太陽光発電の余剰電力

太陽光発電の余剰電力を捨てることを避けるには?徹底解説

住宅用太陽光発電を屋根に設置して、日によっては発電した電力をすべて消費しきれないこともあるでしょう。昨今は、FIT(固定価格買取)制度による電力の買取価格が年々低下しており、なるべく自家消費した方がいいと言われています。とはいえ、昼間外出して不在の場合など、どうしても使いきれず電力が余る、いわゆる余剰電力が生じてしまいます。
余剰電力を電力会社が買い取ってくれるのは知っていても、具体的にどういう仕組みなのかイマイチよく分からない方もいるはずです。そこで今回の記事では、太陽光発電の余剰電力について詳しく解説していきます。

太陽光発電で発電した余剰電力はどこへいく?

余剰電力の仕組みを把握するうえで押さえておくべき点は、「電気は電圧が高いところから低いところへ流れる」ということです。太陽光発電システムで発電した電気は101±6V、つまり最大電圧は107Vになります。一方、電線を通じて私たちの家庭に送られてくる電気は100Vです。
パワーコンディショナーで直流から交流に変換された電気は分電盤に送られ、各部屋やフロアに分けられます。この時、電線から伝送される100Vの電気より、発電した電気の方が電圧が高いため、優先して消費される状態となります。
たとえば、太陽光発電が稼働中、エアコンをつけっぱなしにすると、発電した電気がエアコンに流れ続けるといった具合です。分電盤で瞬時に電気が分配され、なお余っている状態ですと、通常とは逆の流れで電線に流す動きが起こります。高い電圧の電気が、低い電圧で流れている電線へと流れ込み、電力会社に売電することになります。売電用の電線が別途用意されているわけはないため、「電圧が高いところから低いところへ流れる」という大前提が重要なのです。

発電した電気の電圧を高める役割を担っているのはパワーコンディショナーですが、同時に「電圧上昇抑制」という機能も備わっています。電気事業法にて、「標準電圧100Vの場合は101Vの上下6Vを超えない値」と定められており、電圧を108V以上にすることは認められていません。電線内の電圧が100Vなら、発電した電気の方が優先的に消費され、余剰電力を流すことも可能ですが、もし107Vで同じ場合は売電ができなくなるのです。なお、電線に逆流した電力は、売電した住宅の近所の家に伝送されるケースが多いようです。

太陽光発電の余剰電力を捨てるとはどういう状態?

太陽光発電においては、せっかく発電した電気を捨てるという状況もしばしば起こります。なぜ電力を無駄にするような行為が多くの発電所で行われているのでしょうか。具体例として、出力量5kWのパワーコンディショナーと発電容量5kWの太陽光パネルを設置したとしましょう。この場合、太陽光発電が最大限発電して、5kWの電気を生み出した時でも、パワーコンディショナーですべて変換して家庭内に給電されます。
しかし、太陽光パネルが容量の上限まで発電するケースは、そうそう起こりません。朝方や夕方の時間帯は総じて発電量が少なくなり、真っ昼間でも太陽の一部が雲に隠れていると、やはり減ってしまいます。せっかくパワーコンディショナーが出力量5kWの機能を持っていても、いわば“持て余す”状態が続く可能性があるわけです。
そういったロスを少なくするため、パワーコンディショナーの出力量よりも太陽光発電の設置容量を大きくすることを、過積載といいます。過積載をすると、ピーク時(12~14時頃)は、発電量が出力量の上限を超えることもあります。超過した分の電力はパワーコンディショナーから出力されず、いわば捨てられる状態となるのです。それでも、ピーク時以外の発電量が底上げされるため、全体を通してみると発電量が増加し、効率が良いと評価されています。太陽光パネルにかかる初期投資が増える点と、一定の過積載率を超えるとパワーコンディショナーのメーカー保証が効かない場合があることは覚えておいてください。

余剰電力は蓄電池に蓄えたり、電力会社に預けたりすることが可能?

余剰電力の活用方法として最も効率的なのは、蓄電池に電気を溜めておき、夜間など太陽光パネルが発電できない時に消費するというやり方です。太陽光発電システムと併用することで大きな相乗効果を生む家庭用蓄電池ですが、導入するには100万円~200万円程度かかります。当然、費用面で厳しいという方もいるでしょう。
そういったケースでは、再生可能エネルギーお預かりサービス、通称「仮想蓄電池」を検討してみることをお勧めします。東京電力など大手電力会社のほとんどがこのサービスを開始しており、簡潔に言えば余剰電力を電力会社に預けることができます。ただし、電力会社が大量の蓄電池を管理しているわけではなく、送配電網に逆潮流された後、第三者のもとに伝送されています。仕組みとしては、余剰電力を預けたものとみなし、購入する電気量から相殺して電気料金を割引くものです。
東京電力の「再エネおあずかりプラン」ですと、月額料金は4,000円、預かる上限電力量は250kWh/月と定められています。いくら電気料金が削減できるからといって、無制限に預けることはできず、一方でサービスをフルに利用しなくても月額料金は固定です。また、蓄電池の主たる目的とされる、自然災害や停電など非常時のバックアップ電源としての機能はありません。送電がストップすると、そもそも電力会社から電気が供給されず、停電を避けられません。万が一の備えを優先的に考える場合には、蓄電池を購入するほうが良いでしょう。

まとめ

太陽光発電を導入するにおいて、余剰電力をどう考えるかは非常に重要なポイントです。過積載をして最大限発電量を増やすか、パワーコンディショナーへの負荷や電力を捨てることを避ける方針にするのか、人それぞれ判断が分かれるところでしょう。冒頭でもお伝えした通り、売電価格が下がる傾向にある以上、いかに余剰電力を出さず自家消費するかが大切になってきます。「仮想蓄電池」も非常に便利なサービスですが、月額料金が必ずかかってしまうので、利用者全員が得をするとは言い切れません。「電圧が高いところから低いところへ流れる」という仕組みを覚えておくと、太陽光発電に限らず電気にまつわる話で、理解しやすくなると思います。このポイントをぜひとも忘れないでください。


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