太陽光発電のストリング

太陽光発電におけるストリングって何?

東京都が新築建物への太陽光発電設置を義務化するなど、再生可能エネルギーの普及が進んでいることから、“太陽光パネル”という言葉自体はほとんどの方が耳にしたことがあるでしょう。しかしながら、太陽光発電を本格的に始めるうえでは、覚えておきたい専門用語が数多く存在します。実は、太陽光パネルにも、「セル」や「ストリング」などいくつかの単位が存在するのです。こういった用語の意味を理解しておかないと、発電を行う過程で上手くいかず、結果的に損をする可能性もあります。
太陽光発電において最も大切で必要不可欠なものといえば、やっぱり太陽光パネルですよね。この記事では、「ストリング」という概念について説明していきます。最初はとっつきにくく感じるかもしれませんが、丁寧に解説しますので、じっくり読み進めてください。

太陽光のストリングとは?

住宅の屋根に設置された光景をよく目にする太陽光パネルですが、細かい単位で表わすと、「セル」「モジュール」「ストリング」「アレイ」に分類できます。ストリングが何かを理解するためには、これら4つの言葉の違いをしっかり把握することが重要です。

●セル
約10~15cm四方の太陽電池です。最小単位であり、単体の出力は0.5W程度となります。

●モジュール
セルを組み合わせて1枚のパネルにしたものです。悪天候に耐えられるように樹脂や強化ガラスで表面を補強しています。“太陽光パネル”と一般的に呼ぶものは、モジュールを指します。モジュールは各メーカーで大きさや形が異なりますが、50~70枚のセルで構成される場合が多いです。たとえば「60セル」と書いてある製品は、60枚のセルで構成された太陽光パネルという意味です。

●ストリング
モジュール(太陽光パネル)を、配線で直列に組み合わせたものです。直列に繋ぐことで高い電圧となり、より大きな電力を生み出すことができます。ストリングを適切に組まないと出力ロスが起こるので注意が必要です。また、モジュールが一部分でも故障すると、そのストリング全体の発電効率が下がってしまいます。

●アレイ
ストリングを並列に組み合わせた、最大単位です。並列に繋ぐと電流が高くなり、パネル全体の発電能力が高いといえます。アレイに組み込まれるモジュールの公称最大出力の合計がいわゆる“容量”として算出されます。

ご覧の通り、セルからアレイに至るまで、すべてが繋がっているわけです。最小単位であるセルが故障すると、モジュール1枚の発電効率が落ち、ストリング全体に影響が出てしまいます。小さな故障であっても、最終的には大きな損失に繋がりかねません。だからこそ、定期的なメンテナンスによって、発電量が安定する状態を保っておくことが重要なのです。

太陽光発電のストリングの組み方を解説

いずれもストリングやアレイを組み合わせた状態で設置されている点は、太陽光発電の規模を問わず同じです。ただし、単純にたくさんのモジュールを並べるだけでは、発電効率を最大限に高めることはできません。一般的に、発電ロスを少なくする組み方として、次の2点を抑えることが大事だといわれています。

●モジュールを多く結んだストリングにする
●ストリングが複数になる場合、ストリングの直列数を揃える

たとえば、30枚のモジュール(太陽光パネル)を配列する場合、それぞれ横に6・7・8・9枚を並べたストリングを縦4列に組み合わせるより、横に10枚ずつ並べたストリングを縦3列に組み合わせる方が望ましい、という具合です。設置場所によっては、アレイの一部分に木や建物の影がかかってしまうこともあります。先程の事例で、左端縦一列の部分だけ影が生じる場合、すべてのストリングの発電効率が低下し、アレイ全体に影響が出てしまいます。このような事態を避けるためには、導入前のシミュレーションで、どこに影がかかるのか把握し、ストリングの構成を検討すべきです。
発電効率が良いストリングの組み方のポイントは、一部分の悪影響を全体に波及させないことが大切です。ストリングの配線を縦向きと横向きのものを組み合わせるなどの工夫が求められます。周辺環境などによって、最適な組み方はそれぞれ変わります。発電量を左右する大事な要素ですから、施工業者としっかり相談するようにしてください。

ストリングの計算はこうやって行う

太陽光パネルの最小単位であるセルの出力はおよそ0.5Wです。最近の主流である60セルのモジュールは、太陽光パネル1枚あたりの主力が300W(0.5W×60)です。前述した30枚のモジュールを組み合わせたアレイの場合、容量は9kW(30×0.3kW)となります。
実はストリングの組み方で覚えておくべき点がもう1つあり、それはパワーコンディショナーの最大許容短絡電流および運転入力電圧範囲内に収まることです。太陽光パネルで生み出された電力は直流のため、パワーコンディショナーで交流電力に変換されます。短絡電流と開放電圧の各合計値が、規格された上限を超えない範囲でなければいけないのです。
たとえば、公称開放電圧が40V、公称短絡電流が9Aのモジュールを、横に10枚直列で並べたストリングを縦に3列並べるとします。この時、開放電圧が400V(40×10)、短絡電流が27A(9×3)以上のパワーコンディショナーを設置する必要があります。規定値を超えない範囲内での最適な並列が、発電効率を高めるポイントになるのです。

まとめ

初めて「ストリング」という言葉を聞いた方には、少々難解な話になってしまったかもしれません。一般的に私たちが言う“太陽光パネル”とは、小さなセルを多数合わせたものであり、そのパネルを直列に繋げたものが「ストリング」です。最も覚えてもらいたいのは、ストリングの組み方が発電量を大きく左右するポイントになること、そして一概に正しい組み方と言える模範解答が無く、それぞれ最適な組み方は異なってくることです。一見単純に横に並べただけに見える太陽光発電も、実は入念に組み方を検討した上で設置したといえるでしょう。導入前に日当たり状況や周辺環境を現地調査してもらうことが、発電効率を最大化するためのカギとなるのです。


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