ペロブスカイト太陽電池について

世界から注目を集めるペロブスカイト太陽電池について解説

最近、一般個人の住居や建物の屋根などに、太陽光パネルが設置されている光景を目にする機会が増えました。太陽光パネルは、細かく分類するといくつか種類があるのですが、実は2022年現在使用されているパネルの95%以上はシリコン系と呼ばれるものです。化合物系に含まれているカドミウムのような有害物質が無く、エネルギーの変換効率が良いため、シリコン系がごく当たり前に選ばれてきました。しかし、その常識が数年後には大きく変わっているかもしれません。
今、日本を筆頭に世界各国で「ペロブスカイト太陽電池」とよばれる新たな太陽光パネルの研究開発が急ピッチで進行しています。”次世代太陽電池”との呼び声高く、シリコン系では実現不可能だった様々な特徴、ポテンシャルを秘めているのです。
技術革新が進み、実用化となれば一気にシリコン系に替わってペロブスカイト太陽電池が主流になると期待されており、動向が注目されます。この記事では、そもそもペロブスカイト太陽電池とは一体どんなものなのか、実用化の目処がいつ頃なのか、を中心に説明していきます。

ペロブスカイト太陽電池とは?徹底解説

ペロブスカイト太陽電池とは、その名の通り、ペロブスカイトという素材を用いた太陽光パネルです。元々はロシアで採掘された鉱物の名前ですが、結晶構造を持つ素材を、他の化学物質を合成することで再現が可能になりました。なお、太陽電池と太陽光パネルは同じものだと考えて構いません。
一般的なシリコン系太陽光パネルは、日光を吸収して表面から電子が放出され、導線を伝わり移動すると電気の流れが生じます。研究者たちは、ペロブスカイトを用いて、シリコンと同様の特性を持つ半導体を作り出したのですが、何が異なるのでしょうか。
シリコン系の大きな問題点として、製造工程で電気使用量が大きく、コストもかかってしまいます。また、住宅用太陽光発電の規模でも総重量300~400kgに達する、非常に重たい製品なのです。そういった点を改善すべく、ペロブスカイト太陽電池は以下のような特徴を兼ね備えています。

●製造コストが安い
●多種多様な形状にできる
●希少金属を使用しない

ペロブスカイトの製造工程は、溶液処理によって簡素化されており、高価な機械を必要としない点が非常に魅力的です。低温で処理することができるため、原料となるシリコンを高温で融解して固めるシリコン系パネルよりも電気使用量を削減できます。ペロブスカイトは薄膜で製造されるため、シリコン系と比較して20分の1程度の材料で作ることが可能です。それによって、製造コストが3分の1以下に低下するのではと言われています。

もう一つ、シリコン系パネルの難点として、設置場所が限られるという点が挙げられます。ビルの側面や耐荷重の小さい屋根に設置することができず、たとえ日光の照射が良い場所でも設置不可というケースが多々存在しました。ペロブスカイト太陽電池は、軽量かつ柔軟性のある形状に仕上げることができ、折り曲げるなどフレキシブルに変化させることが可能です。
また、シリコン系で同じように薄膜にすると、性能が低下してしまいます。ペロブスカイトは太陽光の吸収効率が優れているため、薄くても光エネルギーの変換効率を高く保てるのです。素材が軽く、薄く、柔らかいという特徴を持っていることで、設置場所の選択肢が大きく広がるはずです。
加えて、レアメタルなどの希少金属を必要としないことも、今後実用化を図るうえで重要なポイントです。日本は資源に乏しい国であり、レアメタルは輸入に頼らざるを得ません。しかしペロブスカイトは、一般的な化学物質を合成して作るものですから、日本でも量産化が実現しやすいわけです。

ここまで説明してきたペロブスカイト太陽電池のメリットを聞くと、「一日でも早く実用化すべき」といった意見をお持ちの方もいるでしょう。残念ながら、幾多の魅力を持つ未来の素材でも、いくつかデメリットがあります。

●変換効率が低い
●耐久性が不十分

ペロブスカイトの弱点は、酸素や水分の影響を受けやすいことです。つまり、自然現象などの影響により、発電が不安定になってしまう恐れが懸念されています。
具体的には、結晶内で結合に支障をきたすと、光エネルギーを吸収することで生まれる電子が効率よく材料内を移動できなくなります。発電量が減ることに繋がるので、この問題を解決しないと普及は難しいと言われています。
通常、シリコン系パネルの変換効率は20%程度ですが、ペロブスカイト太陽電池はまだその水準に達していません。一部、20%を超えるものを作り出した企業はあっても、まだ研究段階にとどまり、安定した発電量の実現にはもう少し時間がかかりそうです。これらのデメリットをクリアすれば、間違いなく利便性はシリコン系よりも上でしょう。

ペロブスカイト太陽電池の実用化はいつ頃?

次世代の太陽光パネルとして注目が高まっているペロブスカイト太陽電池、果たしていつ頃実用化されるのでしょうか。
現在、積水化学工業や東芝、アイシン精機などが研究開発を行っており、一つの目標として、2025年の実用化を目指しています。東芝は、太陽電池の900cm²への大面積化を図るとともに、エネルギー変換効率20%に向けて開発を進行中です。積水化学工業は、これまで培ってきた技術をペロブスカイト太陽電池に応用できることから、2030年までに事業の柱とする方針を掲げています。他にも、三菱マテリアルがペロブスカイト太陽電地の材料開発を行うエネコートテクノロジーズに出資したり、ホシデンがモバイル機器やIoT機器への搭載への応用を視野に入れて量産化を目指すなど、多くの企業が実用化を達成しようと日々研究しています。

まとめ

実は、ペロブスカイト太陽電池は日本の研究開発によって生まれたものです。だからこそ、海外にシェアを奪われる前に、日本企業が牽引しようと多くの企業が尽力しているわけです。電気における再生可能エネルギーの割合を約4割に上昇させるためには、ざっくり計算して太陽光パネルの設置面積を現在の3倍に増やさないといけません。既にビルや住居、空き地や山・丘などあらゆる場所に設置されつつあるわけですが、ペロブスカイト太陽電池を用いてこれまで設置が難しかったビルの側面などに導入できれば、太陽光発電の普及はさらに加速するはずです。
さらに目線を将来に向けると、太陽光発電だけでなく、センサーやチップなど幅広い用途にペロブスカイトが使用されることも考えられます。多くの企業が、2025年までに実用化を目指すペロブスカイト太陽電池。そう遠くない未来、シリコン系パネルに置き換わる存在となることを期待したいです。


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