太陽光発電に使用する半導体

太陽光発電にも欠かせない半導体について解説

太陽光発電システムを製造する上で欠かせない部品が、半導体です。携帯電話やパソコン、自動車や家電製品に至るまで、ありとあらゆる物に多数使用されており、半導体無くして私たちの生活は成り立ちません。
現代社会において必要不可欠な半導体は、ソーラーパネルやパワーコンディショナーなどにも使われています。半導体そのものを実際に手にとって見る機会は少ないですが、実は太陽光発電が電気を生み出すのも半導体のおかげなのです。
そこで今回の記事では、太陽光発電で半導体がどのような形で役立っているのか。昨今の半導体不足の問題も交えて、説明していきます。

そもそも半導体とは

「半導体」とは、簡単に言うと、条件によって電気を通したり通さなかったりする物質です。銅など電気を良く通すものを「導体」とよび、ゴムなど電気をほとんど通さないものを「絶縁体」といいますが、その中間が「半導体」となります。大きな特徴として、光や電圧などによって導電性を変化させられることが挙げられます。つまり、使い方次第で導体にも絶縁体にもなるため、あらゆる製品に用いられ、人類の歴史を変えた発明とまで言われるのです。ちなみに、多数の半導体を配線接続したものが集積回路であり、これも現代では半導体とよばれることが多いです。この中間の性質を持つ代表的な物質がシリコンです。アメリカにある”シリコンバレー”も、半導体材料のシリコンが由来となりました。

太陽光発電の仕組みと半導体の関係性を解説

一般的なシリコン製ソーラーパネルは、薄いn型半導体とp型半導体を貼り合わせた構造をしています。2つの異なる半導体を接合させることがポイントとなります。n型とp型の何が違うかというと、n型半導体には電子(伝導電子)が多く、p型半導体は電子が少ない性質(正孔)を持っています。これらの半導体同士が接合すると、n型半導体からp型半導体に電子が移って、n型はプラス、p型はマイナスを帯電するようになります。
接合部分には内部電界とよばれる状態が生じて、電子と正孔が結びついた状態で動けなくなっています。そこに光が当たると、光のエネルギーによって新たに伝導電子と正孔が発生し、電界から叩き出されるような現象が起きるのです。
伝導電子はn型半導体に、正孔はp型半導体へ移動するのですが、移動により発生する起電力を光起電力とよびます。この光起電力効果は、光が当たっている間ずっと持続し、次々に電子が押し出されます。電子を外部へ押し出す力(エネルギー)を利用して、外部の電気回路に電力が供給される仕組みです。
少しややこしいのですが、電力の流れが生まれる際、n型半導体側がマイナス極、p型半導体側がプラス極となります。噛み砕いた言い方をすれば、電子が多い状態だとマイナス、電子が少ない状態だとプラスに帯電するので、正孔が移動するp型半導体はプラスなのです。
太陽光発電をこれから始めようと考えている方も、難しい専門用語を覚える必要はありません。光エネルギーが半導体に当たると、電子が発生し移動することで電気が流れる、程度に覚えておけば大丈夫です。

世界的な半導体不足で太陽光発電の普及にも影響が?

ここ1~2年、ニュース番組などで頻りに「半導体不足」という話題を聞いた方も多いのではないでしょうか。半導体不足は世界で問題となっており、太陽光発電のみならず多くの業界に影響を及ぼしているのです。先程も言及したように、現代のデジタル社会では半導体は不可欠なものです。そして新型コロナウイルスの蔓延が、半導体業界にとって大きな転機となりました。
パンデミック前から、半導体を製造する企業はフル稼働しており、旺盛な需要に応えるため供給し続けていました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、世界各国の工場が閉鎖せざるをえない状況となったのです。
一方で、リモートの浸透により、家電製品特にパソコンなどの需要が急増しました。生活スタイルが一変したことで、半導体の需要も大幅に上昇することになります。ただでさえフル稼働していた状況なのに、パンデミックの影響で稼働すらままならない反面、需要が急増するので生産が追いつかなくなります。しかも多くの工場は、最先端の半導体を生産するために生産ラインを組んでおり、自動車や白物製品などに使われるアナログ半導体の急激な需要増には対応できなかったのです。
半導体不足の影響を最も大きく受けるのは自動車業界だと言われていますが、太陽光発電に関しても導入時期が大幅に遅れるなど、影響は少なからずあります。多くの家電製品を手掛けているパナソニックは、太陽光発電機器の生産が遅れていることを公表しています。他にも、京セラ、シャープ、長州産業、カナディアン・ソーラーなども、やはり半導体不足によってソーラーパネルなどの供給が追いつかないようです。
それ以外にも、自動車に搭載されている半導体チップのトップシェアを占めるルネサスエレクトロニクスの国内工場で火災が発生したり、アメリカのテキサス州で半導体工場が大寒波により操業停止になるなど、災害による不運も重なり、自動車業界の半導体不足は深刻です。一般的に、半導体を供給する優先順位として、自動車向けが優先されるケースが多いですから、太陽光発電業界への影響はもうしばらく続くかもしれません。

まとめ

太陽光発電の仕組みとして、半導体は絶対に必要なものだとお分かりいただけたかと思います。半導体という括りの中でも、シリコンなど一つの元素で作られる単元素半導体と、化合物半導体に分かれるなど、細かく見ると非常に複雑で、とっつきにくいと感じてしまうかもしれません。いずれにしても半導体の需要は、EV(電気自動車)やデジタル社会が発展するに伴い、これからも増えていくと推測されます。2022年時点で、半導体不足の抜本的対策はなされておらず、大手企業の業績にも影を落としています。
各国の半導体関連企業は大規模な設備投資を実施して生産体制の強化を図っています。増産体制が整えば、徐々に半導体不足も解消に向かうとの期待は持っていいでしょう。私たちの生活は半導体を搭載した製品で溢れており、多くの業界に欠かせないものだからこそ、半導体の動向に世界中の企業が関心を寄せているのです。


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