企業が工場やオフィスビルなどに太陽光発電システムを導入するケースが増加しています。CO2排出量削減や脱炭素を掲げて、化石燃料に依存しない自家発電設備を搭載する流れは今後も継続するでしょう。これは企業に限ったことではありませんが、「太陽光パネルを設置するために、どれくらいの面積が必要か分からない」という悩みを持っている方は少なくないはずです。必要面積が明確にならないと、予算を決められませんし、導入にむけて中々動き出せないと思います。単純に太陽光パネルの枚数分を掛け算すればよいという話でもないため、少々複雑に感じてしまうかもしれません。
この記事では、太陽光発電システムを設置する際、必要な面積を計算する方法や面積に応じてかかる費用、注意点などについて解説していきます。
単位面積あたりの発電量は大体これくらい
最初に結論からお伝えすると、太陽光発電に必要な面積は、1kWあたり10~15平方メートルといわれています。言い換えれば、1平方メートルあたり0.1~0.067kWの太陽光パネルを設置できる計算です。太陽光パネル1枚あたりの発電量は250Wが主流ですが、昨今では300Wのものも登場しています。太陽光パネルは、メーカーや製品によって大きさが異なります。たとえば東芝の製品を比較すると、1枚あたり面積が1.24~1.63平方メートルとだいぶ差があります。他社製を比較しても、大体1.25~1.5平方メートルの間です。太陽光パネルには統一の規格が存在しないので、ばらつきが生じます。
一例として、太陽光パネル1枚の面積が1.5平方メートル、設置する施設の屋根面積が300平方メートルとしましょう。1平方メートルあたり0.1kWと換算すれば、当該施設ではおよそ30kWの発電量が期待できることになります。一方で、屋根面積を太陽光パネルの面積で割り算する場合、「300÷1.5=200」となり、およそ200枚の太陽光パネルを取り付けることが可能と考えられます。
200枚×250W(1枚あたり発電量)=50,000W(50kW)という計算式から、30kWではなく50kW程度発電するのではと疑問を持ちませんか?実は、上記の条件で、実際には太陽光パネルを200枚設置することはできません。厳密に計算するには、後ほど解説する注意点を考慮することになるからです。
発電量のシミュレーション一覧
前項で説明した基本的な数値をもとに、発電量のシミュレーションをしてみましょう。
①発電量10kWの場合
10kWは、住宅用太陽光発電と産業用太陽光発電を区別する境目となる水準です。発電容量10kWを目安とするためには、100〜150平方メートルが必要面積となります。大体35枚の太陽光パネルを設置することになるでしょう。天候にもよりますが、年間発電量は10,000~12,000kWhになると見込まれます。
②発電量50kWの場合
発電容量が50kW以上ですと、高圧扱いとなり、全量売電が可能になります。より多くの売電収入が期待できる反面、キュービクルとよばれる高圧変圧器の設置義務が生じ、電気主任技術者を選任しなければなりません。一般的に”大規模発電所”と種別される水準ですが、この場合どのぐらいの面積が必要なのでしょうか。必要面積はおよそ500~750平方メートル、太陽光パネル約170枚分に相当します。この規模になると設置費用が1,000万円を超えてくるため、ある程度再生可能エネルギー活用に力を入れている企業が導入することになるでしょう。
③発電量2,000kWの場合
定格出力が2,000kW以上の太陽光発電は、特別高圧に区分され、メガソーラーとよばれています。大企業が事業で行うケースがほとんどです。日当たりが良い土地に大量の太陽光パネルを設置することになります。この場合、必要面積はおよそ20,000~25000平方メートルです。想像がつきにくい規模ですが、東京ドームの建築面積が46,755平方メートルです。東京ドームの約半分に太陽光パネルが並べられていると考えればいいかもしれません。
計算時に気をつけないといけないこと
まず前提として、必要面積や太陽光パネルの枚数は、様々な条件によって変わってきます。日当たりの良し悪し、影ができやすいか否か、太陽光パネルの設置角度などが一因です。
そして、最も注意していただきたいのは、必要面積を計算するにあたり、「太陽光パネルの面積」だけでなく「全体を囲む外周の面積」を加算しなければいけないことです。太陽光発電システムを運営するうえで、定期的なメンテナンスは必要不可欠です。野立て太陽光発電の場合、設置場所に出入りするところや、メンテナンスを行うためにスペースに余裕を持たせておかなければなりません。
たとえば、50kWの太陽光発電を導入するケースを想定すると、500平方メートル以上の面積が必要です。25×20平方メートルの土地に設置すればいいかというと、それでは不十分です。メンテナンス担当者が作業ないし移動するスペースとして、最低でも縦横それぞれ1m以上は確保しておくべきでしょう。つまり、本当の必要面積は”27×22=594平方メートル”以上となるのです。
この計算方法を式で表すと、「発電量×1kWあたり面積+外周面積=本来必要な面積」となります。屋根に設置するケースでは、施工業者にメンテナンス作業用面積をどの程度確保すればいいか、事前に確認を取り相談のうえで設置容量を判断してください。
まとめ
発電量を計算する時に、まずは「1kWあたり10~15平方メートル」という目安と基準にするとよいでしょう。今回は、一般的に普及している太陽光パネルとして、1枚あたり出力250Wを前提に説明しましたが、今後性能が向上して出力が増えると、同じ面積でも発電量は増えることになります。また、産業用太陽光発電を検討中の方は、必要面積を計算する際、外周面積を考慮することを忘れないでください。これを見落としてしまうと、いざ設置工事が始まった後、面積が足りないという事態になりかねません。
将来的には、一段と進化した次世代太陽電池が普及するといわれており、必要面積はどんどん縮小するだろうと期待されています。日本の国土には限りがあるわけですから、少ない面積でより多くの発電量が実現する環境になってほしいですね。