太陽光発電は、CO2を排出しないクリーンエネルギーとして世界的に普及していますが、実は他にも注目すべき点があります。それは、節税対策としても大きく貢献するということです。太陽光発電投資を行う個人事業主や、環境対策として導入する企業など、多額の税金を納めている方ほど、節税効果も高まります。しかも発電した電力を自家消費して電気代を削減したり、売電収入を得ることも同時にできるのですから、とても魅力的ですよね。
それでは、節税対策という観点での太陽光発電について、押さえておくべきポイントを解説していきます。
太陽光発電の節税スキームを解説
節税スキームの基本的な仕組みは、太陽光発電システムを導入して、その設備費用やメンテナンス費用などを経費に計上することで、年度ごとの納税額を少なくするというものです。太陽光発電に関わる様々なコストは、経費として計上することが可能です。経費の額が多くなるほど、支払う税金も少なくなります。
では一般的に、どんな支出が経費として認められるのでしょうか。
●経費に含まれるもの
減価償却費、メンテナンスを業者に依頼する費用、パワーコンディショナーの電気料金、交通費、水道光熱費、接待交友費など
●経費に含まれないもの
自分の飲食費、メンテナンス用以外の衣類、万が一メンテナンス中に自分が怪我した時の医療費など
上記を見ると、かなり幅広い範囲まで、経費に計上できることがお分かりだと思います。1つ覚えておきたいのは、自宅兼オフィスにて、太陽光発電で発電した電気を自家消費かつ余剰電力を売電する場合、経費に含まれるのは売電した分だけです。たとえば総発電量の20%を売電したケースだと、経費の20%分しか計上できません。自宅で消費した分は経費として認められないので注意してください。
太陽光発電の節税について〜個人編〜
ここからは、個人と法人に分けて、どのように節税対策を行っていけばよいか説明します。
まずは給与取得者、いわゆるサラリーマンです。自宅の屋根に太陽光発電システムを導入する住宅用太陽光発電は、余剰電力を電力会社に買い取ってもらい、売電収入を得ることができます。売電収入は「雑所得」に該当し、年間20万円を超えると確定申告が必要にあります。
ただし、売電収入から必要経費を引いた額が20万円以下なら、確定申告は不要です。機材や道具の購入費をメンテナンス費用として経費に計上できます。なるべく経費を増やし、雑所得を20万円以下に抑えると良いでしょう。
次に個人事業主です。本業とは別に太陽光発電投資を行う方などが該当します。個人事業主の売電収入は所得税の課税対象となるため、納税が必須となります。
課税所得=(売上-経費-各種控除額)×所得税率
経費の内容は前述した通りですが、特に覚えておくべきは減価償却費です。個人事業主には定額法が適用されるため、毎年一定の金額を償却することになります。太陽光発電設備の法定耐用年数は17年間と定められており、設備費用に0.059(1/17)を掛けた金額を、17年間にわたり経費に計上します。個人事業主には、青色申告を利用するという方法もあります。青色申告をするだけで、所得金額から最大65万円が特別控除されるため、とてもメリットが大きい制度です。
青色申告を行うためには、開業届を税務署に提出して個人事業主として認定を受けたうえで、所得税の青色申告承認申請書を提出します。なお、65万円の控除を受けるためには、複式簿記によって帳簿付けを行い、e-Taxによる申告または電子帳簿保存が条件となります。
さらに、消費税還付制度を利用することもできます。課税事業者になると、太陽光発電設備の導入費用にかかる消費税が売電収入の消費税よりも多い場合、差額が還付される仕組みです。場合によっては100万円以上が還付される一方、消費税還付を受けられるのは事業初年度分のみです。次年度以降は売電収入分の消費税を納付しなければなりません。個人事業主が課税事業者になるためには、「2年前の課税売上が1,000万円以上」などの条件を満たす必要があります。
太陽光発電の節税について〜法人編〜
法人も個人事業主同様、太陽光発電の設備費用を減価償却費として経費に計上できますが、計算方法が少し異なります。初年度は「設備費用×0.118」、次年度以降は「残存価格×0.118」を年度ごとに計上します。よって、控除額は初年度が最も多く、年ごとに減少する仕組みです。太陽光発電の法定耐用年数や、経費に含まれる範囲については、個人の場合と変わりません。
法人において魅力的な節税対策は、中小企業経営強化税制とよばれるものです。対象は、自家消費型もしくは余剰売電型太陽光発電設備となります。全量売電型は該当しません。
●資本金3,000万円以下の法人は、即時償却または10%税額控除
●資本金3,000万円超1億円以下の法人は、即時償却または7%税額控除
即時(特別)償却とは、太陽光発電の設備費用を初年度に一括して償却できる制度です。初年度の税金を抑えることができ、設備投資によってキャッシュが減少する初年度の支出を減らす効果があります。
税額控除は、設備費用の10%(もしくは7%)を法人税から直接差し引く制度です。課税所得からではなく法人税額から直接という点で、節税効果が非常に大きいといえます。差し引けるのは法人税額の20%が上限という規定はあるものの、20%を超える控除額分は翌事業年度まで繰り越すことが可能です。
この制度は、中小企業に太陽光発電への設備投資を促進するために設けられたものですが、認定期限が2023年3月31日と決められています。期限が延長されるかは2022年末時点で未定ですので、対象の事業者は早めに認定を申請することをお勧めします。
まとめ
太陽光発電は、個人事業主および法人に、節税効果として多大なメリットがあります。個人事業主は確定申告をすることで、経費に計上したり、様々な控除を受けることが可能です。また、中小企業に対しては特に手厚い制度を設けており、導入へのハードルを下げています。
節税や確定申告と聞くと、難しく考えてしまい毛嫌いする方もいるかもしれませんが、要点を押さえて慣れてしまえば案外スムーズを手続きを行うことができるでしょう。
規模が大きくなるほど多額の初期費用がかかる太陽光発電だからこそ、課税所得を減らし税金を少なくすることで、手元に残るキャッシュが増える、つまり次の投資を決断しやすくなるのです。これから太陽光発電の設備導入を検討する方は、節税対策もあわせて頭に入れておくようにしてください。