コラム

太陽光発電を語る上で外せない改正地球温暖化対策推進法(温対法)について解説

太陽光発電と改正地球温暖化対策推進法

2021年5月、「改正地球温暖化対策推進法」(改正温対法)が参院本会議で成立し、2022年4月に施行されました。
温対法は、一言でいえば地球温暖化対策を政府や地方自治体、事業者が一体となって取り組む方針を定めたものです。カーボンニュートラルを目指すうえで、この法律はとても重要なのですが、今回の法改正で一体何が変わったのでしょうか。”地球温暖化対策推進法”を、そもそも聞き慣れない方も、具体的な概要含め詳細に説明していくので、ぜひ覚えるようにしてください。

改正地球温暖化対策推進法の概要

地球温暖化対策推進法(以下:温対法)の歴史は、1997年にまで遡ります。第3回気候変動枠組条約締約国会議が開かれ、気候変動枠組条約に関する議定書、いわゆる京都議定書が採択されました。それを受けて翌年、地球温暖化対策推進法が成立したのです。地球温暖化対策の推進について定めた日本初の法制度であり、それぞれの主体の役割や責任を明記しました。
例えば、事業者の責務としては「自ら排出する温室効果ガスの排出抑制」「製品改良や国際協力など他者の取り組みへの寄与」「国や自治体の施策への協力」などが定められています。温対法は、これまで6回改正され、2021年5月に7回目の改正案が成立します。
2020年に当時の菅義偉首相が、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言したのは、記憶に新しいところです。カーボンニュートラルに関しては、2030年までに温室効果ガスの排出量を2013年度比で46%削減するという、非常にハードルの高い目標を提示しました。こうした目標を達成するために、脱炭素社会の実現を目指す方針を法制化しています。

温室効果ガスは、「二酸化炭素」「メタン」「一酸化二窒素」「フッ化硫黄」など、主に6種類が挙げられます。これらの排出量と、森林吸収や排出量取引される分をイコールにすることで、温室効果ガスを”実質ゼロ”にするのがカーボンニュートラルの定義です。完全に排出量をゼロにするのは非現実的との前提に立ち、現状よりも極力増やさないことを推進する方針といえます。

温対法改正(2022)のポイントは?

それでは、7回目の改正となった2022年施行の改正温対法について解説します。今回は、主に3つの改正点があるので、一つずつ見ていきましょう。

①基本理念の新設
パリ協定に定める目標及び2050年カーボンニュートラル宣言を基本理念として位置付けたうえで、「我が国における2050年までの脱炭素社会の実現を旨として、国民・国・地方公共団体・事業者・民間の団体等の密接な連携の下に行われなければならないものとする」と明文化しました。
重要なのは、主体者として”国民”が先頭に記されている点です。私たち一人一人がカーボンニュートラルに関わっており、取り組みやイノベーションの促進が求められているのです。

②地域の脱炭素化を促進する制度の創設
従来は、地方公共団体に再生エネルギーの利用促進などを求める実行計画制度を定めていましたが、施策の実施に関する目標を追加することを求めました。実行計画だけだと具体的な目標が定められておらず、脱炭素化が中々進展しない地域もありました。
2022年時点で、2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロを表明した自治体は、400を超えます。しかしながら、再生可能エネルギー事業をめぐってトラブルに発展するケースもあり、地域における合意形成が課題となっていたのです。そこで改正温対法は、市町村から認定を受けた地域脱炭素化促進事業計画に記載された事業について、関係法令の手続ワンストップ化などの特例を受けられると定めました。これにより、地域における円滑な合意形成を図り、自治体が積極的に再生可能エネルギーを活用、すなわち脱炭素化の取り組みを推進します。

③企業の排出量情報のオープンデータ化
温室効果ガスを多量に排出する企業には、これまで紙媒体などによる報告が義務化されていました。ところが、企業単位によるデータにとどまり、報告から公表まで約2年を要するなど、不十分な面も多かったのです。改正温対法では、企業の温室効果ガス排出量に係る算定報告公表制度について、電子システムによる報告を原則化します。開示請求手続きが必要だった事業所単位での排出量情報も、請求の手続きなしで公表することを定めました。
多量のエネルギーを使用する「特定事業所排出者」は、毎年度7月末日までに年間排出量データを報告する義務を課し、報告を怠るもしくは虚偽の報告をした場合、20万円以下の過料の罰則が科せられます。これは、企業の排出量情報を見える化すると共に、我が国企業の一層の取り組みを促進するものです。

太陽光発電に対する政府方針は?

全国の各自治体がカーボンニュートラルの目標に向けて取り組みを推進するうえで、再生可能エネルギーの普及促進は欠かせません。合意形成を円滑に進めるためにも、地域経済の活性化や、災害に強い地域づくりなど、再生可能エネルギー導入によって地域経済へのメリットを明確にすることが大切です。再生可能エネルギーの一つである太陽光発電に関しては、次のように言及しています。
「公共施設や公共遊休地、住宅・建築物の屋根、営農が見込まれない荒廃農地、廃棄物最終処分場跡地、ため池、その他低未利用地を含め、区域内で再生可能エネルギーの導入を促進し得る場所について幅広く検討し、積極的に位置付けるべきである。その上で、例えば、市町村が促進区域内で事業者を一括で募集するような施策も有効である」
改正温対法においても、地域の脱炭素化のためには地域資源である再生可能エネルギーの活用が必要であると明記していますが、一方で解決すべき課題も存在します。
「景観の悪化や野生生物への悪影響、生態系の破壊、騒音の発生、温泉資源への影響等の環境トラブルや土砂災害等の災害、レーダーへの影響といった様々な懸念や問題が生じていることも踏まえ、地域の自然的社会的条件に応じた環境の保全や、本来想定されている土地利用の在り方、国家安全保障その他の公益への配慮が必要である」
課題解決に向け、国が環境情報を提供したり、都道府県が環境配慮の方針を示すことが大切だとしています。そして、地域の環境保全のための取り組み、地域の経済及び社会の持続的発展に資する取り組みを定めるよう努める方針です。

まとめ

2050年にカーボンニュートラル社会を実現するには、国だけでなく各自治体や事業者、そして全国民が一丸となって取り組んでいかなければなりません。たとえば長野県は、「長野県ゼロカーボン戦略」と銘打って、再生可能エネルギーの導入量を2030年までに2010年度の約1.8倍、2050年までに約2.9倍にすると公表しました。自治体が目標を掲げ、それに向かって地域住民や事業者が手を取り合いながら、脱炭素化を推進する好事例といえます。カーボンニュートラルの主体者は、まず”国民”です。社会との関わり合いの中で自分に何ができるのか、日々考えていきたいものです。