月1日です。運転開始期限を迎えるのが4月1日以降か以前かによって、期限日の算出方法が若干異なります。しかし、根本的な原則は同じです。

●「3年ルール」に基づき、認定から3年以内に運転開始すれば問題なし
●期限日もしくは改正法施行日から1年以内に着工申込みすら無ければ、その時点で認定失効
●1年以内に着工申込みを行っても、期限日から3年以内に運転開始出来なければ認定失効

関連する特例太陽光についても解説

上述した「3年ルール」は、容量10kW以上の事業用太陽光発電を対象としたものです。10kW未満の住宅太陽光発電は、運転開始期限1年間を超過すれば失効する制度が設けられています。
とはいえ、2017年に改正FIT法へ移行する段階においては、やはり事業計画書を提出する義務が生じました。2017年4月1日から換算して9ヶ月、同12月31日までに提出することが求められたのですが、「特例太陽光」は提出義務が免除されました。
特例太陽光とは、2009年11月1日から2012年6月30日までの期間に導入された太陽光発電設備が、2012年7月1日以降、FIT制度に移行したものを指します。FIT制度開始以前は、「余剰電力買取制度」に基づいて売電が実施されていました。簡潔に言うと、FIT制度以前から運転開始していたのだから、改正FIT法に変わったからといって事業計画書を提出させなくても問題ないだろうと判断されたのです。なお、特例太陽光に該当するのは、設備IDが”F”で始まるものです。

まとめ

過去に公表された資料によると、2012年度のFIT認定案件のうち23%が未稼働、2013年度にいたっては49%が未稼働だったといいます。いかに多くの発電所が放置されたままだったかというのがお分かりいただけるでしょう。太陽光発電を普及させるために設けたFIT制度が、未稼働案件を大量に生んだというのはなんとも皮肉ですよね。現在では、事業計画書の提出義務や運転開始期限の設定により、放置される発電所はだいぶ減少してきています。
電力会社の系統接続容量には限度があるので、未稼働の発電所があると本来送電可能な容量より少ない電力しか運べないことになり、私たちにとっても大きなマイナスでしょう。事業者には、目先の利益ばかりに気を取られず、太陽光発電が脱炭素社会の進展を担うものだという意識をしっかり持って欲しいものです。