コラム

EV(電気自動車)は雪国でも普通に走れるの?寒冷地でEVを使う場合の注意点

EVと雪道

ここ数年、世界中でEVが広く普及してきています。日本でも国や地方自治体の補助金制度のサポートもあり、EVに乗る人が増えてきました。EVにはバッテリーとしてリチウムイオン電池が使用されていますが、この電池は気温が著しく低下すると充電性能も低下し、結果として放電時に得られる電力が少なくなるという特性があります。また、ガソリン車のような内燃機関を持たないEVは暖房時の熱を電力から生じさせる必要があり、電力容量がより早く低下し、走行可能距離が低下するという実情もあります。
EVは、雪国でも普通に走れるのでしょうか。また寒冷地でEVを使う場合の注意点として、どのようなものがあるでしょうか。見ていきましょう。

EVは冬に弱いって本当?

EVのリチウムイオン電池は、気温が冷えれば冷えるほど充電性能が低下します。つまり、同じ時間で充電できる容量が低下します。外出先で30分の時間制限のある充電スタンドで充電する場合に充電可能容量が低下し、ドライブプランに影響を与えます。また、冬に暖房のためにヒーターを使うと、使わない場合に比べてより多くの電力を消費します。つまり、より早くバッテリー残量が低下します。冬場の充電性能の低下と、このヒーター使用による電力使用量の増加による走行可能距離の低下から、EVは冬に弱いと言われています。

例えば、充電性能の低下ですが、100Vの家庭用充電器の場合、気温がマイナス5度だと、一晩充電しても全く充電されていなかったという事例が報告されています。低温時にバッテリーを保護するためのヒーターが起動するので、電力がほぼそちらに消費されてしまうのが原因です。また外部の急速充電器を使用して充電する場合ですが、気温マイナス3度の環境で、最大出力44kWhの急速充電器で30分充電した結果が14.3kWhだったという報告があります。この際の使用車種は、日産リーフe+でしたが、やはり充電容量の低下が結果に出ています。

また、ヒーター使用による電力量の低下ですが、日産のリーフを使って行われたあるテストで、バッテリー残量70%の場合、外気温マイナス8.1度でエアコンを25度に設定で、約10時間弱経過後、バッテリー残量は10%でした。
しかしながら、これらの弱点はあるもののEVが雪国で普通に走れないという訳ではありません。実際に寒冷地や雪国でEVは使用されており、EVの利点を指摘する声もあります。

EVの寒冷地での利点

雪国の自動車使用の問題として、毎年のようにニュースとなる一酸化炭素中毒による死亡事故があります。原因は明確ながら、問題になっている状況に気づきにくい特性があるため、なかなか無くなりません。EVの場合、そもそも燃焼プロセスがないため一酸化炭素中毒の発生を心配をする必要がありません。
またEV車のモーターは、1万分の1秒単位で駆動力が制御されているため、積雪路でもガソリン車の4WD並みのグリップ力があり、安定した走行が可能です。そのためスリップによる道路での立ち往生のリスクが軽減されます。

さらには、雪国に限らずEVの利点として挙げられる走行時の騒音、振動の少ない快適さや、メンテナンスコストの低減、ガソリン車に比較した場合の電力エネルギーコストの低さ、エコロジー問題の解決への寄与など、多くのメリットがあります。こうしたメリット、デメリットを踏まえた上で、雪国でEVを使う際の注意点を考えてみましょう。

寒冷地でEVを使う場合の注意点

まず挙げられる点として、先に述べた充電性能の低下に対処することがあります。雪国では特にマイナス気温の場合、充電性能が低下するのでドライブプランに合わせた充電が必要になるでしょう。100Vの自宅充電が不可だった事例ですが、普通充電に200Vの電源を使用することにより問題を回避できます。
また、日産リーフe+での急速充電器による30分の充電結果ですが、気温マイナス3度の環境で、最大出力44kWhの急速充電器で30分充電した結果が14.3kWhだったという報告でした。別の時に同じリーフe+で、外気温プラス3度の環境下で、最大出力50kWhの急速充電器で充電したところ、30分で21.6kWh充電できたという報告です。寒冷地の外気温状況に合わせたドライブプランの必要が理解できます。

別の点として、ヒーターの使用による電力消費量の増加ですが、ヒートシーターだけなら100W位の電力消費なので、車のスイッチを切ればバッテリー残量30kWhで300時間使用可能です。ヒートシーターのみの暖房で大丈夫なのかと思いますが、マイナス29度の環境下で立ち往生を再現した試験の結果、危険な状況になることなく一晩を過ごせたという実証実験の結果があります。
さらに、最新のEVはヒートポンプ式の暖房になっているので、電力消費量は大幅に少なくなっています。ヒートポンプ式の暖房とは、大気中の熱を使って冷媒を圧縮、液化、蒸発させるシステムで、通常のエアコンに比べて少しの電力で大きな熱を発生させることができます。リーフe+であれば、満充電の場合、ヒーターを60時間連続使用可能です。

雪国の急坂には特に注意

雪国の急坂には特に注意が必要です。やはりリーフe+を使った北海道での実走実験ですが、10m進むと5m上る急坂で走行テストが行われました。初速20km/hであれば問題なく登り切ることが出来ましたが、10km/hだと途中で失速し停止してしまいました。15km/hであれば何とか登り切れるという結果でした。リーフの場合、坂の途中で止まると登れません。
もし坂の途中で止まってしまった場合は、そこからバックして下まで下がるしかありません。それで、雪国の急坂を上る際には登りきることが可能なスピードに注意して、途中で止まってしまわないよう注意することがとても大切です。さらに、万が一止まってしまった場合のリスク軽減策として、急坂を登り始める際の周りの状況にも注意しましょう。車が渋滞しているような場合は、渋滞の緩和を待ち、周りの車のなるべく少ないタイミングを見定めてスピードを制御して登り切りましょう。

まとめ

今回は、雪国でもEVは普通に走れるのかを見てきました。結論は、走れるということになります。しかも、メリットとして、雪道でのグリップの良さや、一酸化炭素中毒の危険の無いこともありました。更に、走りの快適さやコスト面のメリットなど全国共通の利点もあります。
ただ、何も注意が必要ないかと言えば、やはり雪国ならではの状況に応じた対処も必要であることがわかりました。充電能力の低下に合わせたドライブプランや、普通充電に200Vの電源を使用すること、急速充電可能な電力容量が外気温の低下による影響を受けるため、ドライブプランに気象情報を加味することなど、幾つか対策を持っておく必要はあります。
それでも、EVの普及に伴って公共インフラの整備も進み、ヒートポンプ式の暖房など周辺テクノロジーの採用や、バッテリー性能そのものの向上などと相まって、今後もEVの活用は増えていくでしょう。雪国でEVを使用する際には、メリット、デメリット双方を踏まえた上で、注意すべき点にも配慮し、雪国での快適でスマートなEVライフを楽しみましょう。