東京都内に新築される住宅への太陽光発電設置義務化が、令和4年の第4回都議会定例会において審議の上、可決・成立しました。約2年間の準備および周知期間を設け、令和7年4月に施行する予定となっています。
条例改正案の提出、そして可決に至った背景として、東京都内における再生可能エネルギーの電力利用率は2020年度で19.2%とまだまだ低水準な点が1つあげられるでしょう。そこで、「2030年に再エネ電力利用率50%程度」という目標を掲げ、脱炭素化に向けて取り組みを加速する方針です。
政府が2050年にカーボンニュートラル実現を目指しており、東京都の舵取りに理解はできるものの、いきなり太陽光パネルの設置義務化と言われ、困惑している方も少なくないでしょう。この記事では、義務化の具体的な内容について詳しく解説しています。都内在住でない方も、ぜひご一読ください。
ついに東京都で太陽光発電の義務化が確定!詳細を解説
東京都では、「住宅等新築建物制度」という制度を新設して、令和7年4月以降に新築される住宅などの建物について、太陽光発電システムを設置する義務を課します。もう少し詳細に見ていくと、制度の対象になるのは中小規模新築建物(延床面積2,000平方メートル未満)です。都内のCO2排出量のうち、約7割がオフィスビルや住宅エネルギー使用に起因しています。つまり、カーボンニュートラルを達成するには、これらの建物から排出されるCO2を削減しなければなりません。特に、様々な家電製品の普及により、一般住居のエネルギー消費量が増加しており、対策が急務だったのです。
冒頭でも触れた通り、2020年時点で再エネ利用割合は20%程度ですが、2050年までに建物ストックの約半数(住宅は約7割)が新築される建物に置き換わることが見込まれています。従来の化石資源由来のエネルギーに依存する建物が減少して、再生可能エネルギーを利用する建物が増加すれば、CO2排出量も削減できる、というわけです。
“設置義務化”と聞くと、今後住宅を購入する場合、太陽光発電システムの導入手続きも並行してやらなければいけないのかと不安になる方もいるはずです。しかし、実際に義務が課されるのは都民ではなく、ハウスメーカーなどの住宅供給事業者となります。
具体的には、注文住宅の建設事業者や建売住宅を新築して販売する事業者のうち、都内に一定以上の新築住宅などを供給するトップランナーが義務を負います。太陽光パネル設置を標準化した魅力ある商品ラインナップの拡充を促進して、都民が新築購入する際の足かせとならぬよう、創意工夫を求めます。
トップランナーに該当するのは、年間2万平方メートル以上の建物(住宅・ビル)を建築する大手事業者です。50社程度の見込みで、目標達成に向けて最小限の規模となっています。もちろん、制度対象事業者以外でも、実績報告を提出したうえで、制度への参加が可能です。対象事業者は長期的に固定ではなく、太陽光パネル設置の状況などを鑑みながら、適切なタイミングで見直すとのことです。
ここまでで、都民が直接的に設置義務を負うわけではないことが分かりました。しかしながら、場所によっては日当たりが悪く、太陽光発電システムを導入しても発電量が見込めないところもありますよね。そういった住宅でも、半ば強制的に設置が要求されるのでしょうか。
東京都によれば、住宅供給事業者に対し、日照条件や屋根の面積など住宅の形状を踏まえて、太陽光パネルの設置を進めていくと説明しています。新たに供給する建物全体で設置基準の達成を求める仕組みですから、必ずすべての建物に設置を義務づける制度ではありません。どの建物に太陽光パネルを設置するかは、事業者の判断に委ねられます。
東京都の太陽光発電の義務化に際して最新の補助金事情を紹介
東京都では、制度対象事業者に対し、商品開発への助成などで総額300億円規模の支援を計画しています。今回の制度では、既存物件は対象外となっているため、すでに住宅をお持ちの方には特段の負担はないです。とはいえ、設置義務化と聞いて、新たに太陽光発電システムを導入したいと考える方もいるはずです。
令和5年のV2H・蓄電池・太陽光発電に関する補助金の概要が公表され、前年以上に魅力的な内容になっているため、ここで紹介します。予算総額は、補正予算72億円が加算され、337億円です。令和5年1月31日に受付開始予定となっています。
『太陽光発電』
●新築の場合、3kW以下:12万円/kW 3kW超え:10万円/kW (最大50kW未満)
●既築の場合、3kW以下:15万円/kW 3kW超え:12万円/kW (最大50kW未満)
『蓄電池』
●太陽光4kW未満と蓄電池設置、又は蓄電池のみを設置の場合
15万円/kWh(※)、最大120万円 (※5kWh未満の場合、19万円/kWh)
●太陽光4kW以上と蓄電池設置の場合
蓄電池容量:15万円/kWh、太陽光発電設備容量:30万円/kW (いずれか小さい額)
『V2H』
●V2H単体の場合 設置価格の1/2(最大50万円)
●太陽光、V2H及びEV・PHVが揃う場合 設置価格の10/10(最大100万円)
2030年までには全国でも義務化の動きが?
日本の首都であり人口約1,400万人の東京都が、太陽光発電の設置義務化を決議したのですから、他の都道府県も追随することが当然予想されますよね。すでに、いくつかの自治体では、設置義務化に向けて動き出しているところもあります。
たとえば、京都府および京都市は2022年から、一定規模以上の新築建物を対象に設置義務を課しました。群馬県では、延床面積2,000平方メートル以上の新築または増改築時に設置を義務化する方針を固めており、2023年にも施行する予定です。神奈川県川崎市でも、「川崎市環境審議会脱炭素化部会」の答申を踏まえ設置義務化を検討中です。
日本政府が地球温暖化対策として、2030年度において温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すことを掲げた以上、全国各地の自治体で再生可能エネルギーの普及を促進することは必要不可欠です。2030年という1つの区切りまで、もう残り7年しかありません。義務化の動きは今後ますます加速していくと考えて間違いないはずです。
まとめ
東京都が公表した太陽光発電の設置義務化に対しては、様々な意見が巻き起こっています。太陽光発電に否定的な意見もあれば、現在の施策では不十分だという批判も聞かれます。もちろん、東京都も賛否両論あると認識した上で、再エネ電力利用率50%という高い目標をクリアするために、これ以上後回しにできず、議案を成立させたのです。制度内容を見ると、都民に極力負担がいかないよう、十分配慮されているのではないでしょうか。事業者との綿密な連携を図り、設置義務化を逆手に取って悪徳な商売をする業者が出てこないようにすることが、東京都に求められます。
太陽光発電普及の動きは、全国的にも待ったなしです。お住まいの自治体でもいずれ義務化される可能性があると考えて、早めに準備しておくことをお勧めします。