野立て太陽光発電

太陽光発電と風力発電の違いをまとめてみた

日本では、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、太陽光発電が急速に普及しています。住居や建物の屋根などに太陽光パネルを取り付けている光景を目にするのも、珍しくなくなりました。
ところで、海外に視線を変えると、実は状況が少し異なります。諸外国では、太陽光発電よりも風力発電の方が導入量が多いのです。まだまだ国内では設置件数が少ない風力発電ですが、海外で普及が進んでいるということは、何かメリットがあるのだろうと推測できますよね。
そこで今回は、風力発電のメリット・デメリットを、太陽光発電との比較を交えながら、具体的に説明していきましょう。

太陽光発電と風力発電のそれぞれのメリット

風力発電のメリットを見ていく前に、まずは仕組みを説明します。簡潔に言うと、風の力を利用して風車を回し、回転エネルギーを電気エネルギーに変える原理となっています。回転エネルギーを増長させる増速機がついていることが、従来の風車と異なる特徴の一つです。ブレードと呼ばれる風車の羽根が回転すると、設備内にある発電機が回り、電気を生み出す仕組みです。また、風向計や風速計も付いているため、風車の方向が常に風向きに対応できるように作られているのです。
大まかに風力発電の仕組みについて触れたところで、風力発電にはどのようなメリットがあるのでしょうか。各項目ごとに、太陽光発電と共通するメリットは(共通)、風力発電独自のメリットには(風力)と記載しています。

①発電時にCO₂を排出しない(共通)
②自然エネルギーを活用(共通)
③変換効率が良い(風力)
④発電コストが火力発電並に安い(風力)
⑤夜間も発電可能(風力)

太陽光発電や水力発電など、他の再生可能エネルギーと同様、風力発電も発電時にCO₂を排出しません。風は自然現象であり、枯渇する恐れが無いため、長期的かつ持続的にエネルギーを供給することが期待できます。
大規模な風力発電を設置すると莫大なコストがかかるイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、実は大規模にするほど発電コストが低下して、火力発電と同等水準まで抑えることが可能だと判明しています。要因の一つとして、風力エネルギーは高効率で電気エネルギーに変換される点が挙げられます。太陽光発電や地熱発電の発電効率が最大20%程度とされるなか、風力発電の発電効率は最大30〜40%と高いのです。よって、広大な場所を確保して、発電容量を大きくするに伴って、発電コストが下がり、とても効率良い発電ができるというわけです。
これは当然といえば当然ですが、太陽光発電は日光が出ている朝方から夕方までしか発電出来ないのに比べて、風力発電は風さえ吹いていれば24時間いつでも発電可能なこともメリットと言えるでしょう。

太陽光発電と風力発電のそれぞれのデメリット

次に、風力発電にどのようなデメリットがあるのか、見ていきましょう。先程と同じく、太陽光発電と共通するデメリットには(共通)、風力発電独自のデメリットには(風力)と記載しています。

①天候に影響されやすい(共通)
②メンテナンス費用がかかる(共通)
③発電コストが国内では高い(風力)
④騒音や低周波音が問題になる恐れ(風力)

太陽光発電は、悪天候の日など日光が当たらない時は発電しませんが、風力発電の場合、いくら快晴でも風が吹いていないと発電できません。風の強さは一定ではなく、風車の回転速度が変動するという点も、発電量が不安定になる恐れに繋がります。無風の状態が良くないだけでなく、台風のように強すぎる風でも、発電施設が破損するリスクが生じるので望ましくないのです。日光同様、風の強さは自然現象ですから私たちにはコントロール不可能なものです。一定の強さの風が安定して吹いている場所というのは限られてしまいます。陸上風力発電と洋上風力発電、陸と海両方に設置可能な風力発電ですが、適する場所というのはそう多くないのが実情です。
そして、沖合に設置した洋上風力発電などは、長い送電線を敷かなければならず、初期費用がかさむこともあります。太陽光発電だと、電線の近くに設置することが多いのであまり問題になりませんが、風力発電は場所を選ぶため、こういった問題も考えられます。

一方、メンテナンスについて、太陽光発電だと太陽光パネルやパワーコンディショナーの故障、経年劣化による機器の交換、自然災害により予期せぬ不具合が生じるケースを想定しますが、風力発電は台風や雪、塩などの付着によって設備劣化のリスクがあります。また、日本固有の問題ではあるのですが、設置事例が少ないゆえ、諸外国と比較して設置費用が高止まりしています。前述の通り、規模を増やすと発電コストが低下するのですが、日本ではまだ高く、中々導入実績が増加していません。
風車の羽根が回転する時の風切り音や機械音が響き、騒音トラブルに発展する可能性もゼロではありません。ただし、一時期指摘された風力発電の低周波音が人体に影響を与えるという説は、科学的根拠に基づいておらず、懸念する必要はないでしょう。

まとめ

2020年におこなわれた調査によると、日本の発電量全体のおよそ2割前後が再生可能エネルギーであり、風力発電はその中の0.9%を占めているというデータが出ました。この数値は、太陽光発電の10分の1です。日本国内では普及が遅れており、今後の拡大余地は十分にあります。
諸外国と比較してもこの割合は非常に小さく、設備容量基準で太陽光発電の方が多いのは日本以外に、イタリアやチェコなど非常に少数の国だけです。それほど風力発電が普及しているということは、日本でも再生可能エネルギーに占める風力発電の比率を高めることは、そう難しいことではないはずです。
日本は国土が小さく、陸上風力発電は限られた場所にしか設置できないため、洋上風力発電の発展に尽力すべきといえます。現時点では、大手商社や建設会社など、多額の資金を投じることができる大企業が中心となって普及が進められていますが、いずれ太陽光発電のように個人でも気軽に導入できるような仕組みおよびコスト低下が実現すると、さらに利用が広がり再生可能エネルギーへの転換も加速するのではないでしょうか。


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