太陽光発電の蓄電池

太陽光発電に蓄電池を組み合わせるメリットやデメリットを解説

住宅用太陽光発電システムを導入する場合、そのままでも自宅で電気を使用することは出来ますし、電力会社に電気を売電することも可能です。しかし、日中の太陽光発電で作った電気だけで1日分の電力使用量すべてを賄うことは難しいです。仕事から帰宅後にお風呂を沸かすなど、夜間に電力を使うことが多いためです。
また、太陽光発電システム自体に生み出した電気をそのまま溜め込む機能が内蔵されていると勘違いしている人もいますが、電気を保存する機能はついていません。つまり、仕事などで昼間に外出する習慣の人は、せっかく設置しても、メリットを活かしきれない可能性もあるのです。

そこで注目したいのが蓄電池です。太陽光発電システムとあわせて設置することで、様々な利点が生まれ、日常生活に大いに役立つことでしょう。一体蓄電池とはどのようなものなのか。どんな種類があり、どう選べばよいのか、本コラムでは、蓄電池について詳しく説明していきます。

そもそも蓄電池とは?メリットやデメリットについてまずは解説

蓄電池とは、化学反応によって電気を蓄える充電や、電気を使う放電を繰り返し行うことができる装置です。プラス極(正極)とマイナス極(負極)及び電解液で構成され、負極側から正極側に電子が移動すると放電、反対に正極側から負極側に電子が移動すれば充電される仕組みです。
また最近はリチウムイオン電池が主流となっています。正極にリチウムを含む材料が使われていることから名付けられた高性能な蓄電池です。古くから使われている鉛蓄電池とくらべて、容量が小さいのに大量の電気を充電することができるうえ、繰り返し使用しても劣化しにくいことが挙げられます。

蓄電池を選ぶうえで覚えておくべき点として、特定負荷と全負荷という2種類の区別を把握しましょう。特定負荷は停電した時に一部の部屋で電気が使用できるようになるのに対し、全負荷は原則全部の部屋で電気が使えます。特定負荷の蓄電池の方が料金は安いのですが、100V対応の家電しか使えません。全負荷だと200Vの高機能エアコンやIHクッキングヒーターが使用可能です。万が一の停電時に家電が使えない不自由さを避けたい人は、全負荷のものを選ぶとよいでしょう。
もう一点、蓄電池の区別として単機能型とハイブリッド型というものがあります。単機能型は、通常のパワーコンディショナーに加えて蓄電池専用のパワーコンディショナーをもう一台設置して、電気を送るものです。ハイブリッド型は、パワーコンディショナーを太陽光と蓄電池両方の機能を備えたものに入れ替えて使う仕組みです。

蓄電池の大まかな仕組みが分かったところで、メリットとデメリットをそれぞれ見ていきましょう。

メリット

●自家消費率を高めることができる
●電気料金が安くなる可能性がある
●停電した時も、普段の生活と近い暮らしができる

デメリット

●設置費用がかかる
●ある程度スペース確保が必要
●蓄電容量が経年劣化する

まずメリットについてです。自家消費型の人は、なるべく多くの電力を無駄にせず自宅で使用すべきなので、余剰電力を貯めるための蓄電池は必要不可欠かもしれません。夜間の電気代が安くなるプランを電力会社と契約しておけば、電気代の安い夜に蓄電池を充電し、電気代が高くなる日中に充電した電気を使用するという節約方法もあります。自然災害や台風によって停電した場合でも、蓄電池に貯めた電気のおかげで難を免れることができるでしょう。いざという時の備えとして蓄電池を置いている家庭は、実際少なくありません。

一方、デメリットについて。価格や設置コストに関しては次の項目で説明しますが、決して安価なものではないです。家庭用蓄電池の定置型を設置する場合、メーカーや容量によって様々ですが、重さはおよそ50~100kgほど。エアコンの室外機と同じぐらいの大きさです。蓄電池そのものと、メンテナンスするために必要なスペースも確保しておくべきでしょう。ただし、屋内設置型の蓄電池も存在します。
蓄電池は、充電と放電を繰り返すことで少しずつ劣化して、最終的に交換することになります。使用環境や蓄電池の種類によって異なりますが、リチウムイオン電池の場合、100%まで充電して0%になるまで放電することを1サイクルとカウントします。たとえば1日1サイクルと仮定するなら、1年間で365サイクル。現在の蓄電池は、6,000回程度使用可能といわれているので、6000/365=16.4年。平均的な寿命は約16年といえます。最新のものだと、10,000サイクル以上繰り返し使用できる蓄電池もあるため、25年以上にわたり使い続けられる計算となります。経年劣化するとはいえ、長年にわたり使い続けることができるのも事実です。

蓄電池の価格は?補助金などはもらえるの?

