太陽光発電システムが多く導入されているのは、当然ながら住居の屋根や建物の屋上、あるいはメガソーラーと呼ばれる事業者向け発電所です。ほとんどの人が、多くの太陽光パネルが並べられた光景を思い浮かべると思いますが、太陽光発電は他にも色々な場所で活用されています。
太陽の光エネルギーを電池として用いることから、「太陽電池」とも呼んだりしますが、この太陽電池は家の中、もしくは遥か彼方の遠い所でも大活躍しているのです。
今回の記事では、太陽光発電の仕組みが応用されている身の回りの製品について、事例を挙げながら説明していきます。
太陽光発電の活用例その①:標識や街灯路
太陽光発電の活用事例として挙げられる代表的なものが、道路標識や街灯路などのインフラ関連設備です。自然災害などによる停電時も継続して作動する必要があるため、日光によって発電する太陽光発電が重宝されます。ただし、一つ疑問点として、太陽が出ていない夜間や悪天候の日は動かないのでは?と心配する方もいるでしょう。
最近では、ソーラーパネル内蔵型LED標識という最新技術を搭載した機器が登場しています。太陽光パネルと蓄電池を内蔵しており、日光をうけて発電と蓄電を同時に行い、夜間は蓄えたエネルギーを用いて作動するのです。電力会社からの電気に依存しないので、電線を敷く必要がありません。つまり、その分資源を消費しない非常にエコな機器といえます。
また、LEDを使用することで消費電力量自体を抑えることもできます。そのため、標識に内蔵される小さい太陽光パネルでも、長時間発電し続けられるわけです。太陽光発電を用いた標識や街灯路が増加すると、街中でプラグを接続して蓄電した電力を私たちが使用する、なんてことも可能になるでしょう。
標識と似たものとして、工事看板や表札、非常案内や周辺マップなどにも、太陽光発電は幅広く応用が効きます。日々の電気代がかからず、工事費用も安く抑えられることから、今後ますます普及することは間違いないはずです。
太陽光発電の活用例その②:電卓や腕時計
太陽光発電の仕組みが活かされているのは、外出時に目にする設備ばかりではありません。電卓や時計といった、家庭内に置いている機器にも活用されています。
ここで、「部屋の中に保管しているものだから、日光が当たらないのにどうやって発電するのか?」と疑問を抱くかもしれません。実は、窓から入ってくる僅かな光や蛍光灯の明かりなどで充電することが可能なので、外で直接日光を当てなくても大丈夫なのです。特に電卓は、現在では太陽光発電の機能を備えたものが主流となりつつあります。元々消費電力量が少ないですから、太陽光パネルの面積が小さくても十分使えます。
もう一つ、「じゃあ電卓って電池を入れないと使えないのは何故?」と思う方もいるのではないでしょうか。その答えは、電池は液晶画面用に入れているので、電池のバッテリーがゼロになると液晶画面に何も表示されなくなるからです。
腕時計も、昼間の外出時は日光のエネルギーによって作動し、室内にいる時でも蛍光灯の光によって動くことができます。かつては定期的な電池交換が必須だった腕時計も、一度フル充電すれば、光のないところでも長時間動き続けるように進化しました。
たとえば大手時計メーカーの「CITIZEN」は、内蔵された太陽電池が発電して時計を動かす「エコ・ドライブ」と呼ばれる技術を開発。なんと、一度のフル充電で半年以上使用可能だといいます。悪天候の日が続こうがまったく心配せず、日々腕時計は動き続けます。「CASIO」や「SEIKO」など、他のメーカーも同様に太陽光発電の機能を用いた腕時計を多数発売しています。
太陽光発電の活用例その③:人工衛星や気象衛星
普段私たちが直接目にする機会は無いものの、実は太陽光発電が活用されている場所として、宇宙にある人工衛星や気象衛星も忘れてはいけません。地球から遠く離れた宇宙にあるわけですから、もし電池で動くとしたら、電池交換しに行くだけでも命がけです。でも太陽光発電の機能が備わっていれば、電池切れの心配は不要になります。
ISS(国際宇宙ステーション)の太陽光パネルは、アメリカのロッキード・マーティン社が製造しており、地球上で使用するものより耐久性を強化したパネルを開発しました。発電に必要ない光を吸収しないためのコーティングを施したり、放射線による劣化影響を軽微にするためセルの基板を薄くするなど、あらゆる工夫を凝らしています。宇宙環境は地球上とはまったく異なり、故障が起きてもすぐに交換することができません。よって、耐久性などあらゆる性能が高水準な製品でないと、宇宙空間用途では採用されないのです。
まとめ
太陽光発電は、太陽という半永久的に持続可能な自然エネルギーを電力に変換する仕組みであり、それこそが最大の特徴ですよね。これまで、電池の交換によって動いていた製品が太陽光発電を導入すると、製品の寿命が伸びてモノを長く大切に使う人が増えるはずです。また、最先端の研究として、宇宙上の衛星などに設置した太陽光パネルで光エネルギーを吸収して電気に変換した後、マイクロ波に変換して地球上に設置した受電アンテナへ送電するという構想が提唱されています。地球上で電力に再変換し、エネルギーとして私たちが消費することが出来れば、化石燃料に依存しない脱炭素社会をさらに推し進めることが可能になります。
今回は3つの事例を取り上げましたが、太陽光発電を用いた製品は他にもたくさん存在します。普段から意識してモノを見ると、意外な発見があるかもしれません。太陽光発電はまだまだ多くの可能性を秘めているのです。