太陽光発電は、気軽に誰でも始められるとよく耳にするのではないでしょうか。一度設置すれば管理も楽なので、忙しいビジネスマン向けの投資案件としても候補に上がりやすいです。一部の業者は宣言文句として、
「太陽光発電はメンテナンスフリー」
「放置しておけばいい」
なんて謳ったりしますが、必ずしもそうとは言えません。確かに、不動産投資と比較すれば手間が少ないのは事実ですが、定期的にメンテナンスをしないと太陽光パネルやパワーコンディショナーといった設備機器の寿命が短くなります。発電量をなるべく維持するためにも、適切なメンテナンスが不可欠です。ではどのようにメンテナンスを行っていけばよいのでしょうか。本コラムでは太陽光発電のメンテナンスについて解説していきます。
太陽光発電のメンテナンスは義務化されている?
2017年の改正FIT法にて、再生可能エネルギー電力の発電設備のみを対象としていたものを、発電事業計画全体を認定対象とすることに変更されました。つまり、メンテナンスをしっかり実行することを計画書に盛り込み、適切だと判断されなければ発電を継続することが出来なくなったのです。産業用太陽光発電においては、以下の項目が認定基準として定められています。
●適切な点検・保守を行い、発電量の維持に努めること
●定期的な費用・発電量等の報告をすること
●系統安定化について適切に発電事業を行うこと
メンテナンスをやらないままでいると、売電の権利が失効されてしまう可能性もありますから、メンテナンスは義務として必ずやることだと認識しておきましょう。
しかし、実は屋根などに取り付ける住宅用太陽光発電に関しては、法律で義務化が明記されているわけではありません。法的義務なのは産業用太陽光発電のみです。とはいえ、定期点検を推奨することに変わりはありません。住宅用太陽光発電向けのガイドラインには、時期ごとに確認すべき主な内容が記載されています。こちらを参考にメンテナンスをすると良いでしょう。
●設置1年目点検→初期不良の確認
●設置5年目点検→劣化・破損状況の確認
●設置9年目以降の点検(4年毎に実施)→劣化・破損状況の確認、メーカー保証期間の確認、消耗部品の交換
●設置20年目以降の点検(4年毎に実施)→劣化・破損状況の確認、設備を交換する時期の検討
メンテナンスは自分でも行える?必要な資格はあるの?
太陽光発電システムのメンテナンスを業者に依頼すると、当然ながら料金がかかります。それならランニングコストを減らすため、自分でやろうと考えている人もいるかもしれません。
結論から言うと、メンテナンスを自分で行っても違法にはなりませんが、あまりお勧めしないのが正直なところです。その理由を説明していきます。
太陽光パネルの表面は主にガラスで覆われています。長年使用する間に、鳥の糞が付着したり、落ち葉がかぶさるなど、発電効率を低下させる様々な原因が起こりうるのです。ガラスで作られている太陽光パネルは、ちょっとした衝撃で割れる可能性もあります。素人が下手に触ったり、修復しようとして、万が一傷がついたり割れてしまったら、修理費として余計な費用がかかってしまいます。設置者による点検のみでは、細かい部分の不具合を見逃してしまい、十分なメンテナンスとは言えない場合も多いです。
とはいえ、素人でも分かることはあります。パワーコンディショナーから異常な音が出ていないか、蜘蛛の巣が張られていないか。
野立ての場合、草木が生えていると小動物などがやって来て、ケーブルを噛んでしまうこともあるので、ケーブルに損傷がないかもチェックポイントです。落雷や台風などの後には、太陽光パネルに大きな傷や破損がないかも確認しておくべきです。
もしこうしたトラブルを発見した時でも、自分で直そうとしないほうがいいでしょう。素手で触れると感電する恐れや、周辺機器から漏電して火災が発生する危険もあります。すぐに専門業者に連絡して、点検を依頼するようにしましょう。身の安全を守るためにも、業者に委託した方が安心です。
せっかく大金をかけて設置した太陽光発電システムですから、自分でもなるべくメンテナンスに関わりたいという人もいるかもしれません。そういった人は、毎日発電量をモニタリングして、急激な変化、特にいきなり発電量が減少した時は何か不具合が起きた可能性が考えられます。毎日見ることで変化に気付きやすくなります。前述の通り、あくまで目視にとどめ、専門的な作業は業者に頼むようにしてください。
業者に依頼した場合の費用はどれくらい?
発電設備の設置状況や規模によって、メンテナンス費用は異なります。経済産業省が過去に発表したデータによると、太陽光発電協会などへの聞き取り調査で点検1回あたり2万円を目安としています。
しかし、定期点検を行う施工会社によってかなりバラツキがあり、年間維持費は0.3万円/kWが目安とも言われています。この数値をもとにすると、5kWの太陽光発電システムを導入した場合、年間1.5万円。4年に1度の点検で約6万円かかる計算です。
その内訳は以下の通りです。
●定期点検→7,000~8,000円/年 (4年に1回30,000円)
●メンテナンス→必要があれば実施。基本定期点検のみ
●パワーコンディショナー→22,500円/年
●保険→5,000円/年
パワーコンディショナーの平均寿命は10年から15年が目安とされているので、1年ごとに2万円ほど積み立てる前提で数値を算出しました。メンテナンスに関しては、屋根型の場合、基本的に雨で落ちるようにできています。通常、斜め30度前後で設置するので、自然に流れ落ちるわけです。屋根に設置していれば、除草作業も不要です。広大な敷地に設置する産業用太陽光発電だと、これらの手間がかかりますが、住宅用ならあまり想定しなくても大丈夫です。その代わり、足場代が別途必要となる場合もありますので、専門業者に確認を取るようにしましょう。
まとめ
住宅用太陽光発電か産業用太陽光発電かを問わず、メンテナンスは非常に大切です。投資資産としての価値を保つためにも、発電効率を維持して売電収入を伸ばすためにも、定期的なメンテナンスが欠かせません。パネル表面の汚れを放置するだけで年間1%~2%発電効率が下がるとのデータもあるぐらいですから、長い目で見ればメンテナンスをやらないことによる節約より、何倍も損をするのではないでしょうか。適切なメンテナンスが設備機器の寿命を伸ばし、より長期的に発電の恩恵を受けることができます。ぜひとも覚えておいてください。