蓄電池の設置を検討している人の中には、太陽光発電と同時に導入しようと考えている人も多いのではないでしょうか。太陽光発電の初期費用は、住宅用太陽光発電であれば100万円〜150万円ほどです。蓄電池もあわせて購入すれば、コストはさらに高くなってしまいます。国の調査によると、一般家庭で使用する定置型蓄電池(機器本体価格)の相場は、容量が5kWh未満だと22~25万円程度、5~10kWh未満だと18~21万円程度、10kWh以上だと15~17万円程度になります。容量が大きければ大きいほど、1kWhあたりの金額は低下する傾向にあるようです。これに工事費用が上乗せされますので、総額はもう少し高くなるでしょう。

蓄電池の値段を左右する主な要因として、
「蓄電池の容量」
「特定負荷or全負荷」
「AI機能の有無」
「工事内容」
「単機能orハイブリッド」
の5つが挙げられます。
せっかく新たに設置するなら、高性能なものが欲しいと多くの人は考えるはずです。そうすると、費用はおよそ100万円を超え、太陽光発電システムと同時購入なら200万円以上の支出となります。

出費がかさんで導入を悩んでしまう人のために、リチウムイオン蓄電池については自治体などが補助金の対象としているケースが多いです。特に東京都在住の人は、補助金を利用して蓄電池をお得に手に入れるチャンスを迎えています。2021年度、東京都では蓄電池1kWhにつき7万円、最大で42万円の補助金を給付したのですが、なんと2022年度は1kWhあたり10万円、最大60万円の補助金を給付すると発表しました。蓄電池の価格を100万円と仮定するなら、半額以上を都が支払ってくれるわけです。こんな特大サービスを逃すわけにはいきません。6月から募集受付開始とのことですので、設置予定の人は是非とも補助金を申請を検討して見てください。

場合によって蓄電池は自作もアリ?おすすめのメーカーも紹介

蓄電池は太陽光発電システムと併用することで、電気代を節約したり非常事態に備えるなど多くのメリットがあると説明しましたが、いざ導入するとなると高額なので躊躇してしまう人もいるでしょう。専門業者がおすすめしてくれた蓄電池を購入するのが最善なのは事実ですが、もし費用を減らしたい場合、より安く導入する方法も存在します。それは自作することです。

自作の蓄電池において定番の一つとなっているのが、ディープサイクルバッテリーを使用したもの。船舶・ヨットや、キャンピングカーのサブバッテリー等で利用され、充電及び放電の繰り返しに強いバッテリーです。DIYという言葉が広まるにつれ、自作の蓄電池でもよく使われているようになりました。
ディープサイクルバッテリーは新品でも3万5千円程度。これを容量分揃えていきます。インバータや、蓄電システムに欠かせない充電器、ブレーカーやヒューズ、端子台、配線をあわせてると、一式で10万円程度で購入できます。既製品の蓄電池を買うと100万円を超えることもあるので、10分の1の費用で蓄電池を製作できるわけです。
ただし、ディープサイクルバッテリーは小さな電力を長時間放電する事に特化したバッテリーなので、瞬間的に大きな電力を使う冷蔵庫やエアコンなどは、並列接続しないと動かない点には注意です。放電能力の高いリチウムイオン蓄電池ならそういった心配は不要ですが、やはり自作となると問題点があるのも否めないでしょう。

また、自作の蓄電池に貯めた電気を電力会社に売電したい場合、設備認定の申請を自分で行わなければいけません。そもそも専門知識のない状態で本格的な蓄電池を作ろうとすると、危険が伴う可能性が高くなります。安全を重視するなら、高性能なメーカー品を選ぶべきだといえます。
参考として、蓄電池を自作する際におすすめのメーカーを紹介します。

・KAUSMEDIA(カウスメディア)
・RENOGY JAPAN(レノジージャパン)
・ACDelco(エーシーデルコ)

これら3メーカーの商品は、大手通販サイトなどで気軽に購入できるうえ、お手頃な値段で試しに自作に挑戦したい人でも手を出しやすいものです。自家用車用の蓄電池を転用するなら、Panasonicの製品もおすすめです。その他、多くのメーカーから商品が販売されていますので、自分が欲しい容量や予算と照らし合わせて、検討してみてください。

まとめ

太陽光発電システムを導入するなら、やはり蓄電池も併用したほうが利点を活かすことができます。自作は電気機器に詳しくないと、危険な目に遭う恐れがありますが、最近は地方自治体も蓄電池に対し補助金を給付するところが増えているため、費用はだいぶ抑えられるといえるでしょう。
実は、経済産業省では、2030年度の住宅用蓄電池の価格目標を1kWhあたり約7万円と設定しているのです。住宅用蓄電池の初期費用はまだ高い水準にあると政府関係者も認識しているようで、今後さらなる価格の低減が期待されます。国をあげて蓄電池を私たちの家庭に普及させる動きは継続するでしょうから、将来は一家に一つ蓄電池を設置する時代が到来するかもしれません。

太陽光発電において、自家消費でも売電収入目的でも、蓄電池が果たす役割は大きいです。きっと、「太陽光発電を始めて良かった」「蓄電池があって良かった」と喜びをもたらしてくれるでしょう。


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