コラム

太陽光発電を屋上に設置する場合、建築基準法は適用される?徹底解説

建築基準法と太陽光発電

建築基準法とは、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低限の基準を定めた法律です。皆さんが街中で目にする住居やビルは、ほとんど全て建築基準法の対象となる“建築物”に該当します。自家消費する目的で導入する住宅用太陽光発電は、住居の屋根に設置することが多いですが、企業が工場や所有ビルの屋上に太陽光パネルを導入するケースも非常に増えています。一般的に、建築物を増改築をする際には建築確認の申請を行う必要があります。つまり、太陽光発電システムを屋上に新たに設置する場合、建築基準法に則っていなければなりません。
屋上に太陽光発電設備の導入を検討している方は、建築基準法がどう関わっているのか、しっかり覚えていきましょう。

太陽光発電において関係してくる建築基準法

企業がSDGs(持続可能な開発目標)取り組みの一環として、自社施設の屋上に太陽光発電を設置することで化石燃料の消費を削減する動きは急速に広まっています。電気代を削減できることはもちろん、停電時の備えになり、環境保全に力を入れている企業と認識され社会的評価も高まります。
しかしながら、いくらCO2排出量削減に貢献するとはいえ、各々が自由に取り付けていいわけではありません。建築基準法と太陽光発電システムの関係は、架台の下の空間をどう利用するかによって大きく変わってきます。
結論としては、架台の下を「屋内的用途」として使用する太陽光発電システムは、“建築物”として扱います。「屋内的用途」とは、居住、執務、作業、集会、娯楽、物品の陳列、保管、格納などの用途を指します。
これらに該当する建築物に太陽光発電を設置する時は、原則として建築基準法に準拠しているか確認申請を行う必要が生じます。オフィスビルや商業施設、工場など、企業が所有する建築物は、確認申請が必要と考えていいでしょう。屋内的用途とみなされなくても、建築物の屋上に設置する場合、電気を供給する建築設備として建築基準法の規定を適用します。ただし、確認申請は義務ではありません。
ちなみに、空き地などの土地に自立して太陽光発電システムを設置する場合、メンテナンスを除いて人が立ち入らず、かつ架台下の空間を屋内的用途に使用しないものは、電気事業法に基づく「電気工作物」として扱います。そもそも建築物に該当しないので、建築基準法の適用対象にもならないのです。

太陽光発電を設置できない場所は?

太陽光発電システムの設置にあたっては、建築基準法上、建築物の“高さ”に算入される場合があります。お住まいの地域によっては高さの制限や各種斜線制限、日影規制に適合させなければなりません。規制に反する場所だと、そもそも太陽光発電を導入できないので注意が必要です。
特に注意すべきなのは、第一種・第二種低層住居専用地域、および田園住居地域です。これらの場所では、太陽光発電システムを含めた地面からの高さが10mもしくは12m以下(※地域による)と定められています。
日影規制とは、冬至日における建築物により生じる日影を一定の時間内に抑えることにより、周辺敷地の日照などの住環境を保護しようとするものです。第一種・第二種低層住居専用地域などで、高さが10mを超える場合、制限の対象となります。
北側斜線とは、北側隣地にある住宅の日当たりを考慮し、南からの日照の確保のために建築物の高さを規制するものです。敷地の境界線から垂直に5mまたは10m上がった先の高さで、一定の勾配で記された線(=北側斜線)の範囲内で建築物を建てなければいけません。これらの場所では、太陽光発電システムを設置できない可能性があるため、事前に自治体や専門業者に確認を取るようにしましょう。

ただし、建築基準法では、屋上にある階段室などの水平投影面積の合計が、建築面積の8分の1以内だと高さに算入しないと定めています。太陽光発電システムを設置しても、建物面積の8分の1を超えない限り、上記の規制を適用されません。これにより、太陽光発電を設けられる既存建築物の幅が広がったのです。

太陽光発電の耐震基準はあるの?

耐震基準に関しては、設置対象の建築物が1981年6月1日以降に建築認定申請を受けている必要があります。大規模地震(震度6強から7程度)の地震力に対して倒壊・崩壊しないレベルの耐震基準が設けられています。この基準をクリアしたうえで、太陽光発電システムの重量を建築物の屋根に加えて、再度構造計算を行います。やはり大規模地震の地震力に対して倒壊・崩壊しないことを確認する必要があるのです。
もう一つ、設置する際に使用する架台が、大規模地震の地震力が加わっても破壊されない強度があることを確認することが求められます。太陽光発電そのものというより、設備を含めた建築物全体の耐震性能が基準を満たしているか、という部分が重要になってくるのです。

まとめ

建築物の屋上に太陽光発電システムを設置する場合、やはり建築基準法は大きく関わってきます。とは言ったものの、政府が太陽光発電の普及に力を入れているため、規制は緩和傾向にあり、一昔前に比べると導入しやすい状況になったのではないでしょうか。
太陽光発電は地球環境に優しい再生可能エネルギーですが、周辺住民への配慮も非常に大切です。大量に並べられたパネルのせいで日光が当たらなくなった、景観を著しく害された、といったクレームが出るようでは設置を見直すべきです。建築基準法に関しては、専門的な事項が多数ありますから、専門業者やお住いの自治体に相談しながら、導入準備を進めていってください。