パワーコンディショナーの過積載

太陽光発電の過積載についてメリットやデメリットを中心に解説

投資として一定規模の太陽光発電を運用している方は、なるべく売電収入を増やし、利益を出したいですよね。昨今は電力の買取価格が低下傾向にあるため、より多くの太陽光パネルを設置して、売電収入を伸ばしたいと考える方も少なくありません。太陽光発電はどうしても天候に左右される部分が大きく、発電量が不安定です。いわば枚数の勝負、という発想も当然出てきます。
そこで注目されているのが、「過積載(=積み増し)」という手法です。過積載をすることで、特に投資用太陽光発電では大きなメリットがあります。
今回は、過積載が一体どのようなものなのか、メリットやデメリットなどを詳しく見ていきましょう。

そもそも過積載って何?

過積載とは、パワーコンディショナー容量よりも大きな太陽光パネル容量を設置することです。太陽光発電の最大出力はパネルの設置枚数に比例するので、過積載をすればその分多くの発電量を見込めます。現在では、パワーコンディショナー50kWに対し、太陽光パネル95kWといった、2倍近い容量を設置するケースも珍しくないのです。
以前は、過積載をするにしても、2割増しや3割増し程度でした。パワーコンディショナーの値段が高額だったこともあり、長く大事に使おうという価値観が大半でした。しかし、性能が上がり値段も低下したことで、2.5倍から3倍前後まで過積載する人も出てきています。
産業用太陽光発電においては、設備容量50kW以上を超えると「高圧連系」に区分されます。そうなると、50kW未満の「低圧連系」よりも複雑な手続きが必要です。専任の電気主任技術者を選出して契約する義務があるため、運用コストが膨らみます。場合によっては、キュービクル式高圧受電設備といわれる機器を取り付ける必要もあり、初期費用もかさんでしまいます。
そこで、太陽光パネルを70~80kW分、搭載しつつ、パワーコンディショナーは49kWに抑えようという過積載が広まりました。どちらかが50kW未満なら「低圧連系」扱いになりますので、事業者の負担が軽減されるのです。

知っておきたいピークカット率とロス率

ピークカットとは、パワーコンディショナーに搭載されている機能の一つです。電力会社との系統連系に契約以上の電力が流れないよう、制御する仕組みを意味します。過積載をすると、太陽光パネルと同じ容量のパワーコンディショナーを設置した時より、発電量は増えます。容量50kWの太陽光パネルより、100kWの方が発電量が多いのは当然の話ですが、パワーコンディショナーで処理しきれない分の電力がどうなるのか、気になりますよね。この場合、処理しきれない余分な電力を、いわば捨てる状態となります。これがピークカットの概念です。
余分な電力を無駄にするぐらいなら、最初から過剰にたくさんの太陽光パネルを設置するのはもったいないと思ってしまう方もいるでしょう。しかし、捨てる時間帯を考慮するより、朝方や夕方など、そもそも発電量がさほど見込めない時間帯もパワーコンディショナーをなるべく稼働させた方が効率良い、という考え方が現在では主流になっています。
過積載をした際にどの程度の電力が捨てられているかを示す「ピークカット率」は、条件によって異なります。おおよその目安として、2割増し、過積載率120%だとピークカット率はほぼ0%に近い数値です。無駄になる電力と上乗せされる発電量がほぼイコールということです。
また、過積載率150%だとピークカット率はだいたい3%前後、170%だと7%、200%だとピークカット率が10%を超えるケースも出てきます。この数値は、発電する場所や環境によって変わってきますので、あくまで参考程度に覚えておいてください。

もう一つ、太陽光パネルには「ロス率」という概念も存在します。「損失係数」とも表現しますが、これは太陽光パネルからケーブルを伝ってパワーコンディショナーに伝達される時に、一定のロスが生じることを意味します。たとえば容量10kWの場合、上限の10kW発電しても、10~15%程度はロスとなり、実際に売電する電力とはならないのです。投資用の太陽光発電システムを導入する際は、これらを踏まえたうえで、どのぐらいの容量を搭載するのか検討するようにしましょう。

過積載のデメリット

売電収入を増やす手法として魅力的に見える過積載ですが、いくつかデメリットもあります。
大前提として、パワーコンディショナーの入力電圧の範囲内で行わなければいけません。いくら過積載が良いからといって、パワーコンディショナーの5倍6倍の容量にするのは、現実的ではないです。ピークカットによって、パワーコンディショナーの放熱量が増えて通常以上に負担がかかり、機能の劣化が激しくなるとも言われています。ただし最新の機器なら、放熱量の問題はだいぶ改善されているようです。

重要な点として、メーカーによってはパワーコンディショナーの保証がつかない場合もあります。そういった商品は、パワーコンディショナーの1.2~1.3倍程度の過積載にしか対応していません。一定の過積載まで保証対象としているパワーコンディショナーもあるので、適切なものを選びましょう。
後から追加で太陽光パネルを増やし過積載にするなど、発電出力、供給方法やメンテナンス体制が大きく変更となる場合、「再生可能エネルギー発電設備軽微変更届出書」または「再生可能エネルギー発電設備変更認定申請書」を経済産業局へ提出する義務が生じますので、その点も注意が必要です。

まとめ

もしこの記事を読んでいる方が広大な土地を所有もしくは購入しているなら、スペースを余らせるより過積載して太陽光パネルをたくさん設置すべきでしょう。天候が良くない日でも発電量が増えるので、トータルの売電収入は間違いなく増えます。
太陽光発電投資においては、初期費用をいかに早く回収するかが大事なポイントになるため、売電収入を増やせるなら積極的に取り入れるべきです。
とはいえ、利回りを重視するなら、過度な過積載は禁物です。太陽光パネルの枚数が増える分、初期費用がかさんで、回収期間が長くなってしまいます。過積載率が200%を超えると、ピークカット率も上がり、必ずしも効率良い発電とは言えないかもしれません。周辺環境など様々な条件を考慮しながら、自分にとって適切な過積載率を見つけてください。


関連記事


おすすめランキング


ピックアップ記事

  1. 家庭用200V電源(EV用)

    2024.04.22

    EV(電気自動車)の充電スタンドはどのような仕組みで運営されてるの?料金なども併せて解説

    EVの普及を一層進めるために、充電スタンドの増設が進められています。その数は増加傾向にあり、ガソリン…
  2. エコキュートの補助金

    2024.04.21

    【2024年最新版】エコキュート補助金についてのまとめ

    自宅にあるガス給湯器を、エコキュートに取り替えるようと検討する方が増加中です。資源価格の高騰によって…
  3. EVの急速充電器

    2024.04.20

    EV(電気自動車)の急速充電とは?仕組みについて解説

    EV(電気自動車)は環境に配慮された次世代の車として、現在急速に発展しています。EVの大きな特徴の…

カレンダー

2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930