SDGsへの取り組みとして、従来の化石燃料由来の電力依存から脱するため「自家消費型太陽光発電」を導入する企業が増えています。再生可能エネルギーの一つである太陽光発電システムを設置することで、地球環境の保全と同時に電気代のコストを削減する効果も期待できます。
ただし、企業が自社で消費する電力を太陽光発電で賄うには、相当な規模の設備投資が必要です。初期費用がかかり、資金繰りに影響を及ぼすため、特に中小企業では導入を躊躇ってしまうケースも珍しくありません。
そこで、企業の大小問わず、積極的に再生可能エネルギーの導入を推進するため、即時償却という制度が設けられています。太陽光発電においても即時償却が適用されるのか、どのような点に注意すればいいのか、これから解説していきますので参考にしてください。
太陽光発電の費用が即時償却できるか国税庁のサイトで調べてみた
そもそも即時償却とは、該当設備の設備費用をその年の経費に全額計上することです。税務上の償却方法の一つで、節税対策として活用されています。
太陽光発電システムなどの設備を導入する場合、一般的には減価償却という方法で費用を経費に計上します。減価償却ですと、取得額を耐用年数で割った金額を年ごとに均等に計上することになります。
しかしながら、特定の条件を満たす企業は即時償却を選択することが可能です。
即時償却が適用されるためには、固定価格買取制度(FIT制度)の認定を受けていないこと、なおかつ自家消費用途であることが必要です。投資目的の全量売電型太陽光発電は対象に含まれません。ただし、一部の電力を売電したとしても、自家消費率が50%を超えていれば大丈夫です。即時償却は中小企業経営強化税制に基づいて行うのですが、この制度は次の項目で詳しく説明します。
それでは、太陽光発電の費用を即時償却すると、どんなメリットがあるのでしょうか。最も重要な点は、初年度に支払う税金額を減らせることです。
中小企業は、事業への投資のために手元資金をなるべく確保しておきたいところです。経費に一括計上すると利益を圧縮し、法人税の支払額を削減できます。残った資金を、企業の成長に活用できるわけです。
あえてデメリットも挙げるならば、即時償却はあくまで計上のタイミングを変えるだけで、免税措置とは異なります。最終的に納める税額は、減価償却と同じです。その部分を勘違いしないようにしましょう。
中小企業経営強化税制と太陽光発電はどう関連する?
「中小企業経営強化税制」は2017年4月に施行された制度で、法人あるいは個人事業主の設備投資をサポートする目的で制定されました。いくつかの条件を満たすと、費用に対する税制優遇を受けることができます。
中小企業庁が公表した資料を見ると、「中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき一定の設備を新規取得し、指定事業の用に供した場合、即時償却または税額控除を選択し適用することができます」と書かれています。つまり、何かしらの設備投資をした際に、即時償却もしくは取得価額の10%(資本金3000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除が適用されるのです。
即時償却は先ほども説明した通り、取得費用全額を経費に一括計上できる仕組みです。法人が太陽光発電を導入する場合、初期費用が1000万円を超えるケースも十分あり、まとめて計上すると節税効果があります。この制度の適用を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。
①個人事業者もしくは中小企業者
②青色申告者
③対象業種に含まれる
①の中小企業者に関しては、資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人かつ常時使用する従業員数が1,000人以下の法人に限られます。資本金が1億円を超える法人に支配されている場合や、同一の大規模法人から2分の1以上の出資を受ける法人は除外されます。
②の青色申告とは、確定申告の種類の1つです。中小企業経営強化税制を受ける場合、必ず青色申告を行ってください。
③の対象業種について、電気業や水道業、娯楽業(映画業を除く)、性風俗関連特殊営業に該当する事業者などは対象になりません。逆にいうと、上記以外の幅広い業種が対象に含まれています。
次に、中小企業経営強化税制には、A〜Dまでの4つの類型があります。
A:生産性向上
B:収益力強化
C:デジタル化
D:経営資源集約化を目的とした設備投資
太陽光発電はA類型あるいはB類型の“機械装置”に該当し、取得費用が160万円以上を超えることが条件です。法人が新規導入する場合、費用が160万円を下回るケースはほぼ無いので、この点は心配しなくていいでしょう。A類型とB類型では細かい違いがあるのですが、どちらも選択できるなら、手続きが簡易なA類型を選ぶことをお勧めします。
中小企業経営強化税制は当初2019年度にて終了する予定でしたが、延長を繰り返し、2025年3月31日まで適用期限が延長されました。注意すべきなのは、2025年3月31日までに申請を届け出ればいいのではなく、経営力向上計画の認定を受け、発電を開始しなければならないことです。そのため、制度の適用を検討中の方は、期間に余裕を持って太陽光発電を取得するようにしましょう。
蓄電池も即時償却可能?
最近は、太陽光発電システムを導入するのと同時に蓄電池を設置するケースも増えています。特に自家消費用の太陽光発電では、悪天候の日や夜間など日光が当たらない時に蓄電池に溜めておいた電力を使用することで、電気代を減らすことができます。即時償却の対象となる“太陽光発電設備”とは、太陽光パネルに限らず、蓄電池なども含まれると考えていいでしょう。ただし、税制優遇を受けたい場合、太陽光発電システムと同時に償却すべきです。
中小企業経営強化税制で定められている“機械装置”のA・B類型は価格が160万円以上という条件があります。太陽光発電と別のタイミングで蓄電池を導入すると、この条件を満たさず、適用の対象外となる可能性があるからです。
また、太陽光発電設備の即時償却は、新品の設備だけが対象です。中古設備の購入しても、この制度は適用されません。即時償却するなら、必ず新品の蓄電池を購入してください。
まとめ
中小企業や個人事業主が、自家消費する目的で太陽光発電を導入するなら、即時償却は税制的にとても魅力的です。まだ手元資金が少なく、資金を別の事業投資に回したい時に、法人税を減らし、キャッシュフローを向上させることができます。現時点で、中小企業経営強化税制の適用は2025年3月31日までです。これは、“認定までの期限”なので、太陽光発電を導入して発電を開始する予定がある方は、早めに申請しないとせっかくのチャンスを逃してしまうかもしれません。
事業を立ち上げたばかりですと慣れない手続きに時間がかかることもあります。ぜひとも手続きの準備を早めに行っておきましょう。