太陽光発電は日光がソーラーパネルに当たることで発電する仕組みなので、日差しが強い夏が一番発電量が増えると思っている方も少なくありません。もちろん、晴天の日が続く季節の方が発電しやすいですが、暑い時期は発電量が減ってしまう可能性が高いのです。あまりの猛暑だと私たちの身体がしんどく感じるのと同様に、太陽光発電システムも一定の気温を超えると発電効率が低下してしまいます。
日本国内で太陽光発電を行う以上、毎年必ず暑い季節はやってきます。絶対起こる状況に対して、何かしらの対策を打って、なるべく多くの発電量を確保したいですよね。
今回の記事では、どうして太陽光発電は夏に発電量が減少するのか、どのような対策法が挙げられるのか、について解説していきます。
太陽光発電において暑さ対策はほぼ必須
太陽光発電システムは、日射量に比例して発電量が増えるものですが、ソーラーパネルの表面温度には注意しなければなりません。表面温度の上昇によって、発電出力が低下する特性を持っているからです。一般的に普及しているシリコン型ソーラーパネルの場合、表面温度が1℃上昇すると-0.45%ほど発電量が減少します。この数値を「出力温度係数」と言い、表面温度25℃を基準とします。たとえば、表面温度が35℃まで上がると、大体-4.5%の発電ロスとなる計算です。
気をつける点は、ソーラーパネルの表面温度は外気の気温とは異なるところです。日本では日中の最高気温が35℃を超えると”猛暑日”と呼びますが、そういった日だとソーラーパネルは60~80℃ぐらいまで熱くなっています。計算上、表面温度が70℃以上になると発電ロスが20%を超えます。せっかく快晴で絶好の発電日だと思っていたのに、想定の20%も発電量が減ってしまったら、影響は大きいですよね。
どうしてシリコン型ソーラーパネルが暑さに弱いかというと、パネル内部は半導体で作られています。半導体は光を当てることで電気の流れを生む性質を持つ一方、高温によって性能が低下するといわれています。安価で発電効率も良いことから広く普及しているシリコン型ですが、気温の影響を受けやすい点はデメリットです。
そして、高温に弱いのはソーラーパネルだけではありません。パワーコンディショナーも半導体製品のため、熱により出力が低下します。製品によって差はあるものの、大体40℃を超えると出力が抑制されるようです。パワーコンディショナーは稼働することで自ら熱を発する機器です。熱が周辺に溜まると、40℃以上になるケースは十分あります。日陰で風通しの良い場所に設置する、排熱をスムーズにする、などの対策が必要です。
他にも、電力ケーブルは温度が上がるに伴って抵抗値が大きくなるとされ、ロスが発生します。ソーラーパネル、パワーコンディショナー、ケーブルと太陽光発電システムの機器はいずれも暑さに弱いのです。発電出力の低下を避けるためには、何かしら暑さ対策を講じなければならないとお分かりいただけたのではないでしょうか。
太陽光パネルに水をかけるのはアリ?
ソーラーパネルの表面温度が上昇することで、猛暑日だと20%以上の発電ロスが生じる可能性があると前項で説明しました。それなら、”打ち水”のごとく、ソーラーパネルに水を撒いて温度を下げればいいのでは?と考える方もいるはずです。
この点に関して、複数の専門家が実証実験を行ったところ、一定の効果は見込めるがあまり現実的でない、という結論に至りました。打ち水は、アスファルトやコンクリートにホースで水を撒きますが、ソーラーパネルの場合、ちょっと水をかけるぐらいだと表面温度はほとんど低下しません。パネル冷却用散水スプリンクラーを販売・設置する専門業者も存在し、そういった機器を用いると、パネルの上面に沿って水を撒くことができます。パネルの傾斜角度に合わせて、水を無駄にせず適切な散水が可能なので、ホースで水をかけるより効率は良いでしょう。猛暑日だとソーラーパネルの表面温度は80℃に達する日もあります。その際、散水によって50℃まで温度を低下させると、発電量が約15%増える見込みです。
ただし、住宅用太陽光発電なら散水スプリンクラーで一定の効果を期待できますが、広大な敷地に大量のソーラーパネルを設置するメガソーラーの場合、設置コストや散水コスト、メンテナンス費用が莫大にかかってしまいます。いくら発電ロスを減らせるからといって、コストが上回ってしまっては元も子もありません。また、雨水を冷却利用する研究も実施されていますが、「温度低下効果が確認できたものの、長期的には課題を残した」と実用化には程遠い状況です。やはり、水をかけるだけではコスト面含め、まだまだ根本的な解決策とは言いがたいようです。
ヒートシンクってどんなアイテム?
太陽光発電のみならず、パソコンやスマートフォン、HDDなど幅広い機器に放熱用途で搭載されているのが、「ヒートシンク」という部品です。スマートフォンを長時間使用し続けていると本体の温度が上がった、という経験は多くの方があるかと思います。高い熱を持つと性能が低下する恐れがあるので、適度に放熱および冷却をしなければなりません。
ヒートシンクは通常、熱伝導率が高く、使い勝手が良いアルミニウムが材料として使用されます。熱を空気中に発散することで自然冷却させる仕組みですから、ヒートシンク自体は電気を必要としません。放熱の流れとしては、機器にヒートシンクを取り付けると、熱くなった時に熱伝導によって熱が伝わります。その熱は空気へと発散され、機器の温度が下がるという仕組みです。そうなると、ヒートシンクはいかに効率よく空気に放熱できるかが重要になります。空気に触れる面積を増やすため、凹凸をつけた形状にするなど、表面積を広くする工夫がなされているのです。
また、自然放熱ですから、ファン冷却のように音を出すことが無いのも特徴です。パワーコンディショナーにファンを取り付けると、稼働が多くなった時にファンが故障して作動が停止するケースもあったのですが、ヒートシンクなら心配不要でしょう。今や、暑さ対策として、”ファンレス”のヒートシンクが主流となりつつあります。
まとめ
日本では、梅雨が終わる6月下旬から9月まで、2~3ヶ月間は暑い日が続きます。最近では、猛暑とよばれる日も増えており太陽光発電システムの冷却装置は必須といっても過言ではありません。
前述の通り、暑さによる発電ロスを甘く見てはならず、3ヶ月間も20~30%のロスが継続したら、売電収入が減少するだけでなく、初期費用回収期間も延びてしまいます。確かに設置機器を増やせば費用がかさむのは事実です。しかし、太陽光発電は10年20年と長期間続けてこそ価値があるものです。長きにわたりロスを積み重ねるなら、導入段階で万全の暑さ対策をするほうが賢明な判断と言えるのではないでしょうか。住宅用・産業用問わず、太陽光発電の発電効率を最大限維持するための方策を、導入時に検討してみることをおすすめします。