コラム

水素エネルギーの分野において将来性の高い企業を調べてみた

水素関連企業

環境問題が世界全体で重要なテーマとなっている現代において、「新時代のエネルギー」として注目を集めているのが水素エネルギーです。今後さらに注目度を高めていくとなると、ビジネス方面のおける影響も気になってきます。水素エネルギーが今後普及していく過程で、どのような企業が成長していくのか、将来性が見込めるのか、本記事では水素エネルギーに関わる企業の今後の見通しについて解説していきます。

水素エネルギーとは?水素事業の将来性について

ビジネスシーンにおける水素エネルギーを巡る動向を知るためには、そもそも「水素エネルギーとは何か?」を知っておく必要があります。簡単に言えば、水をもとに作ることができるエネルギーのことです。よく知られているように、水の元素記号は「H2O」ですが、この水素(H2)と酸素(O2)を反応させることによって、エネルギーを生み出すことができるのです。しかも、このエネルギーを生み出し、使用する際に二酸化炭素を排出しないため、環境にも非常に優しいエネルギーとして注目を集めているわけです。

そうなると、この水素エネルギーがビジネスシーンに及ぼす影響力として、エネルギー関連の企業と水素を作り出す装置を製造する企業、さらに製造された水素を運搬する輸送関連の企業などが候補として挙げられます。今後、水素エネルギーの市場拡大に合わせてこれらの企業が躍進し、さらにその影響を受ける形で関連企業の業績が伸びていく可能性があるというのが、現時点における水素エネルギーのビジネスシーンの関係を巡る構図と言えるでしょう。なにしろ水を原材料に作ることができるわけですから、どこででも作ることが可能です。となると、大量に製造した水素を必要な場所に輸送できる環境の構築が求められます。そのため、一見すると直接関係がなさそうな企業が、水素エネルギー産業への参入によって大きな躍進を果たす可能性も秘めていることになります。水素エネルギーがビジネス・産業にもたらす影響と将来性をうかがうためには、広い視点で見ていくことも求められるわけです。

水素で伸びる企業はどこ?今後の成長・躍進が見込める企業

もともと日本の水素エネルギー関連の技術は、世界的に見てもトップクラスにあると言われており、すでに優れた実績を挙げている企業もあります。今後の成長・躍進が見込める企業として、こうした「すでに成長の土台ができている」企業を見ていくべきでしょう。

例えば、三菱重工は東邦ガスと共同で水素と都市ガスを使用したエネルギー生成の開発を行っており、すでに水素が混ざっている率(水素混焼率)が35%にも達する発電を試験において成功させています。この混焼率をさらに高めていきつつ、実用性の向上を目指していくことで、今後大きく業績を伸ばしていく可能性があります。三菱重工、東邦ガスともに、今後の動向が見逃せません。

将来的な実用を目指して、水素発電の実証を開始している企業もあります。例えば、火力発電でよく知られている国内最大規模の発電会社JERAが、水素エネルギーの活用を目指した実証を開始しています。この実証では、水素とアンモニアをうまく取り入れることで化石燃料の比率をできるだけ下げる発電環境の構築が主な目的となっており、最終的には火力発電でありながらCO2の排出量をゼロにする「ゼロ・エミッション火力」の開発を目指しています。
火力発電なのにCO2を排出しない…にわかには信じがたい話ですが、本格的に取り組んでいる以上、可能として行っているはずです。今後に期待大と言えるでしょう。

化学産業における水素エネルギーの存在も見逃せません。この業界では原油を使用する際にCO2を多く排出しているため、よりクリーンなエネルギーへの転換が急務となっています。例えば、旭化成では世界最大規模のアルカリ水電解システムをすでに運用しており、今後原油をこうしたクリーンなエネルギーへと切り替えていくことを目指しています。同じく、日揮でもCO2を排出しない水素を活用したアンモニアの製造の開発に取り組んでおり、今後の展開が期待されます。
水素製造関連では岩谷産業の存在が見逃せません。なにしろ、この企業は国内では唯一の液体水素メーカーなのです。1941年に初めて水素販売を開始し、その後液体水素の分野でシェア100%と、まさに独壇場の実績を誇っています。水素エネルギーへの関心の高まりと実用化の動きが今後加速していけば、この企業は間違いなく有力な成長企業として無視できない存在となるはずです。

さらに、自立型水素ネルギー供給システムを開発・製造している東芝エネルギーシステムズ株式会社、オンサイト型コンパクト水素製造装置の「HYSERVE」を開発・製造している大阪ガス株式会社、さらに高純度水素製造装置を開発・製造している住友精化株式会社なども、水素製造メーカーの中で今後の成長が見込める存在として名前を挙げることができます。
ただし、この水素製造関連のメーカーに関しては、どのメーカーの装置が競争に勝ち抜くことができるか、まだ未知数な面もあり、各メーカーと市場、両方の今後の動向をこまめにチェックしながら評価をしていく必要がありそうです。

製造された水素の輸送に関しては、川崎重工が非常に積極的な動きを見せています。2019年には、液化水素を輸送することができる世界初の運搬船「すいそ ふろんてぃあ」の建造に成功しています。これは大量の液化水素を運搬できるだけでなく、水素の体積を大幅に縮小(約800分の1)させることで、効率の良い輸送力も実現しています。
水素エネルギーがさらに普及していく過程においては、いかに水素を大量かつ安全に輸送することができるかが非常に重要なテーマとされています。このテーマの解決を目指すうえで、川崎重工は間違いなく一歩リードした存在となっており、当然のことながら今後の躍進も期待できるでしょう。

水素エネルギーと日本企業の将来性および今後の課題について

先述したように、水素エネルギーに関連した技術に関しては日本は世界でもトップクラスの水準にあり、このエネルギーが世界のエネルギー産業で大きな位置を占めるようになれば、国内経済の活況にも結びつくことが期待できます。その意味で、今回挙げた企業は日本経済の将来性をも担っていると言っても過言ではないかもしれません。
ただし、水素エネルギーに関してはまだまだ解決すべき課題が多々あります。何度か触れてきた安全かつ効率のよい輸送手段はもちろん、製造コストをさらに下げないと実用には使えませんし、さらに水素の輸送と水素エネルギーの供給両面におけるインフラ環境がまだまだ十分に整備されていないというのが実情です。せっかく水素エネルギーを作り出しても、必要な場所に供給できなければ、宝の持ち腐れで終わってしまいかねません。単に水素と水素エネルギーを生み出す技術や装置の開発だけでなく、水素エネルギーを社会全体で有効に活用できる環境も整えていく…これがうまくできるかどうかが、産業・ビジネスとしてこのエネルギーを有効に活用できるかの鍵ともなりそうです。

まとめ

地球温暖化をはじめとした環境問題が深刻化している以上、その有力な解決策ともなる水素エネルギーは、今後も積極的な研究・開発が進められていくことは間違いないでしょう。市場としては非常に有望です。しかし、今後どのような形で水素エネルギーの普及が進められていくかについてはまだまだ未知数な面が多く、この分野全体の動向を見極めつつ、将来性が期待できる企業の今後の展開をチェックしていく姿勢が求めらそうです。