コラム

ソーラーシェアリングとは?仕組みやメリット、デメリットについて解説

ソーラーシェアリングのメリット、デメリット

農業の世界では、従来よりも効率の良い、自然エネルギーによる発電を目指した「ソーラーシェアリング」の試みが進められています。本記事では、そんなソーラーシェアリングをめぐる現状について解説していきます。

そもそもソーラーシェアリングとは?その仕組みを簡単に説明

ソーラーシェアリングとは、農地を利用して太陽光発電装置を設置する試みを指します。農業において、作物を育てるためには太陽光の有効活用が非常に重要です。農地に太陽光発電設備を設置し、太陽光の恵みを農業(営農)と発電で共有する(シェアする)ことから、この名称が付けられています。
具体的には、作物を育てている農地に、支柱などを設置したうえで太陽光パネルを設置します。つまり、作物を育てている農地の空間の上の部分に、太陽光発電装置を設置するわけです。
農地は広く、平坦な地形をしていることが多いため、太陽光パネルを設置する環境として適しています。しかも、農業ではあまり上部の空間を利用することはないので、その部分を太陽光発電に有効利用できます。いわば、これまで1階建てだった施設を2階建てにするようなものでしょう。そのため、ソーラーシェアリングといっても特に特殊な設備や装置が必要なわけではなく、基本的な太陽光発電装置と一般的な農地をうまく組み合わせることで、導入・活用が可能なのです。

太陽光発電のメリット・デメリット

では、ソーラーシェアリングでどのようなメリットが期待できるのでしょうか。あるいは、どんなデメリットに注意する必要があるのでしょうか。先ほど農地の空間をより立体的に有効利用できる点をご説明しましたが、それによって二重収益が期待できます。農地でメインとなる農業を営みつつ、太陽光発電設備で発電した電力を売ることで、二重の収益を得ることができるわけです。使用する土地の面積はこれまでと変わらないままでも、より収益を得やすい土地環境にできます。
これは、太陽光発電のデメリットを解消する点においても非常に重要です。太陽光発電は、当然のことながら、太陽光が降り注いでいる状況でなければ十分な発電は見込めません。そのため、太陽光発電設備を導入して、天候が不安定な時期には収益が期待できない恐れが出てきます。しかし、その土地で営農を行っていれば、土地を無駄遣いすることなく、確実に収益を挙げることができます。逆に、農閑期には太陽光発電の売電で収益を挙げることができますから、1年を通して農地を有効利用できることにもなります。

それに、営農には少なからぬ電力が必要です。例えば、作物の収穫時期や開花時期を調節するために、照明を当て続けるなどの作業で電力が必要になります。太陽光発電で自家発電ができる状況なら、そうした電力のコストを自前で賄うことができます。収益を得る手段としてだけでなく、営農のコストを削減する手段としても非常に大きなメリットが期待できるわけです。

税金の観点からも、固定資産税を節約できるメリットが見込めます。農地は固定資産税の優遇が受けられ、宅地などに比べると、税金の負担が少なくなっています。しかし、ソーラーシェアリングの形ではなく、太陽光発電設備だけを導入する場合には、その土地の用途を農地から宅地へと転用する必要があり、固定資産税の負担も大きくなってしまうのです。ソーラーシェアリングならば、その土地は営農をメインに使用する形になりますから、用途を農地のまま、太陽光発電設備を導入することができます。

一方、デメリットとしては、長期運用を前提とした計画が求められる点です。営農も長期的な計画のもとで行っていくものですが、太陽光発電においても長期的な視点が求められます。初期投資や設備の維持・管理の負担を上記のメリットでカバーするまでには、ある程度の年数がかかります。
例えば、ソーラーシェアリングを導入したとして、その先10年、20年とこの環境で営農を続けていくことができるのか、営農において扱う作物を変更する、あるいは農地を縮小するといった変更が必要になったときにソーリーシェアリングを維持できるのか、という問題も出てくるわけです。後述するように、ソーリーシェアリングに適した作物とそうでない作物があるため、ソーラーシェアリングの環境を導入した場合、手掛ける作物の選択肢が狭くなってしまう可能性もあります。
また、メリットのところで「農地を転用する必要がなく、固定資産税の優遇を受けられる」と書きましたが、もし営農がうまくいかなくなってしまった場合、農地から宅地への転用が必要になる場合も出てきます。以下の状況の場合、「営農が行われていない」と判断されてしまう可能性があります。

・その農地における収穫量が同じ地域の収穫量に大して2割以上減少しているケース
・営農を行う上で、必須となる農業機械などを効率よく活用することが困難な状況になっているとみなされるケース

ソーラーシェアリング環境を導入した後、営農が先細り状態になってしまい、もっぱら太陽光発電のためにその土地を利用する環境になった場合には、農地として認められず、固定資産税の負担が増えてしまう可能性も出てくるわけです。

もうひとつ、太陽光発電設備の導入に関しては初期投資が必要になりますが、その資金調達の目的では金融機関からの融資を受けにくい面もあります。現在ではまだソーラーシェアリングが安定した収入を得られる手段として見られず、金融機関がリスクが高いと判断して、融資を断ってしまうケースも考えられるのです。

ソーラーシェアリングに適した作物は?

ソーラーシェアリングのポイントは、農地の上の部分に太陽光発電のパネルを設置することです。当然のことながら、下の農地に日差しが注がれるのを妨げる環境になります。
実際にはパネル同士に隙間を設け、そこから日差しが下に差し込む形がとられます。パネルの設置によってどれぐらい日差しが妨げられるのかは、「遮光率」という数字で算出することができます。一般的なソーラーシェアリングでは、この遮光率が30〜40%の範囲内で設置されていますから、農地の上部空間にパネルを設置するといっても日差しを遮ってしまうわけではありません。

では、ソーラーシェアリングの環境下での栽培に向いている作物には何があるのでしょうか?基本として、日差しを好む陽生植物は向いていません。このタイプに該当するダイコン、キャベツ、イネ、とうもろこし、かぼちゃなどは適していないことになります。それに対して、栽培に日差しが必要なものの、陽性植物ほど必要としない半陰性植物、日差しがなくても栽培できる陰生植物は、ソーラーシェアリングに非常に適しています。半陰性植物の代表格としてはレタス、じゃがいも、サトイモ、ネギ、ホウレンソウなど、陰生植物はラッキョウ、シイタケ、シソ、ミョウガ、ニラなどがあります。

まとめ

実際のところ、ソーラーシェアリングの試みはまだまだはじまったばかりの段階です。コストや収益に関しても、これからどれだけうまく環境を整えていけるかどうか、試行錯誤の状況と言えます。ややリスクも持ち合わせていますが、農地の有効利用とエネルギー問題の両面で、将来性豊かな選択肢であることも事実です。今後の農業においてどれだけこの試みが普及していくのか、注目していきたいところです。