コラム

電気自動車の耐用年数は実際どれくらい?ガソリン車とも比較してみた

環境問題とも深く関連している、EV(電気自動車)の分野にも日々注目が集まっていますが、一方で走行距離や充電など、さまざまな問題点も指摘されています。そんなEVの問題点のひとつが耐用年数です。環境に優しいのはいいけれども、いったいどれぐらい乗り続けることができるのでしょうか。ただでさえ高価なイメージが強いだけに、この点がEV普及における重要なポイントにもなりそうです。
本記事では、EVの耐用年数やどれぐらい乗り続けることができるかについて解説していきます。

電気自動車のバッテリー寿命は何年くらい?

ガソリン車の場合、車の耐用年数と言えば、エンジンをはじめとした部品やパーツの寿命が大きく影響します。EVの場合は、まず充電バッテリーがどれぐらい持つのかが重要なポイントになってきます。いくらモーターやサスペンションなどに問題がない状態でも、バッテリーが劣化してしまっては正常な運転ができなくなってしまうのです。
この電気自動車ならではの問題については、携帯電話やスマートフォンを考えればわかりやすいでしょう。スマホ本体の動作は何の問題もないけれども、バッテリーが劣化して使えなくなってしまうことがしばしば起こります。このバッテリーが使えなくなった状態を「スマホの寿命」と言ってもよいでしょう。スマホ本体が劣化によって使えなくなるまで使い続ける、というケースはほとんどないはずです。

電気自動車の場合も同様で、電気を動力にして走る以上、充電バッテリーが劣化して使用に耐えられなくなってしまうと、もはや走らせることができなくなります。劣化したバッテリーでは、フル充電されている状態だと思っていたら急激に充電量が減少する、といったケースがしばしば起こり得ます。自動車の運転中にそのようなことが起こったら、予期せぬ場所で動力を失って立ち往生ということになりかねません。こうした理由から、一般的に電気自動車の耐用年数はEVバッテリーがどれだけ持つかで決まると言われています。

では、電気自動車のバッテリーはどれぐらい持つのでしょうか?この点に関しては「法定耐用年数」が設定されています。つまり、法律で「最低限これぐらいの年数は使えるバッテリーを搭載するように」と定められているのです。この法定耐用年数は8年ほどです。市販されているEVは、最低でも8年間はバッテリーの問題を気にすることなく運転できるということになります。
なお、2021年のデータですが、日本自動車工業会の調査によると、車の平均保有期間は約7.1年です。ガソリン車やハイブリッド車、電気自動車をすべて含めた状態で車のオーナーは、7年ほどで新しい車に買い替えていることになります。この点から考えると、電気自動車のバッテリーにおける8年という法定耐用年数は理にかなっていると言えるでしょう。
ただし、ガソリン車の場合は10年以上乗り続ける人も珍しくありませんし、愛着のある車ともなると、できるだけ長く乗り続けたいと思うものです。こうした「長く大事に乗り続ける」という視点からすると、8年は短いと感じる面もあるでしょう。評価がちょっと難しいところです。

電気自動車のバッテリー問題

この電気自動車のバッテリーに関しては、注意したい点があります。自動車にせよ、スマホのバッテリーにせよ、耐用年数は利用状況によって大きく異なってきます。日頃頻繁に利用する機会が多ければ多いほど、劣化も早く進むというわけです。つまり、電気を充電して自動車を運転する機会が多ければ多いほど劣化も進んでいきます。
多くのメーカーでは、電気自動車のバッテリーに関して、耐用年数に加えて距離も明記しています。もっとも一般的なのは「8年または16万km」です。つまり、8年経たなくても、走行距離が16万kmを超過した場合には劣化が進んでいく可能性があることを意味しています。

一般的に、自動車の走行距離は10万kmが寿命を決める目安と言われています。10万kmを超えると、中古市場での価値が大幅に下がってしまいます。これだけ走行すれば、充分にその車を使いこなすことができたと判断できるわけです。この数字から考えると、16万kmというEVバッテリーの設定は充分と評価できるかもしれません。
こうして見てみても、電気自動車の耐用年数はガソリン車と比較しても遜色なく、よほど頻繁に乗って多くの距離を走る人でないかぎりは「EVはすぐに劣化する」と感じることはないと言えるでしょう。

もうひとつだけ、電気自動車のバッテリー問題を挙げておきましょう。電気自動車のバッテリーの寿命とは「新車として納品されたときの満充電容量の70%を切った場合」とされています。つまり、「8年もしくは16万km」の範囲内であっても、新車で購入したときとまったく同じ充電量を維持できるわけではないのです。電気自動車に乗り続けていると、少しずつ充電できる電力量が減っていきます。その点も踏まえたうえで、充電のタイミングを見計らう必要が出てきます。

なお、バッテリーの寿命(劣化の進行)は使用状況によっても変わってきます。急速充電を使いすぎないこと、バッテリーの残量をできるだけ「30〜80%」の範囲内にとどめ、残量ギリギリになる前に充電すること、できるだけ高温の状況に晒さない(日当たりのいい場所には置かない)ことなどが、バッテリーの耐用年数を長持ちさせるポイントとして挙げられます。

電気自動車のバッテリー交換は可能?その値段は?

電気自動車のバッテリーの寿命が来てしまったらどうなるのでしょうか?車の他のパーツが何の問題もないのなら、そのまま乗り続けたいと思うことも出てくるでしょう。そんなときに、バッテリーだけを交換することができるのでしょうか?
結論から言えば、電気自動車のバッテリー交換は可能です。ただし、それがバッテリーの保証期間内であるか、過ぎてしまった後かどうかで変わってきます。先述した「8年もしくは16万km」以内で、バッテリーに異常が生じて交換する必要が出てきた場合には、保証の対象としてメーカーで交換してもらうこともできるのです。
なお、この電気自動車のバッテリー保証は、基本的に車の保証期間よりも長く設定されています。この保証期間内でのバッテリー交換は、先述した「新車購入時の満充電容量の70%」を切ったときに行うことが可能です。

問題なのは、メーカーが設定している保証期間を過ぎてしまった後のバッテリー交換です。原則としてすべて自費で行うことになり、これがかなり値段になってしまいます。具体的な値段に関してはバッテリーの種類や容量によって異なりますが、相場としては100万円以上、高いものでは300万円くらいになるとも言われています。したがって、保証期間外でのバッテリー交換は現実的とは言えず、高いお金を払って交換するくらいなら新しい車を買ったほうがいい、ということになります。

まとめ

電気自動車の耐用年数はバッテリーの寿命にかかっており、その寿命は一般的な自動車の買い替え年数と比較しても充分長く設定されています。日常の運転でバッテリーの劣化を気にする必要はほとんどないといってもよいでしょう。
ただし、保証期間を過ぎてバッテリー交換をしようとすると高価になってしまうため、ガソリン車のように10〜15年と愛着を持って長く乗り続けるのは難しく、バッテリーの劣化の状況を確認しながら適切なタイミングで買い替えることが必要になってきます。また、日頃からバッテリーの劣化を防ぐための工夫も心がけたいところです。