太陽光発電に取り組む意外な企業

太陽光発電のパネル撤去費用(廃棄費用)はどれくらい?

日本国内にて住宅用太陽光発電の導入件数は、は2022年時点で推定300万件に達しています。投資目的の産業用太陽光発電についても、全国で約60万件が建設されており、ほとんどがFIT制度(固定価格買取制度)を活用したものです。
FIT制度は、住宅用は10年間、産業用は20年間適用されます。期間満了後、電力の買取価格が大幅に低下する可能性があるため、きちんと廃棄せず放置される太陽光発電設備が続出するのではと懸念の声が上がっています。そこで政府は、太陽光発電システムの撤去や廃棄について、整備を進めているのです。
今回の記事では、太陽光発電の撤去(主に太陽光パネルの撤去)を行う場合、費用がどのくらいかかるのか、また法改正による廃棄費用の積立義務化についても解説していきます。

撤去にかかる費用の内訳について解説

何かしらの理由で、取り付けた太陽光発電を撤去したい時、どのくらいの金額を想定すればいいのでしょうか。住宅用太陽光発電の廃棄にかかる費用は、主に撤去作業費、運搬費、処分費の3つです。業者によって価格は変動しますが、およその目安として、撤去作業費は約10万円かかると見込んでください。運搬費と処分費は合わせて約5万円で、4tトラック1台で2万5,000円程度かかります。
この数値は、太陽光パネル20枚、容量約4kWの太陽光発電を想定したものですので、容量が大きくなると費用総額15万円を超えるケースも出てきます。また、業者によっては、作業工程数で計算する場合もあります。計算式は、作業日数×作業員数×人件費です。人件費は1人あたり1日2万円前後が相場のようです。
太陽光パネルが屋根に設置されている場合、安全対策費という名目で足場代がかかることもあるので注意が必要です。足場の設置は、作業員の安全確保のため、加えて作業中に傷をつけないために行われます。足場代の相場は、1㎡あたり700円~1000円です。悪天候により作業ができない日があっても、足場代は日数分支払うことになります。作業日数により変動するものの、大体15万円~20万円かかるとみておけばいいでしょう。

一方、産業用太陽光発電の場合、規模が大きいので撤去費用の目安も異なります。50kW以上だと、廃棄費用の相場が80万円~100万円以上と高額です。いわゆる野立て方式で、土地を借りて設備を建てたケースでは、土地の原状復帰費用も加算されます。
容量100kWなら、当然廃棄コストも倍増するわけで、そうなると一部の事業者は適切な廃棄処分をせず野ざらしにする可能性を考えなくてはなりません。そこで、次項で説明する廃棄費用積立義務化が施行されることになるわけです。

太陽光発電の廃棄費用の積立が義務化された?

事業あるいは投資として大規模な太陽光発電を運営する方たちにとって、最も大事なことは利益が出るか否かです。FIT制度が適用される20年間は、電力の買取価格が固定されており、安定した収益が見込めるのですが、卒FITになると買取価格が低下して利益が出にくくなります。卒FITを迎える発電所が、2030年から2035年にかけて急増するため、政府は事業者に廃棄費用の積立を義務化する制度を設けました。
資源エネルギー庁は、2021年に「太陽光発電設備の廃棄費用等積立制度について」という発表を行い、2022年7月から太陽光発電所を廃棄・撤去する費用を積立てることを義務化しました。調査によれば、発電事業者の中で廃棄費用を積み立てている割合は20%未満と非常に低いのです。
そもそもFIT制度は、電力の買取価格について、廃棄費用を想定した価格を算定しており、本来なら売電収入の一部を積み立てておくべきだとしています。しかしながら、現状では積み立てを開始する時期などを事業者に任せる状態です。適切な廃棄費用を将来的に確保できない業者が増える懸念を拭えないため、制度化に至ったというわけです。
義務化は、10kW以上のFIT認定を受けた発電所が対象です。容量10kW未満の住宅用太陽光発電は対象外となります。積み立て時期は、FIT期間が終了する10年前から満了日までです。原則として源泉徴収的な外部積立て、売電収入から廃棄費用分が引かれる形式となります。
毎月の積立金額はFIT制度の買取価格によって異なりますが、大体FIT価格の3%~4%が積み立て分になると考えておけばいいでしょう。

太陽光パネルを取り外した後の再設置費用はどれくらい?

太陽光パネルの寿命がきて新品に交換する、もしくは屋根のリフォームで一旦設備を外して再度設置するといったことも、長期間発電を続ける上で起こります。太陽光発電設備の取り外しは、素人がやろうとすると危険ですから、専門業者に依頼すべきです。では、太陽光パネルの脱着にかかる費用はどのくらいかというと、大体1枚当たり1万円から3万円が相場です。枚数やサイズにより変わるほか、諸経費も日数分かかるため、合計すると数十万円かかるでしょう。部材費用、人件費など、業者によって異なるため、時間的に余裕があれば複数の業者に見積もりを依頼するほうが、好条件を提示してくれる業者を見つけやすいはずです。
一つ注意しておきたいのは、もしメーカー保証の期間内に太陽光パネルを取り外し再設置すると、保証が切れてしまう可能性があります。自然災害ではなく、取り外し作業で太陽光パネルにヒビが入った場合、メーカー保証の対象にならないケースも考えられます。
たとえば屋根塗装は、住居人の都合であり、メーカーが関与するものではないです。脱着することで太陽光パネルや配線が傷むリスクがあるため、保証期間がその時点で終了してしまうこともあるのです。特に、大きめの容量を屋根に設置している方は、再設置費用が想像以上に膨らむ可能性も十分あるので、機器の寿命や故障以外、あまり安易に取り外しをしない方がコストを押さえられるのは間違いないでしょう。

まとめ

太陽光パネルにしてもパワーコンディショナーにしても、機械ですからいつか必ず寿命が来ます。自然災害大国の日本では、予期せぬタイミングで機器が故障して交換しなければいけないケースも多々あります。住宅用太陽光発電を導入した方はもちろん、大規模な産業用太陽光発電を運用する事業者や投資家は、発電所の管理人として廃棄に至るまで責任をもって遂行しなければなりません。廃棄費用は、設置容量によって大まかな金額は計算できます。政府によって積み立ての義務化が制定されましたが、そうでなくとも早い段階からしっかり廃棄費用を積み立て、いつ何が起きても対処できる状態にしておくのが望ましいです。太陽光発電を日本各地に普及させ、私たちが生活するためのエネルギーとして長期間安心安全に使用するためにも、廃棄についてもっと一人一人が意識を高める必要があると言えます。


関連記事


おすすめランキング


ピックアップ記事

  1. EVのコスト・維持費

    2024.04.25

    EV(電気自動車)の維持費はどれくらい?かかるコストを中心に解説

    近年、環境への配慮から電気自動車(EV)への関心が高まっています。しかし、多くの人がEVの導入を検討…
  2. EV市場規模の伸び悩み

    2024.04.25

    EV(電気自動車)の市場規模が失速中?実情や原因を解説

    近年、環境問題への関心の高まりと技術革新により、電気自動車(EV)市場は急速に成長しています。しかし…
  3. テスラのパワーウォール

    2024.04.24

    テスラの蓄電池パワーウォールとは?徹底解説

    電気自動車(EV)を手掛けるテスラが発売した蓄電池、パワーウォール。どのような蓄電池か、導入するメリ…

カレンダー

2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930