太陽光発電とHEMS

太陽光発電におけるHEMS(ヘムス)ってどんな仕組み?

突然ですが、「HEMS」という言葉をご存知でしょうか?最近、節電の話題になると名称を取り上げられ、一度は耳にしたことがあるかもしれません。
まだまだ日本では普及率が低く、馴染みがなくて当然なのですが、今後導入する家庭が増えると見込まれています。「HEMS」は、太陽光発電とも関連性があり、相乗効果を生み出します。
今回の記事では、これから関心が高まるであろう「HEMS」について、基本的な仕組みから導入費用などについて説明していきます。将来きっと役に立つと思いますので、今のうちに頭に入れておきましょう。

そもそもHEMSとは?

HEMSとは、“Home Energy Management Service”の頭文字を取った略語です。
簡潔にいうと、住宅で消費されるエネルギーについて、一定時間ごとの使用量や、電気機器の稼働状況を自らが把握できるようにする仕組みです。電気使用量を“見える化”して、消費者自身がエネルギーを管理するシステムであり、節電に大きな効果があるといわれています。HEMSの主要機能は、電力消費量を30分や1時間単位で記録することです。これにより、どの機器がいつ、どのくらい電力を消費しているか、随時確認できる状況となります。自動的に電力使用の最適化を図ることも可能なので、結果的に無駄な消費を削減してくれるというわけです。
太陽光発電システムを屋根に設置して発電している場合、電力の使用状況だけでなく、発電量もモニター画面などで把握できます。今までは、月々の電気代を請求される際、機器ごとの消費量といった細かい情報を知ることはできませんでした。しかし、HEMSを導入すれば、家庭内の電力消費の内訳を詳細に把握可能となります。どの機器が消費量が多いのか認識することにより、おのずと節電意識も高まりますよね。

HEMSを使用する際には、スマートメーターが欠かせません。スマートメーターとは、情報通信機能を持った電力メーターのことです。電力消費量のデータは、ネットワークを通じて電力会社に情報が送信されます。このスマートメーターから得られた情報をもとに、HEMSはエネルギーの管理を行います。データに基づいて家庭内の電気機器をコントロールするのですが、タブレットやスマートフォンを介して遠隔操作できる点も魅力です。時間や場所を問わず、エネルギーの見える化と一元管理が実現します。
HEMSは、「ECHONET Lite」という信号規格を用いて、電気機器に信号を伝達しています。つまり、家電製品などと連携する際、「ECHONET Lite」という規格に対応していないと、接続ができません。おそらく2012年以前に発売された製品は、HEMSに対応していないでしょう。家庭内すべての電気機器を連携させる場合、一部買い替えの必要性が生じるかもしれません。

HEMSの導入費用、価格について解説

HEMSを導入するためにかかる具体的な費用を説明する前に、導入までの流れを簡単に解説します。

①HEMS対応の電力測定ユニットを家庭内の配電盤や分電盤に設置する (※工事は専門業者が行う)
②電力測定ユニットと各電気機器を連携させ、インターネットで情報を共有する
③エネルギー使用状況を、タブレット端末やPCなどで確認する
④専用モニターや端末用アプリからの遠隔操作で、自動制御する

絶対に欠かせないものは、HEMS本体と分電盤(もしくは電力測定ユニット)です。本体価格は大体2~15万円程度と、メーカーによって大きく差が開きます。近年では、PHILE WEBが「Nature Remo E」シリーズという、1万円台から買えるHEMSシステムを販売して話題となりました。大手メーカー製品ですと10~15万円とお高めですが、1~2万円台から手に入るモデルも種類が徐々に増えています。
また、電力測定ユニットは3~5万円程度。分電盤をHEMSに対応させるアップグレード費用も、工事費含めて5万円前後かかります。この2つが揃えば、電力の“見える化”は可能になりますが、一元管理を実現するためにはスマートフォンやタブレットが必須です。ただし、一般的なAndroidやiPhoneで問題ありません。
HEMSの導入費用の目安は、トータルで大体15~25万円でしょう。システム運用にコストは通常かかりません。工事費用によって多少金額は前後する可能性があります。遠隔操作したい機器に連携できる機能が備わっていないと、買い替えることになるため、追加費用が必要ですので注意してください。

HEMSの主要なメーカーをざっとご紹介

では、これからHEMSを設置したいという方は、どのメーカーを選べばよいのでしょうか。下記にHEMSを扱っている主要メーカーを紹介します。

●パナソニック:スマートHEMS
●三菱電機:三菱HEMS
●シャープ:電力見える化システム
●NTT東日本:フレッツ・ミルエネ

上記のサービスは、太陽光発電システムと接続して発電量を計測および使用電力量を表示することが可能です。さらに、自社製品を中心とした各電気機器と連携すると、スマートフォンなどで遠隔操作や一元管理ができます。パナソニック製のHEMSは、スマートスピーカー対応機種のため、連携すれば音声で照明をつけたり、シャッターの開閉も簡単にできます。一方、三菱電機製のHEMSですと、季節ごとに空調や換気を自動で最適化するなど、メーカーごとに異なる特徴も合わせ持っています。特にこれら二社の製品が主流といえますが、電気機器によっては同じメーカーのHEMS以外だと連携できないケースもあります。もし多くの機器を一元管理したい場合は、なるべくメーカーを統一すると、スムーズに操作を行うことができるでしょう。

まとめ

政府は2030年までに、国内の全世帯にHEMSを設置することを目指していますが、まだまだ普及に至る道のりは長いと思われます。2013年時点で僅か0.3%、2020年度末でも住宅への導入率は約3%程度でした。地域によっては諸々の事情で難しい場合もあるとはいえ、目標には遠く及ばない状況です。
前述の通り、大手メーカー以外の低価格製品も登場しており、設置へのハードルはだいぶ下がりました。やはりHEMSという概念自体がまだ浸透していないことが大きな問題といえます。太陽光発電とも非常に相性が良く、併用することで発電量や電力消費量を常に把握し、節電意識を高めてエネルギーコストの低下に繋がるはずです。エネルギー消費を最適化すると、最終的には地球環境に優しい社会が見えてくるのではないでしょうか。より多くの方がHEMSを導入した生活を始めることを期待しています。


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