太陽光発電の設置をこれから導入、あるいは投資を検討する方は、キュービクルという言葉を耳にする機会があるかもしれません。日常生活ではあまり聞き馴染みが無いものですが、実は電力にまつわる非常に重要な機器なのです。キュービクルとは一体どのような仕組みで、太陽光発電においてどんな役割を果たすのでしょうか。この記事では、太陽光キュービクルについて、メリットやコスト、勘違いされやすいパワーコンディショナーとの違いなどを解説していきます。
太陽光発電のキュービクルの概要と仕組み
キュービクルとは、正式名称を「キュービクル高圧受電設備」といいます。発電所から変電所を通して送られてくる電気の電圧は6600Vですが、このままでは使用できません。私たちが電気を使えるようにするためには、100Vか200Vに変圧する必要があります。つまり、電圧を変えることがキュービクルの役割です。
とはいえ、一般家庭にキュービクルが設けられているかというと、ほとんどの住居には無いでしょう。置く必要がないからです。電気を利用するためには、「高圧受電契約」と「低圧受電契約」いずれかの契約をしなければなりません。一般家庭では通常、低圧受電契約をします。高圧受電とは50kW以上の電力ですので、大量に電気を消費する施設や工場などが対象となります
高圧受電契約では、電力会社を通さず、受電設備のキュービクルを自前で用意して、電気を引き込みます。ビルや工場に行くと、”変電設備”と書かれたシールが貼られた物置きのような構造物が設置されているはずです。あれがキュービクルです。大容量の電力を引き込むだけでなく、メガソーラーなど大規模な太陽光発電所が売電する際、変換した電力を高圧にして電力会社に送る役割も持っています。
どうして低圧受電契約でキュービクルが不要かというと、電柱などに設置される電力会社の変圧設備を通じて、100Vや200Vに変圧した状態で電力が送られてくるからです。電力会社が変圧してくれる分、電力単価は高圧受電設備よりも高くなる傾向にあります。キュービクルは「自家用電気工作物」に該当し、設置には電気事業法で定められた条件を満たさなければいけません。そのうちの一つが、”電気主任技術者”の選任です。大量の電気をたえず受電し続けるキュービクルを適切に管理すべく、専門的な知識を持つ者がメンテナンスなどを担当する規定なのです。また、周囲の建物と3メートル以上間隔を空けて設置するという決まりもあります。
キュービクルとパワコンとの違いについて
太陽光発電システムを導入する際には、必ずパワーコンディショナーを設置しなければいけないことは、ご存じの方も多いと思います。キュービクルとパワーコンディショナーの役割について混同しないよう、ここで違いを説明しましょう。
パワーコンディショナーは、太陽光パネルが生み出した「直流電力」を「交流電力」に変換する役割を担っています。家庭で利用する電気は、すべて交流です。直流のままでは、コンセントにプラグを差し込んでも電気を使えません。
対してキュービクルは、高圧の電力を低圧に変換する機能を有しています。送電する時には、電圧が高い方が途中でロスするエネルギーが少なくなるといわれています。そのため、発電所で作られた電気は、50万Vや27万5000Vなどの高圧で送られ、変電所で6600Vまで電圧を調整して、家庭や施設に送られます。効率よく送電するためにも、キュービクルが必要になってくるわけです。
先程も言及した通り、メガソーラーなどの発電所を運営する場合には、キュービクルとパワーコンディショナー両方の設置が必要です。”高圧”は50kW以上と定義されるので、10kW未満の住宅用太陽光発電では不要となります。
キュービクルの価格はどれくらい?
高圧受電契約をする施設が設置が求められるキュービクルですが、とても高額な製品です。規模によって差があるものの、本体価格100~500万円が相場とされています。この金額に、設置費用が上乗せされるほか、メンテナンス費用も発生するため、導入には数百万円を用意しなければいけません。こんな高額なキャッシュをすぐには用意できないという場合には、中古のキュービクルを選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。新品に近い中古品なら、10年以上使用することもできます。キュービクルの中には、電力需給用計器用変成器、負荷開閉器、過電圧地絡継電器、売電用電力量計などが収められており、法定耐用年数は15年です。
太陽光発電設備の耐用年数(寿命)は25年前後といわれるため、もし20年以上発電を続ける際には、キュービクル内の機器を取り替える時期が必ず来ると考えられます。電気主任技術者の選任が難しい場合には、業者に依頼して保守管理を委任することも可能です。キュービクルを設置する工場や建物なら、それなりの資金を確保できるかと思いますが、これから導入予定の方は頭に入れておくようにしてください。
まとめ
キュービクルという名称自体に馴染みがなくても、街中を歩いていると実は至る所に設置されていることに気付くはずです。高圧受電契約をすると、電気の単価が安くなり大量に利用できるので、設備導入コストを考慮してもお得になるのではないでしょうか。一方、一般家庭は設置の必要性がありません。費用の心配もしなくて大丈夫です。もし太陽光発電投資を検討して50kW以上の発電所を運営する予定の方は、キュービクルについてしっかり理解して、導入手続きを行うようにしましょう。