コラム

太陽光発電を導入する学校が増えてきている?

学校での太陽光発電

太陽光発電など再生可能エネルギーの導入が企業や住宅で普及していますが、学校においても太陽光発電の設置件数が増加していることをご存知でしょうか。
文部科学省は、2008年に「太陽光発電の導入拡大のためのアクションプラン」を取りまとめて以降、学校施設における太陽光発電の導入拡大を促してきました。環境を考慮した学校施設の整備に尽力してきたのです。学校という、子供たちが通って様々な学びを得る場所で、太陽光発電を導入するメリットは一体何なのでしょうか。また、これまでに設置した学校は、どのような成果を出しているのでしょうか。今回は、学校における太陽光発電について、詳しく解説していきます。

太陽光発電を学校施設に導入するメリット

太陽光発電を導入して得られるメリットとしてすぐに思い浮かぶのは、電気代を節約できることだと思います。もちろん、それも大切な事なのですが、他にも重要な役割を担っています。

①環境教育に役立つ
②二酸化炭素の排出量削減に貢献
③自然災害対策
④電気代削減

日本政府は、2050年にカーボンニュートラルを達成することを目標に掲げ、再生可能エネルギーへのシフトを進めています。現在小中学校に通っている子供たちはちょうどその頃、30~40代になっている時期です。将来、脱炭素社会を牽引する存在として、ビジネスパーソンあるいは政治家として奮闘することになるわけです。
学校が太陽光発電システムを導入することによって、生徒が実際にソーラーパネルや蓄電池を目で見たり直に触って体験する機会を持てます。再生可能エネルギーの仕組みについて知っておくことは、間違いなく将来役立つはずです。太陽光発電が身近にあることで、どうして再生可能エネルギーが必要なのか、地球温暖化や環境破壊はどれほど深刻なのか、関心を持つ子が増えるでしょう。ただ発電するだけに留まらず、生徒に発電量のモニターを観察させたり、発電した電気を利用してみる体験学習も、貴重な経験になるといえます。

ここからは、実際に太陽光発電システムを設置した学校が、CO2排出量を削減できているのか説明します。20kWの太陽光発電設備を導入したとある学校では、年間およそ10~14トンの二酸化炭素排出削減を達成しています。なんと、東京ドーム1個分の面積の森林によるCO2吸収効果に相当する数値です。同時に、電力会社から購入する電気を減らし、電気料金の削減効果も見込めます。平日はほぼ毎日朝から晩まで電気を付けっぱなしですし、土日祝は余剰電力を売電して、電力を最大限活用します。
もう一つ大事な点は、学校という施設は、地震など自然災害が起きた際の避難所に指定されていることが多いことです。体育館に大人数を収容することは可能ですが、電気もガスも使えない状態が数日も続くのはとても辛いですよね。しかし太陽光発電を導入していれば、停電が起きた場合などの非常用電源として活用できます。電気が使えるだけでどれだけ安心感が生まれるか、想像に難くありません。

太陽光発電を学校に導入するときに補助金は出るの?

教育施設といえども太陽光発電に費やすことができる予算は限られており、補助金を活用して導入コストを安く抑えたいと考える方も多いでしょう。すべての都道府県で補助金制度が存在するわけではありませんが、ここでは東京都が実施する補助金について取り上げたいと思います。
東京都は、「地産地消型再エネ増強プロジェクト事業」と題し、民間企業、独立行政法人、大学法人および学校法人などを対象に、補助金を給付しています。太陽光発電、風力発電、水力発電などの再生可能エネルギー、そして蓄電池も含まれており、従来の化石燃料依存からの脱却を図る法人を支援する目的です。
補助金の内容は、中小企業ですと導入費用の2/3(※1億円上限)。学校法人などは導入費用の1/2(※7,500万円上限)と定められています。実施期間は令和2年度(2020年)〜令和5年度(2023年)と公表されていますが、状況によって2024年以降も継続する可能性はあるでしょう。
また、環境省が「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」を実施しており、地方公共団体が対象になっています。自家消費型太陽光発電システムや蓄電池を導入する際、1kWあたり4~5万円、蓄電池は1kWあたり6万円程度の補助金が給付されます。地域の脱炭素化と防災性の向上を目的に掲げており、2022年度分は予算額に達したため募集を終了しました。来年度以降については、随時該当のホームページなどでお調べください。

学校で導入された再生可能エネルギーの事例を紹介

この項目では、太陽光発電を導入した学校の事例を取り上げます。神奈川県横浜市にある都筑区立中川西小学校では、事業者が太陽光発電システムを学校の屋上に設置して、学校側が電気代を支払う仕組みを採用しました。いわゆる「PPAモデル」と呼ばれるものです。
この方式は、学校側が初期費用やメンテナンス費用を負担せずに再生可能エネルギーを利用することができます。中川西小学校の屋上には81枚のソーラーパネルを並べられており、最大出力は28kW。年間発電量およそ29,000kWhを見込んでいます。同校の年間電力消費量の15%程度ということで、すべての電力を再生可能エネルギーに置き換えるにはまだまだ足りません。とはいえ、二酸化炭素排出量を年間約13トンも削減できるそうです。
加えて、防災強化目的として蓄電池も設置し、停電した際に校内の照明やコンセントなどを最大72時間使用できる体制を完備しました。もし自然災害が起きても、電気に関しては不安を抱くことが無くなるのではないでしょうか。

まとめ

教育機関における太陽光発電の導入は、小学校から大学まで幅広い施設で普及しています。文部科学省が2021年に公表した調査結果によれば、全国の公立小中学校のうち、太陽光発電を導入した学校は9,700校を超えました。この数字は、実に約34%の学校が太陽光発電システムを設置したことになります。2009年時点では1,200校程度でした。直近10数年間で急激に増加したことが分かります。
容量によって差はあるものの、多くの学校が年間40~50万円程度の電気料金削減に成功しています。今や、学校に太陽光発電の設備があることは、まったく珍しくなくなりました。カーボンニュートラル達成の担い手は、今現在学校に通っている子供たちです。幼い頃から身の回りに太陽光発電や再生可能エネルギーが存在する環境で育つことが、将来的に望ましいはずです。今後さらに多くの学校で太陽光発電が導入されることを強く期待しています。