太陽光発電システムを設置すると、いくつかの弊害が生じる場合があります。一般的によく知られているのは、パワーコンディショナーが稼働している時に発する音が気になるという「騒音」問題です。
この問題に関しては、パワーコンディショナーを屋外ではなく室内に設置することで近隣住民への影響を防ぐことが可能になるのですが、騒音以外に「ノイズ」を出すことが指摘されています。”ノイズ”とは電波の乱れを意味し、太陽光発電システムから発せられる電磁波によって他の機器に影響を及ぼすとの懸念があるのです。
実は10年程前、ちょうどFIT制度(固定価格買取制度)が開始した頃から一部専門家が危惧する声が上がっていました。それでは、太陽光発電による電磁波に関して、私たちはどのような事に注意したらよいのでしょうか。
太陽光発電はラジオにノイズを発生させる?
太陽光発電からの電磁波で特に影響が出るといわれているのが、ラジオ放送です。「不要電波がAM放送や重要無線通信への混信等の一つの要因となっている」と、かねてから一部専門家も指摘していました。
過去に起きた具体的な事例として、太陽光発電システムを工場建屋の屋上に設置した方のケースを紹介します。電力会社と系統連系してまもなく、工場の周囲道路を自動車で走行している時に、AMラジオの放送にノイズが混ざって聞き取れなくなったそうです。もしかすると原因が太陽光発電システムなのではないか、と疑いを持ったわけです。
実際にこうしたトラブルが発生したとはいえ、結論から申し上げると、通常はあまり気にしなくていいのではないでしょうか。太陽光発電システムによるノイズは、パワーコンディショナーが直流電力を交流電力に変換する際に、約3m以内にあるラジオや無線機に受信障害を引き起こす可能性はあります。しかし、太陽光発電機器の近くにそういった物を置かなければ、さほど心配不要です。
では、前述の事例では、どうして周辺道路を走行する自動車にまで影響が出てしまったのでしょうか。調査結果によると、太陽光パネルの内部配線が、発生源不明の不要電波を拾ってしまい、それが悪影響となったようです。いわば配線がアンテナのような役割を果たし、不要電波を拾ってそのままケーブルに流れ、電力会社の送電線にまで伝ってしまい、周辺道路でラジオの受信障害が発生したのではないかと考えられます。
太陽光発電がテレビの電波障害も発生させる?
電磁波が及ぼす障害は、ラジオだけではないという見解も存在します。これも過去にあった事例で、太陽光パネルを取り付ける工事をしてから、テレビが映らなくなるトラブルが起きたというのです。テレビ番組を受信するアンテナの受信状況が、0になってしまうこともあったそうです。(※正常な場合は70以上の数値が出ます)
太陽光発電システムを導入したタイミングでテレビの映りが悪くなり、多少の電磁波を出すことを踏まえても、太陽光発電が原因だと決めつけたくなる気持ちはわかります。とはいえ、テレビ放送の受信障害を引き起こすほどの強力な電磁波を発することは考えにくいです。太陽光パネルを住居の屋根に設置する場合、テレビ用アンテナの位置を移動させるケースはよくあります。両方同時に屋根に取り付けるのは難しいので、アンテナを動かさざるを得ません。
結果的に、テレビ用アンテナの向きが変わってしまったことで、受信障害となる可能性が多いです。そういった時は、アンテナの向きを調整したり、強力なブースターを付けることで解決が期待できます。太陽光パネルの下にテレビのアンテナケーブルを通しているという方も結構いますが、特に問題なくテレビを視聴できているといいます。よって、太陽光発電による電磁波でテレビの電波障害が起きるリスクは、ほとんど心配する必要はないと思われます。
太陽光発電の頭痛?関連性を解説
騒音や電波障害以外に時折言われるのが、太陽光発電システムが発する電磁波によって頭痛を引き起こすケースがあるというものです。先程も説明した通り、パワーコンディショナーは太陽光パネルが生み出した電力を、直流電気から交流電気に変換する役目を担っています。稼働中に微量の電磁波が発生するといっても、実は他の電化製品も電磁波を出しているのをご存知でしょうか。
たとえば電子レンジは200ミリガウス(※ミリガウスは電磁界の強さを表わす単位)、電気こたつは100ミリガウス、携帯電話は50ミリガウスほどの電磁波を発するといわれています。では太陽光パネルはどれぐらいの電磁波かというと、大体80ミリガウス程度です。太陽光発電システムを自宅に導入したからといって、電磁波のせいで頭痛を患ったり体調不良になる危険性は極めて低いはずです。
注意していただきたいのは、「電磁波過敏症」とよばれる、電磁波に過敏な体質をお持ちの方です。身の回りにある微量な電磁波を浴びただけで、頭痛や吐き気を患ってしまうため、太陽光発電システムからの電磁波でも症状が出るかもしれません。こういった方は、設備の導入自体を慎重に判断すべきといえます。
まとめ
電磁波によって様々な弊害が懸念されることは間違っていないにしても、現在では十分対策を取ることができます。パワーコンディショナーの直流電気の入力側に、ノイズ低減用の部品を付けることで、ラジオなどのノイズを除去するのです。
もし太陽光発電導入後に明らかな変化が生じたとしたら、電磁波が原因の可能性も頭に入れて、対策を施すようにしましょう。一時的に受信障害が起きて不安になるかもしれませんが、専門業者に相談するなどして、解決可能です。ノイズや電磁波について、あまり悲観的になりすぎず、積極的に太陽光発電システムを設置して問題ないのではないでしょうか。