コラム

年々注目が集まる新エネルギー。そもそも新エネルギーとはどんなもの?

新エネルギーとは

これまで世界各国でエネルギー資源として消費されてきた化石燃料から脱炭素社会に移行すべく、新エネルギーが注目を集めています。
ところで、新エネルギーと聞いて、どんなものを想像しますか?最近よく目にする太陽光パネル、あるいはバイオマス発電といった言葉を耳にしたことがある方は多いはずです。
実は、新エネルギーという一括りの中には、様々な種類のエネルギーが存在します。再生可能エネルギーと同意語だと思っているかもしれませんが、この2つにも違いがあるのです。
この記事では、私たちの将来の生活を支える根幹になるであろう新エネルギーとは何か、基本的な内容を中心にまとめましたので、ぜひ一読ください。

新エネルギーとは?簡単に解説

新エネルギーの定義については、時代によって何度か見直されていますが、平成9年施行の新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法において、具体的な範囲が明文化されました。
同法によれば、非化石エネルギーのうち、技術的に実用段階に達しつつあるものの、経済的な制約から普及が十分でないものであって、非化石エネルギーの導入を図るため特に必要なものと定められています。主に、
①発電分野
②熱利用分野
③燃料分野
という3つの区分に分けられ、全部あわせると10種類です。下記に、区分ごとのエネルギーの名称を列挙しています。

①発電分野
「中小水力発電(出力1,000kW以下)」「地熱発電(バイナリー方式)」「太陽光発電」「風力発電」「バイオマス発電」

②熱利用分野
「太陽熱利用」「温度差熱利用」「雪氷熱利用」「雪氷熱利用」

③燃料分野
「バイオマス燃料製造」

新エネルギーは、石油など化石資源由来の代替エネルギーとして普及が期待されており、輸入に依存しない国産エネルギーです。いずれも二酸化炭素を排出しないことから、地球温暖化防止のために必要不可欠なものです。

新エネルギーと再生可能エネルギーに違いはあるの?

この記事を読んでいる方のほとんどは、再生可能エネルギーという言葉はご存知かと思います。新エネルギーと再生可能エネルギーって同じなの?何か違うの?と疑問に思ったかもしれません。
実は2つの間には、明白な違いが存在します。では、一般的にどのような区別がなされているのでしょうか。

簡潔に言えば、新エネルギーは再生可能エネルギーの定義の中に含まれるものです。再生可能エネルギーは、資源が枯渇する恐れがある化石燃料ではなく、自然界に存在する太陽光や風力を活用して作るエネルギーを指します。水も風も太陽も、いわば無限の資源です。それらのエネルギーは発電時に二酸化炭素を排出しないことが特徴です。
ただし、大規模(出力1,000kW 以上)水力発電、およびフラッシュ方式の地熱発電は、新エネルギーに含みません。なぜかというと、すでに経済性が成立している発電技術だからです。ダムを利用した大規模な水力発電施設は全国で開発されており、新エネルギーの定義にある「経済性の面での制約から普及が十分でない」に該当しないのです。同様にフラッシュ方式の地熱発電も、既存の地熱発電所で採用されており、技術的にも確立されています。

もう一つ、新エネルギーから除外されるものから、“海洋発電エネルギー”に関して言及します。これは、波力や潮汐、潮流や海水温度差を電気エネルギーに変換して利用する発電方法です。海水の上下動や流れをエネルギーとするもので、再生可能エネルギーとして扱われています。
しかしながら、2024年時点では技術的に研究段階です。実用化にはまだ時間がかかるため、新エネルギーには含まれないものの、今後の活用が期待される分野ではあります。

新エネルギーのメリット、デメリットについて解説

地球に優しいクリーンな新エネルギーですが、メリットだけではなくデメリットもいくつか指摘されています。およそ全ての新エネルギーに共通するメリットは、これまでも触れてきましたが、以下の通りです。

●発電時に二酸化炭素を排出しない
●資源枯渇の心配が不要

新エネルギーは、自然由来のエネルギーですから、太陽や水が存在する限り、繰り返し作り続けることが可能です。製造過程において、二酸化炭素を排出せず、地球環境を悪化させることなく、私たちの生活に不可欠な電力を供給してくれます。次に、デメリットとして挙げられる点は、主に以下の通りです。

●エネルギー密度が低いため大きな設備が必要
●天候や季節に左右されやすい
●発電設備のコストが高い

エネルギー密度とは、単位面積あたりでどれくらい発電できるかを表わす数値です。火力発電や原子力発電と同じ電力量を供給するためには、広大な土地を使用しなければなりません。
たとえば、火力発電所と太陽光発電所を同じ面積で比較する場合、発電電力量には1,000倍以上の差が生じます。出力100万kW以上の大型原子力発電所1基分と同水準の電力を太陽光発電で作り出すには、山手線1周分以上という莫大な土地が必要です。
また、太陽光発電は日中しか発電できず、悪天候の日や夜間は発電できません。水力発電は、安定的に一定の雨量がある地域や、ダムなど落差のある場所でないと難しく、風力発電も風の強い場所という条件が課せられます。日光が当たる時間はだいたい算出可能ですが、風はほぼ自然頼みです。いつ、どのくらい強い風が吹くかは予測不可能です。

新エネルギー発電設備の出力1kWあたり初期費用は、太陽光発電が1kWあたり24万円程度と一般人でも導入可能な水準です。他は、地熱発電が1kWあたり170 万円程度、中小水力発電が1kWあたり225 万円程度、バイオマス発電でも1kWあたり42万円程度と、どうしてもコストが高くついてしまいます。全国的に普及させるためには、費用を抑えるべく技術的な進歩が求められ、多くの企業が研究開発を日々行っています。

まとめ

新エネルギーは、実用化する段階に来ているものの、経済的な制約によって普及に至っていない、非化石資源から作り出すエネルギーです。従来の火力発電や原子力発電と比べると、エネルギー密度や安定性、コストといった課題は残っています。とはいえ、日本がカーボンニュートラル社会を実現するには、石油・石炭への依存から脱却することが絶対条件です。
デメリットばかりに目が行ってしまうかもしれませんが、発電方法にはそれぞれ長所と短所があります。バイオマス発電は自然環境に影響を受けませんし、水力発電はエネルギー変換効率が約80%と非常に高いです。次世代太陽光発電といわれるペロブスカイト太陽電池が浸透すれば、あらゆる施設に発電設備を導入することが可能になります。
一つの選択肢に絞って推進するのではなく、あらゆる発電方法を組み合わせる“エネルギーミックス”によって、新エネルギーが広く社会に普及することを目指していきましょう。