コラム

ホンダのEVについて徹底解説

2023年度(2023年4月~2024年3月)における新車販売台数で第1位を獲得した「N-BOX」などを生産するのが、本田技研工業(ホンダ)です。乗用車だけでなく、二輪車も人気を集めており、街中でも度々目にしますよね。
大手自動車メーカーの一角を担うホンダですが、次世代のEV(電気自動車)については、よく知らない方が多いのではないでしょうか。海外企業に対して後塵を拝しているとの指摘も業界内から聞こえてきます。
実は、2024年後半以降、ホンダは新型EVを続々と市場に投入する計画を公表しています。そこで、同社のEV戦略や最新のEV車種についてまとめました。ぜひクルマ選びの参考にしてください。

ホンダのEV戦略は失敗?

ホンダが、「2040年までにすべての新車販売を電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)にする」と高らかに宣言したのは、2021年のことでした。脱エンジン車という大きな目標を掲げ、日本のEV産業を牽引することが期待されましたが、今のところ泣かず飛ばずなのが現実です。
2024年1月、同社初の本格的なバッテリー式電気自動車(BEV)として2020年10月に登場した「Honda e」を生産終了すると発表しました。発売から3年間の累計販売台数は、日本国内で約1800台、欧州で約1万台にとどまっています。

この数年間で、EV業界には幾多の変化が起こりました。世界市場トップの中国で景気減速により成長が鈍化するほか、欧米でもハイブリッド車(HEV)を見直し、EVからシフトする動きが加速しています。市場環境が良好ではなかったにしても、「Honda e」は事業として失敗と言わざるをえないでしょう。
また、ホンダはアメリカのGeneral Motors(ゼネラル・モーターズ)と提携して、共同開発する計画を白紙に戻します。

2022年、数百万台単位の量販型EVシリーズを世界各国で2027年以降に生産・販売するプランを立てていました。北米市場に投入した新型EV「PROLOGUE(プロローグ)」は、ホンダとGMが共同開発したEVの第一弾です。アメリカの大手企業と部品を共通化してコスト削減を図り、海外市場で勝負する意向でした。「コストと商品性で両社の考えが合わなかった」と話し、EV戦略について再度練り直すことが求められます。

とはいえ、「ホンダが描く電動化の未来像を世界に示したい」と電動化宣言していた同社は、EVから撤退するつもりはまったくありません。根本的な戦略を変えず、長期的な視点で判断していくと述べています。
「2040年に世界市場で同100%という目標値は不変で取り組んでいく」として、「2030年に先進国全体で電気自動車および燃料電池車の販売比率を40%に高める」ことが中期的な目標です。「EV市場で当社は後発」と現時点で出遅れていることは認めながらも、「顧客が必要としてくれるEVをしっかり考えて提供していく。カーボンニュートラルの潮流にあわせて、電動化を進めなければならない」と不退転の覚悟を示しています。

ホンダの軽自動車EVについて解説

前項で触れた通り、ホンダが初めて生産・販売した電気自動車は「honda e」です。こちらは軽自動車に該当しないものの、小回りの効きやすさを示す数値“最小回転半径”が軽自動車の平均を下回るなど、軽自動車と同レベルに運転しやすいモデルでした。街中での快適な運転を重視して開発された「honda e」は、販売台数が伸び悩み生産終了します。そして、ホンダは新たに軽自動車の「N-ONE」をベースにしたBEVを2025年に発売することを公表したのです。

現在、EVのデメリットとして、航続距離がガソリン車と比べて短いという点が挙げられます。軽自動車は短距離の移動を目的に使用されるケースが多く、1回の充電で走行する距離が長いか否かはさほど問題になりません。一般的な乗用車より、軽自動車の方がEVに適したタイプだといえそうです。
現行型N-ONEのデザインをもとに、高い走行性能を搭載して、多くの顧客に訴求します。価格は正式に決定していませんが、200万円前後になるだろうと推測されます。

ホンダのn-vanにもEVが登場。どんな車?

ホンダは2024年春に軽商用電気自動車「N-VAN e:(エヌバン イー)」の発売を予定していました。しかしながら先日、発売を2024年秋に延期することが公表されました。2023年にヤマト運輸と提携して、「N-VAN e」の実証実験を開始しており、販売に向けて準備を進めていただけに、残念なお知らせです。詳細な理由は明らかにしていませんが、どうやら一部の部品で量産体制の構築が遅れているためだといいます。

「N-VAN e」は、名前の通りN-VANをベースとしたEVです。新世代コネクテッド技術「Honda CONNECT」に対応し、専用アプリを通じて様々な操作をスマートフォンなどから簡単に行えます。たとえば、時間帯を指定してバッテリーを充電する、充電に使う電流量を抑制する、設定した時間までにバッテリーや車内を温めながら充電する、といったことが可能です。
バッテリーについては、一般家庭用の充電スタンドなら約5時間、全国約30,000基する充電スポットでの急速充電なら約30分で充電できます。オプション機能として、給電ポートを車外に設けて、アウトドアなどのシチュエーションで電化製品とつなげると、EVが蓄電池の役割を果たします。規格や性能は、他社のEVを意識した作りとなっており、見劣りしません。「N-VAN e:」の価格は、269万9400円~の予定です。東京都在住の方なら、補助金適用の対象となり55万円が給付されます。

まとめ

大手自動車メーカーのホンダが、2024年までにわずか1車種しかEVを生産しておらず、ほとんど売れていなかったという事実は驚きではないでしょうか。EV業界は中国やアメリカのメーカーが過当競争を繰り広げ、日本企業は存在感を示せていません。とはいえ、CO2排出量を削減してカーボンニュートラル社会を目指すべく、自動車の電動化の流れは止まらないはずです。

EV戦略が失敗したかに思えるホンダも、2024年以降、本格的にEV市場に参入します。「N-ONE」「N-VAN」といった、これまで顧客に親しまれてきたモデルをベースにしたEVですので、購入のハードルはそれほど高くないように感じます。2020年代後半、ホンダの逆襲が始まるのか注目したいところです。