コラム

EV(電気自動車)は課題が山積み?主な課題を3つ解説

EVのメリット3つ

持続可能な社会の実現に向けて、脱炭素の取り組みが幅広く行われていますが、脱炭素に向けた特徴的な取り組みのひとつがEVへのシフトチェンジです。EVは従来の内燃機関を搭載していない車なので排気ガスが排出されません。温室効果ガスなどの排出量削減の実現に向けて注目されている車なのです。
日本は2035年までに新車で販売する自動車をすべてEVにすることを目標としています。目標の実現に向けて動き出しており、EVの販売台数も前年比でみていくと上昇傾向にあります。一方でEV以外の販売台数も依然として多く、実態と目標の乖離も否定できません。EVの普及が必ずしも進んでいるとはいえない現状の背景の一つにEVが抱える課題があるのです。

EV(電気自動車)の様々な環境の問題

バッテリーに由来する課題

EVは排気ガスを排出しない車で、脱炭素社会の実現の上で重視されています。一方で電気自動車の部品のリサイクル体制の確立がなければ、EVの普及は難しいものとなってしまいます。
EVは車載されているバッテリーを電源として駆動します。このバッテリーにはリチウムやニッケル、コバルトなどのレアメタルが原材料として含まれています。レアメタルは埋蔵量が少なく、流通量も多くありません。レアメタルを再利用することもまた環境を維持する上で求められているのです。また、バッテリーには寿命があり、安定的な走行のために交換をしなければならない場合も起こりえます。仮に蓄電池として再利用できなくなったとしても、バッテリーの原料を再回収する技術も重要です。EVが普及していくためにはバッテリーのリユース・リサイクル体制を確立させていくことが課題の一つです。バッテリー再利用の課題がクリアできれば、EVは使い込んだ後も資源として再利用できるようになり、一層魅力的な車になるのではないでしょうか。

インフラ整備の課題

バッテリーの再利用の課題に加えて、EVが安定的に走行できる環境を整備することも普及させていく上では重要です。EVの航続距離は年々伸びていってはいるものの、EVはガソリン車と比較して航続距離が短い傾向があります。街中で充電が切れかかっていても、ガソリンスタンドで給油するように、充電できるスポットを相応に確保することが求められます。
現在でも商業施設や宿泊施設などに充電スポットは設けられているものの、ガソリンスタンドには及びません。また、一般の充電器よりも短時間で充電できる急速充電器の普及も必須です。急速充電器は高速道路のSA・PAを中心に設置されています。しかし、地域差が大きく、全国的に普及させていくことが今後の課題となっています。なお、政府は政策としてEVの充電施設の増設について期限と数を提示したうえで取り組んでいます。充電施設不足の課題は徐々に解消されていく見込みです。

経済面から考える日本でのEV(電気自動車)普及に向けた課題

補助金制度が設けられているものの…

EVはその値段の高さもネックとなります。様々なものが値上がりする現在、消費者が買いづらいと思うのも無理はないでしょう。日本ではEVの普及に向けて購入者を支援する政策が行われています。その一つが補助金制度で、EVが環境に配慮した車であるとして国や自治体から補助金が給付される場合があります。
ガソリン車と比較して車体価格が高い傾向にあるEVですが、政府からの補助金と自治体の補助金を組み合わせれば、実質ガソリン車並みの価格で購入できることも。しかし、後払いでの支給となるので注意が必要です。補助金はEVを購入した後に所定の申請をすることで後日振込という形で給付されます。したがって、購入時にはEVの車体価格分の費用に近いお金を用意しておかなければなりません。

補助金の制度によっては支給条件として購入後一定期間の所有などの条件が課されることもあるようです。条件を満たせなければ返却を求められる場合があるので、購入者も慎重に検討しなければならない実態があります。補助金の制度は設けられており購入の支援を受けられる一方で、運用面で課題が残っている点もまたEVの購入を踏みとどまらせている可能性があるのではないでしょうか。

日本の自動車市場の特異性

日本の自動車市場ではEVよりもHV(ハイブリッド車)を重視してきた経緯があります。HV優位と言う、ある種特異な市場もまたEVの普及を難しくさせている可能性があります。日本メーカーは環境に配慮した車としてハイブリッド車の開発に投資してきました。現在でも新車販売台数の中で一定割合を占め、市場の中で存在感のある車種のひとつです。すでに環境に配慮された車としてハイブリッド車が広く流通している市場の中で、いかにEVにシフトしてもらうかというのもまた課題となっています。ガソリン車やディーゼル車からEVではなく、HVに乗り換えるというユーザーもいます。HVに乗り換えようとしているユーザー、HVに乗っているユーザーEVにどのように誘導していくかも考えなければならないでしょう。

デメリットから想定できるEVが普及しない理由

EVは環境に配慮された次世代の自動車として様々なメリットがあります。環境性能というのが特筆されるポイントのひとつで、走行中はCO2や排気ガスが発生しません。また、補助金制度が設けられており、維持費もガソリン車と比べて安い傾向にあるもの有難いのではないでしょうか。EVであれば、場所によっては駐車場料金の割引を受けられたり、自動車の減税が受けられることも。非常時には自動車のバッテリーを電源として使うこともできます。様々なメリットがある一方でデメリットがあることも否定できません。

従来のガソリン車とは異なる車体であるが故の懸念

まずは充電に時間がかかってしまうことです。急速充電であっても、80%まで到達するのに30分程度かかってしまいます。自宅の電源設備を用いれば満充電まで半日以上かかることも。ガソリン車はガソリンスタンドによる手間があるものの、作業時間としては数分で完了します。充電スタンドの確保は集合住宅などであればより一層導入のハードルが高くなります。入居者での話し合いが必要となり、合意を形成しなければならないからです。さらに、バッテリーが切れるのは避けなければなりません。モーターの制御を電子的に行うEVは電気の供給がなくなればロックされ、動けなくなってしまいます。バッテリー切れでロードサービスを呼ぶにしても、安全な場所に退避することができなくなる可能性があります。運転する際はバッテリー残量を常に意識しなければなりません。

購入時においてはまだまだ車種が少ないことも挙げられます。自動車市場では新入りの部類で、ガソリン車と比較して選択肢は多くありません。また、相当改善してはいるもの、車種によってはまだまだ中古市場での存在感が低く、売却しても思っていたほど高くは売れない可能性があります。車種やリセールバリューについては、市場の拡大に伴って改善が期待できるでしょう。ガソリン車とは異なる特性ゆえに発生するデメリットがあるため、なかなか普及しないという可能性もあるでしょう。

まとめ

EVは主にバッテリー面の課題と費用面の課題を抱えていることが分かりました。国として目標が掲げられている以上、その実現に向けて今後も取り組みが続けられていくことでしょう。今後の動向を注視していきましょう。
持続可能な社会の実現に向けては、一人一人が自分にできることを考え、行動していく必要があります。その手段の一つとして車を使うならEVなど環境に配慮されたものを購入するといった方法も想定できるのではないでしょうか。