コラム

テスラのリコール状況や故障の起きやすさについて調査してみた

イーロン・マスクが経営する「テスラ」という企業は、自動車に関心がない方でも一度は聞いたことがあるでしょう。電気自動車(EV)市場において世界を牽引する存在であり、イーロン・マスクは時代の寵児として多くの話題を振りまいています。ただし、テスラに関して必ずしも良いニュースばかりでなく、ネガティブな報道も少なくありません。特に、リコールが多い企業として認識される側面もあるのです。
最先端の電気自動車を提供するイメージがあるテスラですが、故障が多いという話は本当なのでしょうか。その実態に迫ってみたいと思います。

テスラはリコールが多い?内容について解説

テスラは、2023年末から2024年上半期にかけて、複数回に及ぶリコールを実施しています。2023年12月、テスラ車に装備されている運転支援機能「オートパイロット」を、ドライバーが誤って使用するのを防ぐ対策が不適切だと判断し、アメリカの国家道路交通安全局(NHTSA)主導のもと、約200万台のリコールを報告しました。これは同社にとって過去最大規模のリコールとなり、「モデルS」「モデルX」「モデル3」「モデルY」 ほぼ全ての車種が対象でした。
「オートパイロット」の問題が解決した矢先、2024年2月、再びテスラは大規模なリコールを行うことになります。今度は警告灯の表示文字の大きさが不十分だとNHTSAが指摘しました。「フォントサイズが小さいと計器パネル上の重要な安全情報を読みづらくし、衝突のリスクを高める可能性がある」といい、リコール対象はおよそ220万台です。前述の過去最大数をあっさり更新してしまったのです。

2024年4月には、電動ピックアップトラック「サイバートラック」のリコールが発生します。「アクセルペダルのパッドがペダル上部の内装のトリム部分に挟まり、ペダルの性能と操作に影響が生じている」と報告され、約4000台がリコールとなっています。
NHTSAの調査によれば、生産ラインのいずれかで石鹸を使用していたそうです。アクセルペダルのパッドをペダルに取り付けやすくする目的でしたが、パッドが外れやすくなるという逆効果を生み出します。リコール発表以前に、サイバートラックの所有者がSNSでこの問題を投稿し、危険だと批判が集まっていました。

極めつけに、2023年12月に発表したリコールについて、対応が適切だったか否かNHTSAが調査を開始したとの報道も出ました。リコール後も複数の事故が発生しており、リコールが適切に行われていなかった疑いが発生したからです。現状テスラ車はリコール発生が常態化しているといっても過言ではありません。

テスラのリコールがおこったらどこへ行けば良い?

テスラ車に関して、今後もリコールが起こる可能性は十分あります。では、もしリコールが発生したら、顧客側はどのように対応すればいいのでしょうか。
実は、テスラは原則として、“OTA”によるソフトウェアアップデートで問題解決を図っているため、所有者は特に何もする必要がありません。OTAとは、「Over the Air」の略称です。ケーブルをつなぐことなく、インターネットを経由してソフトウェアを更新できる技術です。無線通信環境を確保しておけば、テスラがソフトウェアをアップデートして、車両トラブルが自動的に改善されます。

従来のガソリン車ですと、車両が故障した際は、担当のディーラーのところに訪れる、あるいは整備工場やカー用品店で修理してもらうといった選択肢がありました。顧客が自ら出向くのが当たり前だったのですが、テスラでは車載通信機の搭載によってソフトウェア更新が容易にできます。
2024年6月時点で、全国にテスラ販売拠点は12箇所あります。試乗体験など、購入を検討するために行く場所となっており、納車後は基本的に足を運ぶ機会が殆どないのです。
万が一、部品などが故障した時は、なんとテスラのスタッフが顧客のもとに駆けつけて修理を行ってくれます。もしくは、該当の部品を送付して、自分で付け替えるというDIYのような選択もできます。いわゆるコネクテッドカーは、ソフトウェアの更新頻度が高くなっても顧客に負担をかけず、常に最新の性能を提供することが可能です。こうしたソフトウェア主体の自動車が将来一般的になると言われています。

日本でのリコール状況について解説

上述したテスラのリコール案件は、アメリカ本土における事例でした。現在は日本でもテスラ車を愛用する方が増えており、国内においてもリコールが発生しています。
2024年2月、バックカメラ (後退時車両直後確認装置)の過去に配信されたアップデートプログラムの設計が不適切だったことが判明しました。通信が不安定になり、バックカメラの画像が表示されず、後退時車両直後確認装置の基準を満たさないという理由です。
同年3月にも、車両接近通報装置が正しく動作しない不具合があるとしてリコールの届け出がありました。車両接近通報装置はEVやHEVなど電動車に取り付けが義務付けられている装置です。車体の接近を歩行者に知らせる通報音は、事故を起こさないために必要不可欠なものです。アップデートプログラムの設定が不十分だったため、音が流れなくなる不備が生じました。
このように、日本でも度々テスラのリコールはおきています。しかし、ソフトウェアのアップデートの配信により対応する方法が取られ、修理の手間は原則不必要です。

まとめ

テスラのリコールの多さに驚いた方も多いのではないでしょうか。同社が注力する電気自動車市場は、今まさに成長過程の真っ只中です。日々研究開発が進んでおり、新しい仕様・プログラムが次々に登場してきます。
テスラは、実証実験に時間をかけてサービス提供が遅れるより、常に顧客に最新のソフトウェアを提供し、運転を楽しんでもらおうとする思いが強いように感じます。リコールが起きても、原則ソフトウェアを修正してデータを配信するだけで問題は解決するからです。よって、リコール件数が多いとしても、顧客の立場としてさほど気にする必要はないと考えていいでしょう。