コラム

燃料電池は家庭用も存在する?家庭用の燃料電池について解説

エネファーム(家庭用燃料電池)

自動車や工場などで取り入れられている燃料電池が、私たちの住居でも活用することができます。その代表例が「エネファーム」とよばれるシステムです。
一言で説明するなら自宅で電気とお湯を同時につくるもので、省エネ効果も高まります。エネファームが発売されてから15年程が経過しましたが、まだまだ普及途上です。しかし将来は導入件数が増加する可能性が高いでしょう。
そこで、家庭用燃料電池とはどのような仕組みなのか、デメリットや普及が進まない理由も説明していきます。

家庭用燃料電池の種類について

現在市販されている家庭用燃料電池は、PEFC(固体高分子形)とSOFC(固体酸化物形)の2種類があります。性能や特徴をそれぞれ紹介しましょう。
2009年に大手ガス会社が家庭用燃料電池システム「エネファーム」として発売を開始したのが、PEFC(固体高分子形)タイプです。当時、自動車業界でPEFCを搭載した燃料電池自動車の研究開発が進められており、その技術を応用して製造したといわれています。
高分子電解質膜を用いており、動作温度が約80℃と低いのが特徴です。そのため、起動・停止が容易なうえ、排熱回収効率が高いです。
ON-OFF運転をする一方、タンクの容量は約100リットルと大きいので、お湯を多く使うご家庭に適しています。発電出力は200~700W。操作にあまり手間がかからず、初心者でも導入しやすいようです。

もう一つのタイプは、SOFC(固体酸化物形燃料電池)です。材料にセラミックスを使い、温度を急激に上げ下げしても破損しにくい性質を持ちます。発電効率がPEFCよりも高く、およそ50%です。その分、排熱回収効率はPEFCが優れています。電力使用量に応じて24時間連続運転が可能となっており、動作温度は700℃と高温ながら、本体のサイズは小型です。電気を多く使うご家庭に適したタイプでしょう。

家庭用燃料電池をめぐっては、高効率化、小型化、低コスト化をキーワードに製品改良、モデルチェンジが重ねられています。将来的に、ラインナップがさらに増加することが予想されます。

家庭用燃料電池のエネファームってどんなシステム?

家庭用燃料電池は“エネファーム”とよばれていますが、その由来は、「エネルギー」と「ファーム=農場」を組み合わせた造語です。農地では土と水によって作物を育てますが、エネファームは水素と酸素でエネルギーを作ります。具体的には、都市ガスやLPガスから水素を取り出して、空気中の酸素と化学反応させて電気を生み出します。
さらに、電気と同時に発生する熱を、お湯を沸かすことに活用します。お湯をタンクに貯めておいて、お風呂に給湯する際などに使うのです。エネルギーの無駄遣いを無くし、電気代削減といった省エネ効果だけでなく、二酸化炭素(CO2)排出量削減にも貢献できます。
タンク内のお湯の温度が低い時、残量が少ない場合や、お風呂の追い炊き時には、バックアップ熱源機が作動します。暖房設備、浴室乾燥、ミストサウナなどに使う温水も、ここで作ります。よって、タンクにあるお湯をほぼ使い切った状態でも、お風呂を入れることは可能ですから、安心してください。

ちなみに、エネファームとよく似た名称で、エコキュートというものがあります。エネファームは、都市ガスやLPガスを利用して、化学反応により電気と熱を作り出す機器です。いわば、自家発電設備の一種といえるでしょう。
対するエコキュートは、発電機能を備えていません。電気代が安い時間帯に電気を購入して、ヒートポンプ技術でお湯を作ります。エコキュートも、時間帯を選んで効率的に電気エネルギーを活用する点では省エネ効果があるものの、電力会社から電気を買うことに変わりありません。水素と酸素の化学反応で発電するエネファームは、たとえ停電して電気が送られてこない状況でも、稼働し続けることができます。

エネファームが普及しない理由について解説

2009年に世界に先駆けて日本で販売が開始されたエネファームは、2023年11月末時点で販売台数が50万台以上を突破しました。着実に導入件数は伸びているものの、増加のペースが遅いという指摘も聞こえてきます。とても便利なシステムにも関わらず、爆発的に普及していかないのは何故でしょうか。

理由として考えられる中で、大きな原因は価格が高いことです。2009年の販売開始当初は、一台約300万円という超高級品でした。昨今は80~100万円程度まで下がりましたが、設置費用が最低でも30万円以上上乗せされるため、やはり相当な金額に達します。設置後も、大体10年間はメーカー保証などにより無償メンテナンス期間に含まれますが、10年以降はメンテナンス費用が必要です。
たとえば大手ガス会社ですと、購入12年目に総点検代(5万円)、15年目に定期メンテナンス代(10万円)がかかります。耐用年数は20年とされ、20年以上経過すると発電機能が正常に動かなくなる可能性もあります。
また、エネファームは燃料電池ユニットと貯湯ユニットを設置しなければなりません。貯湯タンクはPEFC(固体高分子形)タイプだと100リットルに及び、相当なスペースを確保することが求められます。賃貸マンションに単身で住んでいる方などは、今の状況だと導入は難しいかと思われます。

まとめ

家庭用燃料電池のエネファームは、発電時に二酸化炭素を排出せず、化石燃料を消費することなく電気を継続的に作り出すことが可能な機器です。日本発祥の未来型技術でありながら、イマイチ普及しない背景には、コストの高さや場所の問題があります。各メーカーは、エネファームの小型化や低コスト化を実現するために、研究開発に力を入れています。エネファームは、私たちが導入可能な省エネシステムです。日本の将来、地球の未来のためにも、設置を検討してみてはいかがでしょうか。