EV(電気自動車)は価格が高い印象もあり、それが普及の妨げになっている面もあります。その一方で税金面では優遇されていて、得なのか損なのかわかりづらい面もあります。今後、自動車に関する税制度の変更も予想されており、「それが電気自動車の普及にも影響を及ぼすのでは?」との意見も見られます。そこには「ガソリン車と比べて税制が優遇されているのは不公平ではないか?」という不満の声も背景にあるようです。
本記事では、そんな電気自動車と税金の関係について触れていきます。
電気自動車の税金を比較してみた
従来のガソリン車と比較して、電気自動車は税制面で優遇措置を受けています。理由は、電気を主な動力としているので環境に優しく、環境問題が深刻化している現代社会により「適合した」乗り物と位置づけられているからです。税制上の優遇措置を設けることで、電気自動車の普及を促しているとも言えるでしょう。
自動車を購入・所有することによって、自動車税と自動車重量税、さらに環境性能割の3種類の税金を支払う必要が出てきます。このうち環境性能割に関して、電気自動車は2025年末まで非課税に設定されています。この税金は車の購入時に納税するもので、この非課税期間内に購入すればまったく支払わないで済むことになります。環境性能割は購入価格の1〜3%程度です。他のガソリン車などに比べると、実質その分安く購入できると考えることができるでしょう。
一般的な自動車税では、総排気量によって税額が決定されます。排出する排気量が多いほどより多くの税負担が求められるわけですが、そもそも電気自動車には排気量の概念がないため、税負担が安くなります。この点は、優遇というよりも有利と言うべきでしょう。
電気自動車は排気量「1,000cc以下」の扱いとなり、もっと安い税額(2万5000円)で済みます。例えば、「1,000cc超1,500cc以下」の区分での3万500円、「1,500cc超2,000cc以下」の区分での3万6000円と比較すると、いかに安いかが理解できるのではないでしょうか。
しかも、購入した初年度に関しては「グリーン化特例」が適用されて6,500円で済みます。車の総排気量によっても変わってきますが、自動車税だけを比較しても、電気自動車は他の車と比較して税の負担が数万円単位で少なくなるのです。
自動車重量税に関しては、エコカー減税が適用されます。この税金は新車登録時と車検のときに納税する必要がありますが、電気自動車の場合には新車登録時と1回目の車検の際には免税され、さらに2回目の車検の際にも減税が適用されます。こちらは自動車税以上に優遇措置が目立っており、電気自動車を購入するうえで非常に大きなメリットと言えます。
これら自動車の関する税金を比較すると、購入してから最初の5年間の間に、電気自動車は10万円近く、負担が少なく済むことになります。電気自動車は価格が高いという印象は、こうしたメリットを踏まえたうえで再検討する必要があるでしょう。
電気自動車の軽自動車の税金について
電気自動車にかかる税金に関してもうひとつ、軽自動車にかかる分についても見ておきましょう。もともと軽自動車は電気自動車と相性が良いと言われています。あまり長距離の運転には使用されないために充電の問題が起こりにくく、車体本体の価格が安いので「電気自動車=高い」のイメージが気にならないといった理由からです。
では、税負担に関してはどうかというと、軽自動車の電気自動車においても各種優遇措置が適用されています。もともと軽自動車は税負担が少ないメリットを持ち合わせているわけですが、さらに電気自動車の減税・免税措置が適用されることでオトクになるのです。
軽自動車の場合、自動車重量税と軽自動車税、環境性能割の税金が発生します。軽自動車税に関しては初年度は免税、2年目にはグリーン化特例の適用で減税になります。2年目の税負担は通常の4分の1、2,700円となっており、約8,000円ほど安く済ませることができます。自動車重量税に関しては、普通自動車と同様、初回の車検までは免税、2回目の車検からは5,000円の税負担となります。そして、環境性能割は非課税です。購入から最初の5年間での税負担を数万円程度に抑えることができます。
まだ軽自動車の電気自動車は選択肢が限られている印象もありますが、先述した電気自動車と軽自動車の相性の良さなども考慮すると、十分購入を検討するだけの魅力を持ち合わせていると言えるでしょう。
電気自動車の税金は不公平?
このように、電気自動車はさまざな面で税制上の優遇を受けており、維持費の負担が少ないメリットを持ち合わせています。その一方で、ガソリン車の所有者から「電気自動車を購入するかどうかは本人の選択なのに、どうして税制で優遇するのか」「不公平だ」という意見もあります。そこで現在、「走行距離課税」という新たな税金の課税の可能性が話題になっています。その名前の通り、走行した距離に応じて課税される税制です。
「自動車を持つだけでなく、走らせるだけでも税金を払わなければならないのか」との不満の声も聞こえてきそうですが、この税制が取り沙汰される背景には、電気自動車の普及と税制上の優遇の問題があるのです。
先述したように、電気自動車の自動車税はもっとも低い排気量の区分に分類されており、安く設定されています。税金を徴収する側としては、今後電気自動車が普及すればするほど徴収できる自動車税が少なくなっていくことを意味します。また、電気自動車の優遇措置を不公平だと感じているガソリン車の所有者からすれば、走行距離に応じて課税されるこの制度は「公平である」と見ることもできるでしょう。
電気自動車の普及がもたらした思わぬ副産物といったところですが、実際に導入されるのか、導入されるとしたらどのような形になるのか、電気自動車のオーナーはもちろん、これから購入を検討している方にとっても気になる点となるでしょう。
2020年には「グリーン成長戦略」という目標が掲げられており、そこでは「2035年までにすべての新車販売を電気自動車にする」というかなり壮大な内容も見られます。実際に実現するかどうかはともかく、電気自動車が多数派になる時代を見越して、従来の自動車に関する税制が改定される可能性は十分に考えられるでしょう。現在の電気自動車の税制上の優遇はあくまで環境問題を見据えて普及を促すもので、充分に普及が進めば税制上の優遇がなくなっていくことも予想できます。その意味では、電気自動車は2020年代の間が「買い時」と言えるのかもしれません。
まとめ
2024年8月現在、電気自動車はさまざまな面で税制上の優遇措置を受けることができ、ガソリン車と比較して、購入後5年間の税負担額を数万円単位で安く済ませることができます。一方で、今後電気自動車の普及が進んでいくことでこの優遇が失われる可能性があること、新しい税制が導入される可能性があることも視野に入れておく必要があります。現時点で電気自動車を買おうかどうか悩んでいる方は、税制面に関しては「今がもっとも有利」であることを踏まえたうえで検討してみることをおすすめします。