コラム

EV(電気自動車)の航続距離は実際どれくらい?航続距離が長い車はどれ?

EVの航続距離

近年急速に普及してきたEV(電気自動車)。手ごろな価格の車種も販売されてきており、国や地方自治体からの援助も活用できます。エコロジー意識の高まりもあり、ガソリン車からの乗り換えを本格的に検討している方も多いことでしょう。でも、気になるのは実際の航続距離。ガソリン車と比べてどうなのでしょう。航続距離の長い車はどれでしょうか。見ていきましょう。

航続距離は実際どれくらい?

EVの航続距離、つまり一回の充電で走行できる距離は実際どれぐらいでしょうか。現在EVの航続距離は、約200kmあるいは、約400〜500kmとされています。年々開発が進み、充電一回当たりの走行可能距離は長くなっています。500km以上可能な車種もあります。メーカーはユーザーの使い勝手に応じて車種をラインナップしていますが、大まかに200km程の車種と、400〜500km程の車種に分かれるようです。
日産「サクラ」と三菱「eKクロスEV」は設計が基本的に同じですが、航続距離が共に180km、ホンダの「Honda e Advance」は、259kmとなっています。航続距離400~500kmでは、日産「リーフe+」が450km、スバル「ソルテラ」が487~567km、メルセデスベンツ「EQC」が400kmです。

ガソリン車と比べてどうか

ガソリン車の航続距離、つまりタンクを満タンにして空になるまで走行した場合の距離は、一般に500km以上になる設計になっています。例えば軽自動車の30Lのタンクとして、燃費20km/Lとすると、600kmになります。ミドルクラスの車種の場合、タンク容量50Lとして、こちらも500km以上の走行が可能です。

車種にもよりますが、航続可能距離だけを比較してみても、EV車もガソリン車と比べて遜色ないことがわかります。軽のEVに関して言えば、確かにガソリン車の600kmと比べて、3分の1程度になるわけですが、そもそも軽自動車を選ぶユーザーの場合、1回の使用でそこまでの距離を乗るケースはあまりないでしょう。実際、2023年の軽EVの新車販売台数は約4万7000台でしたが、これは軽自動車全体の約3.5%に上ります。日本のユーザーに軽EVが歓迎されている様子がわかります。日産の「サクラ」は、販売台数3万7000台を超えて、軽自動車の販売台数ランキングで15位に入っていました。

航続距離が長いEVのランキング

航続可能距離で世界一の車は、アメリカのルーシッド・モータースのエアグランド・ツーリングで、約830km、価格は約1850万円です。2位は、テスラのモデルSで、約651km、価格は約1175万円です。3位は、テスラのモデル3で、約576km、価格は約561万円です。これら世界のトップ3の航続距離は抜群ですが、価格面で少しハードルが高いでしょう。それで、国産EVを見てみましょう。

国産EVの航続距離ランキング

ここでは国産車のランキングを見てみたいと思います。価格や距離はあくまでも参考値としてご覧ください。

1位
ソルテラ(スバル)
487~567km
価格:594万円

2位
bZ4X(トヨタ)
487~559km
※この車種はリース専用です。

3位
アリア(日産)
470km
539万円

4位
レクサスUX300e
367km
約580万円

5位
リーフ(日産)
322~450km
約408万円

1位のソルテラと2位のbZX4は、いずれもバッテリー容量が71.4kWhです。航続距離とバッテリー容量が比例していることが分かります。ただ、使用時の航続距離は、カタログ値のWLTCモードと一致しているわけでありません。気温や上り坂下り坂、渋滞、加速や減速の仕方、スピードなど、使用環境によって変わってくるからです。冷暖房やオーディオの使用によっても電力は消費されるため、航続距離は変化します。実際の航続可能距離はカタログ値の70%程度と考えるのが良いでしょう。

バッテリーの劣化による航続距離の低下は?

EVはバッテリーとしてリチウムイオン電池を使用しています。当然の事ながら、このバッテリーの性能は充放電を繰り返すにつれて、年月の経過と共に低下していきます。しかし、近年の技術開発により、10年を経過してもバッテリーの残存容量が100%を示すものもあります。実使用上、3年や5年程度でバッテリーが急激に劣化することは一般にありません。また、メーカーはそれぞれバッテリーの保証を付けており、例えば日産のリーフでは、8年間または走行距離16万kmという保証があります。それで、経時使用による航続距離の低下について相応の考慮が必要とはいえ、極端に心配する必要はないでしょう。

日本におけるEVの使い勝手

欧州や米国、中国ではEVの普及が急拡大しており、その流れは継続していくでしょう。各国の政府は、環境問題や脱炭素社会に向けた政策で、EVの一層の普及を政策目標としています。日本でも同様の動きが見られますが、注目したいのは日本での軽自動車の使い勝手です。軽EVは、航続可能距離でいえば、上位トップ3に入るわけではないものの、販売台数では国内で順調な販売が続いています。そもそも軽自動車という車のジャンルが日本独自なわけですが、その規格と日本での使い勝手の良さ、そして価格面からも国内のユーザーに広く受け入れられています。

2024年1、2月のEVシェアは、新車販売ベースで、普通自動車が約1.16%で約4600台、軽自動車は約3.32%で約6300台です。この数字だけ見ると、2023年に比べて若干の現象にも見えますが、これは補助金の影響が考えられ、2024年2月に2023年度のEV補助金が終了しましたが、2024年3月末から2024年度の補助金の受付が始まるので、今後全体として上向くことが予想されます。また、軽EVの販売台数が普通乗用車EVの販売台数を上回っている事にも注目できます。
ekクロスEVやサクラは、航続距離が180kmと、ガソリン車と比べて見劣りする感があるかもしれません。実使用時の航続距離はその70%として126kmになるので、どうかなと思われる向きもあるでしょう。でも、実際にガソリン車の軽自動車を現在使用しているユーザーが、自分の使用実態を見渡した時、一日126km以上走行するという機会はどれほどあるでしょうか。普段使いの通勤や、通学の送り迎え、買い物など、一度の使用は20〜30km程度でしょう。

EVのエネルギーコストの低さや、メンテナンス費用の低減、騒音や振動の少ない乗り心地やエコロジー等様々な面で、軽EVは有意義な選択肢の一つと言えます。EVは性能や価格帯のレンジが広く、ユーザーがそれぞれの使用実態に合わせて使い勝手を考慮して選んでいくことになります。日本で軽EVが受け入れられ始めているのも、実使用にあった車という特性が生かされた結果でしょう。

まとめ

EVは高額で航続距離は良くないのではというイメージがこれまであったかもしれません。しかし、ここ数年の技術革新と販売台数の世界的な増加により、費用面でも多くの人の手に届くものが増えてきました。さらに航続距離においても、ガソリン車と比べて遜色のないレベルになっています。ガソリン車と同じく、車選びについては、自分の使用実態に照らした使い勝手の良さと、コスト面の慎重な比較が欠かせません。EVメーカーが、国内外で車種の様々なラインナップを取り揃えてきたここ数年、慎重に考慮した結果、EVの使用が家計の損益分岐点を超えてきた、つまりコスト面でも実使用面でもメリットのある選択の一つになっているかもしれません。国や地方自治体の補助金の実態も踏まえて、よりスマートなカーライフを、EVという選択肢が可能にしてくれるケースも多くなってきているのではないでしょうか。