太陽光発電の普及について

太陽光発電が普及しない理由を考察してみた

昨今、世界各国が脱炭素社会への移行を目指し、再生可能エネルギーを積極的に導入しています。そのうちの一つ、太陽光発電の設置件数も増加傾向にあるのですが、日本にお住まいであまり実感が湧かないという方もいるかもしれません。
日本全国で太陽光発電システムを設置している世帯の割合は、大体9~10%程度と言われています。地域によっても差があるため、自分が住んでいる周辺では滅多に見かけない、という方もいるでしょう。
CO2の排出量削減や石油・石炭エネルギーからの脱却が強く叫ばれる一方、太陽光発電はさほど普及していないようにも感じます。どうして日本では、太陽光発電の普及が中々進まないのでしょうか。その理由について考察していきます。

太陽光発電は7割が損するからやめた方が良い?

そもそも太陽光発電が損するという認識が広がるキッカケとなったのは、2012年に発売された『週刊新潮』の記事だといわれています。同誌では、「太陽光発電の7割が損をする」というショッキングな見出しを掲げ、故障リスクおよび発電量の確認を怠ると損する可能性が高いと記載しました。FIT制度(固定価格買取制度)がスタートしたのがちょうど2012年でした。太陽光発電が一気に普及し始めたタイミングでこういった記事が出たため、多くの方が不信感を抱いてしまったと推測されます。

太陽光発電はやめたほうがいいと言われる主な理由として挙げられるのは、コストの問題です。初期費用として少なくとも100~150万円以上かかるため、高額な出費は避けられません。蓄電池も同時に設置する場合、さらに追加費用を出さなければならず、コスト面で敬遠してしまう方もいるようです。
また、FIT制度による売電価格の低下も指摘されています。2012年は1kWhあたり42円で買い取ってくれましたが、2022年は1kWhあたり17円まで低下しました。2023年は1kWhあたり16円とさらに低下する見込みであり、売電で採算が取りにくくなっているわけです。しかしながら、太陽光パネルなどの費用も低下傾向にあるため、一概にネガティブ要素とも言い切れません。
日本は台風や地震など自然災害が多い国です。もし太陽光発電を取り付けた後、大規模な災害が起きてしまったら・・・と心配になるかもしれません。実際は、太陽光発電が使い物にならなくなるほど損傷するケースは滅多になく、長きにわたり発電できるケースが大多数を占めます。

太陽光発電をつけて良かったと言う声も実際は多い

否定的な意見も散見される太陽光発電ですが、当然ながら「設置して良かった」という方も多数いらっしゃいます。この項目では、実際に導入して肯定的な意見をお持ちの方を参考にしながら、太陽光発電を上手く導入するコツを考えてみましょう。

1つ目の事例は、災害対策目的で太陽光発電3kwと蓄電池を導入したというケースです。住宅用太陽光発電として、3kWという容量は少なめです。日常生活で使用する電気を賄うというより、いざという時のために設置したことが窺えます。「停電になっても電気を確保できるので心配事が一つ減った」といい、蓄電池を併用することで夜間に停電が起きても電気が止まることなく使い続けられるのです。発電量がさほど多くない分、日々の節電の意識も高く、余った電力は売電してコツコツ収益を得ているそうです。無理して多額の初期費用を投じるのではなく、適度にバランスを取ったことで、ストレスなく発電を継続できています。

2つ目の事例は、住宅用太陽光発電と蓄電池を同時に設置して、PHV車(プラグインハイブリッド車)も所有しているというケースです。昼間自宅にいる間は太陽光発電の電力を使用し、不在の時は売電して収益を得ます。さらに夜間は蓄電池に溜めておいた電力を使うことで、以前より電気代は9割ほど削減できたそうです。
PHV車への充電も太陽光発電の電気を用いれば、ガソリン代を支払うこともほとんど無くなります。とことん自家消費に徹したうえで、余剰分を売電するというスタンスは、今後主流になっていくでしょう。

付けて良かったと実感している方に多く見られる意見としては、次のようなものが挙げられます。

●電気代が安くなる
●売電収入を得られる
●災害時に電気が使える

ズバリ、太陽光発電を普及させるには

まだまだ普及率が低い現状を打開するためには、どのようなことが必要なのでしょうか。
太陽光発電の導入を見送る理由として最も多いのがコスト面である以上、初期費用の低下は必須条件かもしれません。今後、太陽光発電システムがさらにコモディティ化して、気軽に購入できるようになることが期待されます。前述した通り、価格自体は年々低下傾向にあるので、動向に注目したいところです。
価格と並行して発電効率の向上も望まれます。発電効率が上がれば、少ない面積つまり太陽光パネル枚数を減らしても、十分な電力を確保することができるはずです。性能向上と低価格化が同時に実現すれば理想の環境といえます。
また、蓄電池の普及も促進していくべきです。労働世代の大半は昼間自宅にいないため、せっかく太陽光発電を導入しても電力を効率よく消費できないかもしれません。将来的に、太陽光発電の設置目的は売電よりも自家消費に移行すると考えられます。そうなると、夜間に昼間発電して溜めた電力を使うために、蓄電池の存在が必要になってくるでしょう。蓄電池があることで、自然災害による停電時も電気の不安が薄れます。長い目で見れば、蓄電池に費用をかける価値は十分あるといえます。デメリットや注意点もしっかり認知させつつ、補助金制度など地方自治体の積極的な後押しにも期待したいところです。

まとめ

現時点で太陽光発電の導入を検討するなら、ある程度の費用がかかることは仕方ないですが、多くの自治体が補助金制度を設けており、地域によっては相当な金額を受領することもできます。もちろん補助金は今後も継続的に給付されることが望ましいですが、いつまで続くか分かりません。将来、太陽光発電システムの価格低下を待つよりも、補助金を利用して今導入したほうが実はお得という可能性も十分あります。
まずは太陽光発電の設置にかかるコストを周知させ、資金の確保を促すか、リース契約やPPAモデルなど初期費用がかからない選択肢をもっと多くの方に知ってもらうことも大切です。
新築の一軒家を建てる際は施工業者から「太陽光発電つけますか?」と聞かれることが一般的となっています。普及に向けた動きは各業界で進展しているものの、現状のままでは普及率が鈍化するという懸念は払拭できない気もします。義務化という半強制的な方策よりも、自主的に設置したくなるような流れに変えていきたいものです。


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