太陽光発電設備を運営する過程で、「もっと発電量を増やしたい」と考えたことはありませんか?自宅の屋根や土地を効率的に活用する方法として、太陽光パネルの増設という選択肢が人気です。太陽光パネルの設置枚数を増やすことで、発電効率をアップさせることができます。
ただし、増設に関しては必ずしもメリットばかりではありません。注意すべき点も把握しておかないと、せっかくの増設も恩恵が少なくなってしまう恐れがあるからです。
そこで、太陽光発電の増設について、これから詳しく解説していきたいと思います。
太陽光発電のパネルの増設は禁止されているって本当?
太陽光発電を長期間にわたり運営する方は、増設は事実上禁止されていると認識しているかもしれません。なぜかというと、FIT制度(固定価格買取制度)の認定を受けた発電設備は、太陽光パネルの積み増しを厳しく制限されているからです。経済産業省・資源エネルギー庁は、稼働済みの太陽光発電所にパワーコンディショナーの定格出力を変えずにパネルを積み増すことに対し、「稼働後に価格の下がったパネルを積み増すのは倫理的に問題があり、規制の対象にすべき」と意見を出し、2017年に法改正が施行されました。
太陽光発電の売電価格は、FIT制度が開始した当初が一番高く、年々下がり続けています。当時は、太陽光設備システムの導入費用も高かったのですが、その価格が低下するのにあわせて、売電価格も下がってきました。
たとえば売電価格が1kWあたり38円だった2013年に認定を受けた設備に、5年後太陽光パネルの積載量を2倍に増やすとします。本来なら2018年は1kWあたり26円に減るはずなのに、増設した分も含めて38円で買い取ってもらえることになります。新たに認定を受ける方より、既存の設備に増設する方が電力を高く売電できるのは、不公平に感じますよね。そういった背景から、経済産業省は認定取得後のパネル容量変更に制限をかけることにしました。
●既存の主力が10kW未満で、増設により10kWを超える場合
●既存の出力が10kW以上で、認定出力がわずかでも向上する場合
●既存の主力が10kW以上で、3kWもしくは3%を超える増設をする場合
上記の範囲を超える場合、売電価格がその年の価格に引き下げられるのです。増設分が3%以上だと単価変更の対象になるため、事実上禁止だと認識されてきました。完全に禁止、ではありませんが、メリットが薄れるので事後的な増設はさほど推奨できません。
太陽光発電のパネルの増設費用は実際どれくらい?
太陽光発電システムの増設には、新たな太陽光パネルだけでなく、架台や配線工事、足場代など、新設工事と同様に様々なコストがかかります。住宅用太陽光発電システムの平均設置費用は、既築の場合、2024年時点でおよそ28万円/kWです。よって、仮に3kW分増設するためには、約84万円の費用が必要です。
容量10kW以上の事業用太陽光発電ですと、設置費用の相場はもう少し安くなります。設置規模や設置場所、また施工業者によっても費用に価格差が生じるものの、10kW以上50kW未満だと約24万円/kW、50kW以上250kW未満なら18万円/kWと、規模が増大するほどコスト単価は低下する傾向にあります。
増設にかかる費用は、決して安くないです。本当に増設するメリットがあるのか、先ほど説明した制限を超えて売電価格の引き下げになるか否か、をしっかり検討してから判断しなければなりません。一方、FIT認定を受けていない自家消費用太陽光発電は、自由に増設して問題ないといえます。
太陽光発電パネルの増設は補助金の対象になるの?
太陽光発電システムを新規導入する際に、自治体などから補助金が給付されることは、よくご存じかと思います。それでは、太陽光パネルを増設する時でも補助金を貰えるのでしょうか。
自治体によって制度が異なるものの、設置の際に給付された補助金と、補助金上限額との差額を受け取れるところもあります。予算の都合などの理由で、出力容量を小さめに設置すると、補助金自体は貰えても、容量に応じた金額しか受け取れません。たとえば5kW分まで補助金が出るとして、当初は3kW設置し、増設でさらに2kW積み増しすると、2kW分の差額が給付されるイメージです。
通常、導入時より増設する容量の方が大きくなるケースはないため、補助金の額は小さく感じるかもしれません。しかし、増設もかなり費用がかかるので、補助金を上手く活用するのは大切です。
ちなみに、蓄電池を後付けするケースだと、補助金の申請ができる場合が多いです。経済産業省・資源エネルギー庁が「家庭用蓄電池等の分散型エネルギーリソース導入支援事業」を実施するほか、「子育てエコホーム支援事業」や各自治体の補助金制度もあります。先に太陽光発電を設置してしばらく動向を見たあと蓄電池の設置を検討する時は、自分に適用される補助金がないか確認を忘れないでください。
まとめ
太陽光発電の増設は、発電効率を向上させる方法として重要ですが、容量10kW以上の事業用太陽光発電だと売電単価が低下するリスクもあります。将来的には、FIT制度の売電価格の低下は緩やかになると想定され、このデメリットは小さくなると考えられます。とはいえ、「あとから増設しようかな」と考えるぐらいなら、新規導入する段階で敷地面積をフル活用するほうが、あとから後悔する可能性は小さいのではないでしょうか。
増設のためには、太陽光パネル以外に工事や足場の費用もかかります。ただ発電量を増やすために増設するのではなく、本当に収益が増えるのか、費用対効果を十分に考えて判断しましょう。