ビットコインを筆頭とする暗号資産、いわゆる仮想通貨が世界的に注目されているのは、皆さんご存知かと思います。暗号資産を手に入れるためには、「仮想通貨取引所」で売買するか、「マイニング」というコンピューターでの作業が必要になります。マイニングに成功すれば、対価を支払うことなく自分の手柄となるため、個人・企業問わず多くの方々が日夜マイニングを行っているのですが、大量の電気エネルギーを消費することが問題視されています。高性能コンピューターを24時間フル稼働させるわけですから、電力消費量も当然増えますよね。
具体的にどれぐらいの量かというと、年間約100TWh以上です。これは日本の年間電力消費量の10%以上に相当する、とてつもない数値です。仮想通貨をマイニングすれば儲かるからといって、日々大量のエネルギーを消費しては、批判の目を向けられても致し方ないでしょう。
そこで、マイニングに使用するエネルギーを再生可能エネルギーで賄おうとする動きが昨今活発になっています。特に太陽光発電の余剰電力に注目が集まっているため、マイニングと太陽光発電というテーマで今回は詳しく解説していきます。
マイニングとは?太陽光発電との関連についても解説
一般的に暗号資産とは、各国の中央銀行が発行していないデジタル資産の総称です。仮想通貨取引所で日本円や米ドルなどと交換可能ですし、一部の店舗では支払いに用いることもできます。マイニングとは、暗号資産を手に入れるための作業を指します。暗号資産の取引においては、ブロックチェーン技術による取引台帳への記帳が毎回行われますが、この作業はコンピューターで膨大な計算をしなければなりません。計算に成功して記帳が終了した後、仮想通貨を獲得できるのです。
ただし、仮想通貨が手に入るのは、計算に携わった人全員ではなく、一番早く計算を完了させた人だけです。早い者勝ちとなるので、より多くのマイニングを成功させるため、計算処理速度が優れた高性能コンピューターを使用します。
ところで、マイニングに取り組んでいる方々は、作業に用いる電気エネルギーを、どのように賄っているのでしょうか。実は、太陽光発電によって生み出され、余剰電力として余ってしまったものを積極的に使用しているのです。太陽光発電は、日光が当たる昼間に発電し、夜間は発電しません。全国各地に太陽光発電システムが普及したことで、昼間の電力供給量が大幅に増加しています。すると、晴天の日など発電量が増える場合、一部の電力が余ってしまい、無駄になるケースも珍しくありません。電力会社の送電系統に接続できる容量には限度があり、パワーコンディショナーには系統連系に契約容量以上の電力を送電しない「ピークカット」といわれる機能も備わっています。上限を超えた電力は、いわば行き場がなく捨てられてしまうのです。一部の電力会社は、太陽光発電所からの供給を強制的に遮断する「出力制御」を実施しています。これも、供給量が多すぎるゆえに捨てられる電力が存在することも意味します。
電力が無駄になってしまうなら、その電力を暗号資産のマイニングに用いるのは、資源の有効活用ではないでしょうか。
ベランダマイニングとは?
個人でマイニングを始める際、太陽光発電の電力を活用したいと思っても、自宅屋根に住宅用太陽光発電を設置すると初期費用が100万円以上かかってしまいます。そんな多額の費用はかけられない、という方もきっといますよね。
複数のコンピューターを同時に稼働させる事業者のような大規模設備ではなく、小規模で行いたい時は、ベランダマイニングが一つの選択肢になるでしょう。家電量販店などで販売されている小型ソーラーを購入して、マイニングマシンと接続するのです。電気機器に詳しい方ですと、小型ソーラーすら自作するケースもあります。ある程度の知識は必要ですが、費用は安く抑えられます。
ベランダなど日光が当たる場所に小型ソーラーを設置して、生み出す電気エネルギーをマイニングにあてれば、電気代を削減できるというわけです。しかし、作業中に感電事故などのリスクもありますから、DIYに慣れない方にはあまりお勧めできません。
マイニングのリスクも併せて解説
マイニングの難しいところは、安定した収益を見込みづらい点です。前述した通り、仮想通貨を獲得できるのは、最も早く計算処理を完了した人だけです。いくら他の人があと一歩のところまで作業を進捗させていたとしても、報酬は貰えません。マイニングマシンなど必要設備を一通り揃えるのも当然費用がかかります。高性能コンピューターを所有する事業者などがどうしても有利になりがちなので、仮想通貨を獲得できぬまま、電気代や設備費だけ積み重なり赤字となるリスクは頭に入れておくべきといえます。
もう一点、暗号資産により利益は雑所得にあたり、確定申告を行う義務が生じます。仮想通貨の価値は常に変動するため、どの時点を基準にするかが問題になります。これは、暗号資産を受け取った時点の評価額を基準にするのが一般的です。
マイニングによって報酬を獲得した際には、その時点のレートをメモに残しておくと後々便利です。ただし、仮想通貨を円などの法定通貨に変換するにあたっては、現時点の交換レートがいくらなのか、しっかり調べてからでないと、損をするかもしれません。仮想通貨はボラティリティー(変動幅)が非常に大きいものです。受け取った時点の評価額より低い金額で交換すると、確定申告では評価額を基準に納税額が決定するので、予想外に多くの税金を支払う恐れもありますので、気を付けたいところです。
まとめ
仮想通貨取引所を運営するBITPOINTの小田玄紀会長は、「仮想通貨の電力消費問題は、再生エネルギーを使ったマイニングへの移行で解消されていく」と今後の展望を語っています。ビットコインを中心とするブロックチェーン技術を開発する北米企業のブロックストリームも、「ビットコインのマイニングがゼロエミッションの電力インフラに資金を供給し、経済的発展を可能にする」と説明しており、双方が連携し合うことでさらなる社会的価値を生み出すと前向きに捉えています。
暗号資産のマイニングが大量の電力を消費するのは疑う余地がない事実ですが、もし消費電力のほとんどを太陽光発電などの再生可能エネルギーで賄うことが可能なら、世間で指摘されるエネルギーの無駄遣いとは言えなくなるでしょう。仮想通貨は今現在も保有者が増加の一途を辿っており、世界的に普及が進むことは間違いありません。存在そのものを頭ごなしに否定するのではなく、どのようにマイニングを行うのか、エネルギーをいかに効率良く使うのか、そちらに焦点を向けて改善を重ねて欲しいと思います。